海外不動産の購入に興味があるものの、「購入手続きが難しそう」というイメージを抱く人は少なくありません。
ハードルが高いと感じる理由の大半は、不動産を購入する国ごとに設けられた様々な税制度や法律、現地ならではの不動産売買に関する慣習やルールの存在によるものでしょう。
本記事では、海外不動産購入にかかる基本的な流れや費用について解説していきます。
はじめて海外不動産を購入するうえで注意すべきポイントもふまえて解説していくので、円滑に手続きを進めるために参考材料にしてください。
海外不動産の購入方法は主に2つ
いわずもがな、不動産の購入には、所有する不動産の売却を希望する売主と、条件に合った不動産の購入を希望する売主とのマッチングが不可欠です。
ここでは、海外不動産を購入するための代表的な2つの方法について、メリットや注意点をふまえて解説していきます。
海外に行って現地の不動産を購入する
不動産の所在国に実際に赴き、現地の不動産を購入する方法は、当該国の不動産会社に直接コンタクトを取って、紹介から購入手続きに至るという、シンプルな流れの購入方法です。
現地の不動産会社を利用することで、日本の不動産仲介業者が持たないローカルな情報やお得な物件に出会える可能性も高く、豊富なバリエーションの中から好みの不動産を選べるメリットが得られます。
一方で、現地の言語や文化はもちろん、不動産市場の動向や慣習、法律などに精通していない場合、様々なトラブルに巻き込まれるリスクが高まるというデメリットを考慮しなければなりません。
トラブルの例としては、物件代金の偽装や法外な手数料、または使途不明な費用の請求に加え、最悪の場合、購入者が多大な不利益を被るような悪質な契約内容で売買契約を締結してしまうケースなどが考えられます。

海外不動産を扱っている日本の仲介業者から購入する
現地の言語や不動産事情によほど精通している場合を除いては、海外不動産を取り扱う日本国内の不動産仲介業者を利用して、購入手続きを進める方法が安全です。
海外不動産を扱う国内の仲介業者は、各国に自社支店を設けていたり、現地の不動産会社とパートナーシップを結んでいたりするケースが一般的です。
そのため、現地情報に精通し、不動産売買の経験も豊富なプロフェッショナルからのサポートを受けられるという点が、国内の仲介業者を利用する最大のメリットです。
加えてほとんどの国内仲介業者は、投資対象として海外不動産を取り扱っているため、選び抜かれた安全性の高い物件を紹介してもらえる点も大きなメリットです。

日本の仲介業者から購入する流れ
前項で述べた通り、海外不動産ビギナーにとっては、国内の海外不動産仲介業者を利用した方が、様々なリスクを回避し、円滑に購入手続きを進めることができます。
ここでは、国内仲介業者を利用して海外不動産を購入するケースを想定して、購入に至るまでの基本的な流れをプロセスごとに解説していきます。
ただし、不動産が所在する国や物件タイプによって手続きの流れは異なるため、実際に購入手続きを進める際は、以下のプロセスを参考にしながらも、適宜必要な手順で進めてください。
1. 不動産投資をする国と物件の購入目的・条件を決定
不動産投資先の国と購入目的・条件を明確に決めておくことは、仲介業者に依頼する前に必要な「事前準備」です。
特に投資国選びは、その後の投資全体の成功を左右する重要なポイントとなるため、慎重に選択作業を進めなければなりません。
購入目的や条件にそぐわない投資国を選んでしまうと、希望する運用成績を得られないばかりか、余計なリスクを負う可能性も高くなってしまうためです。
例えば、投資先を欧米などの先進国とした場合と、東南アジアやアフリカなどの新興国とした場合とでは、得られるメリットやデメリットは大きく異なります。
ひとつの傾向として例をあげるなら、先進国は経済状況が比較的安定しているため、中長期的なインカムゲインを確保することができる反面、人気エリアの物件価格や諸費用は高額となりやすい傾向にあります。
一方で新興国は、物件価格が先進国に比べて安価であることに加え、今後の経済成長や人口増加への期待から、うまく売買を行うことでキャピタルゲインで大きく稼げる可能性があります。
このように、一言で「海外不動産を投資目的で購入する」と言っても、投資国によって得られる効果もリスクも大きく異なるのです。
そして、事前に購入目的や条件に適した投資国を明確にしておくことで、この後の「仲介業者の適切な選定」が可能となります。
2. 仲介業者の選定
購入先の国と希望条件が決まったら、その条件を満たす不動産仲介業者をリサーチし、選定します。
希望する国での不動産仲介実績はもちろん、希望条件に近い物件の取り扱い数が多いことは、重要なチェックポイントです。
また、一連の購入手続きのサポートはもちろん、購入後の不動産管理や売却においても、どのようなサポート体制が敷かれているかも確認することも大切です。
自身がどの程度のサポートを必要としているかを明確にしたうえで、各社の資料を取り寄せたり、セミナーに参加したりして、具体的なサービス内容を慎重に比較・検討し、業者を決定しましょう。
3. 仲介業者からの提案内容を確認・調整
仲介業者が決定したら、希望条件をできるだけ具体的に伝え、仲介業者からの提案内容を確認・調整していきます。
仲介業者に伝えるべき項目の中でも、以下については可能な限り具体的な数値や指標を用いて条件を提示しましょう。
- 目的:物件売却によるキャピタルゲインか、家賃収入のインカムゲイン
- 購入予算:物件代金だけでなく、購入にかかる諸費用も含めた予算総額
- 資金繰り:一括現金払いか、住宅ローン希望か
- 保有予定期間:購入から売却までの保有期間
- 利回り:表面利回りではなく、実質利回りで提示
これらの項目をしっかりと提示することで、仲介業者側としては、ニーズに合った物件の選定が行いやすくなるだけでなく、この後の各手続きに関する方向性やサポート体制の全体像を組み立てやすくなります。
4. 各種事務手続き
購入に際する諸条件にマッチした物件をいくつか提案してもらうのと並行して、購入に必要な事務手続きを行います。
この段階では、現地の銀行口座開設を行うことが多く見られますが、購入先の国や住宅ローン利用の有無によって、必要な手続きは異なります。
例えば、東南アジア諸国の不動産を購入した場合、ほとんどの場合は現地銀行の口座を開設し、その銀行でローンを組みます。
一方で、日本からの不動産投資先として人気のアメリカであれば、国内の金融機関を通じて現地の銀行口座を開設できたり、国内金融機関で海外不動産用のローンを組めたりするケースも見られます。
それぞれの国や資金繰りの状況等によって、購入代金の支払い方法も変わってくるため、送金方法だけでなく、購入後もどのような仕組みでお金のやり取りを行うかをしっかり確認したうえで手続きを進めます。
5. 可能な限り物件の現地視察
候補の不動産物件が出揃ったら、可能であれば、現地で直接確認することをおすすめします。
実際に現地に行くことで周辺環境のメリット・デメリットを肌で確認することができるためです。
書類上の情報だけでは網羅できなかった、物件付近の住民や生活インフラにおける利便性などを実際に確認することで、物件価値をしっかりと見定めることができます。
6. 購入申し込みと条件交渉
希望条件に合った物件が見つかったら、購入の申し込み、そして、売買契約締結のための諸条件の交渉に入ります。
購入申込書は、現地の言語で書かれていることが一般的ですので、書き方や内容の確認は随時仲介業者のサポートを得ながら行います。
購入申込書には、希望価格や支払い方法、手付金額など、買主からの購入条件を記入し、その提示内容を見て売主はベストな売り先を選定していきます。
申し込み内容に対し、売主の希望条件との合意が難しい場合は「Reject(拒否)」と返答が来ます。
多くの場合、「Counter Offer」という買主の提示した条件の一部変更が売主より提案され、双方が合意するまで交渉を重ねる流れを経て、売買契約成立に至ります。
補足までに、海外不動産の購入申し込みに際しては、日本同様に、購入の意思を示すための申込証拠金の支払いを求められるケースがあり、その呼び名は「購入予約金」「予約金」など様々です。
海外不動産の売買で発生する申込証拠金の支払い先は、仲介業者であったり売主であったりするため、事前に支払い方法や金額も確認しておくとよいでしょう。
7. 売買契約締結と手付金支払い
海外不動産の購入申し込みと申込証拠金の支払いが完了したら、物件の売主との売買契約の締結へと進みます。
売買契約書は英語、または現地の言語で書かれているうえに、法律に関する記述も多く、読解が難しい文書ですが、以下のような重要事項に関しては内容をしっかりと把握しておきましょう。
- キャンセルに関する条項:物件工事の中止などにより引き渡しが不可能となった場合の支払い済み代金の返金
- ローン特約:住宅ローン審査を通過できなかった場合の手付金などの返金
- 修繕費用負担:物件引き渡し前に見つかった修繕を必要とされる箇所の修繕費用負担
契約書の内容に売主と買主の双方が合意しサインをしたら、手付金の支払いへと進みます。
手付金の相場は物件価格の10%〜20%で、購入代金の一部とみなされ、この後の過程では手付金を差し引いた金額を、最終的な残金として支払うケースが一般的です。
8. ローン審査申し込み・段階的支払い・インスペクション
物件の売買契約が成立し、手付金の支払いが完了したら、引き渡しに向けた各種手続きに入ります。
住宅ローンを利用する場合は、このタイミングでローン審査へ申し込むケースがほとんどです。
また、プレビルド物件を購入する場合は、契約締結後に段階的な購入代金の支払いが発生することがあります。
他にも、契約締結後には「インスペクション」と呼ばれる当該物件の現状の点検調査も行われます。
インスペクションは、アメリカにおける不動産購入の過程には基本的に組み込まれており、引き渡し前に物件の劣化状況や修繕箇所の点検・調査を専門業者に依頼し行います。
インスペクション業者への依頼費用は基本的に買主が負担しますが、修繕が必要な箇所が見つかった場合の修繕費用は売主が負担することが一般的です。

9. 残金支払いと引き渡し
売買契約にて定められた決済日に合わせて、残りの購入代金を支払います。
海外不動産購入の場合、代金支払いの方法の大半が売主の指定口座への海外送金です。
国内の金融機関によっては海外送金を断られたり、着金までに期間を要したりする場合があるため注意が必要です。
決済日に遅れることのないよう、送金手続きに関しては事前確認と余裕を持ったスケジュールで進めるようにしましょう。
着金の確認が取れたら、物件の引き渡しに移ります。
多くの場合、物件引き渡しの前に、精算確認書類へのサインを求められますが、サイン後は金額や内容の修正をすることはできないため、念入りな確認が必要です。
海外では家具付きの賃貸物件が多いため、引き渡しが完了した後、家具の購入・搬入手続きが発生するケースも少なくありません。
10. 登記完了
最後に物件所有権の登記手続きが完了すれば、海外不動産購入の一連の手続きは完了します。
不動産登記の手続きは、日本での不動産購入時と同様に、当該不動産の所有権を獲得した証明となる重要な手続きです。
ただし、不動産登記制度は国によって内容が異なるため、具体的な手続き内容は投資国の制度をよく確認する必要があります。
例えば、日本の不動産登記では、土地と建物は別々の不動産として扱われる一方で、大半の欧米諸国では、土地と建物はセットで扱われ、個別に取引・登記を行うことはできません。
このような制度内容の差異に加えて、手続きのスケジュールも国によって異なります。
アメリカであれば、エスクローが所有権の移転登記を行うため、登記から権利証の発行までは短期間で完了するものの、新興国では権利証の発行が長期化するケースが少なくありません。
権利証未発行の状態が長期化すると、その分様々なトラブルのリスクが高まるため、具体的な発行日程の確認を忘れないようにしましょう。

海外不動産投資購入時の支払い方法について
実際に海外不動産を購入する際、気になるポイントの一つとしてあげられるのが「支払い方法」ではないでしょうか。
ここでは、代表的な支払い方法である4つのパターンについて解説していきます。
一括支払い
現金による一括払いは、海外不動産購入時の支払い方法としては、最もポピュラーな方法です。
その理由としては、大きく2つの理由があげられます。
- 日本の金融機関では、海外不動産を対象とした住宅ローンの取り扱いが少ない
- 購入先の国の金融機関では、外国人が住宅ローンを組むことが難しい
近年は、日本の金融機関の一部で、国内に保有する不動産や当該金融機関の現預金を担保にローンを組めるケースも見られるようになっています。
また、外国人による不動産投資が盛んな国では、現地の金融機関でもローン審査のハードルが比較的低い場合もありますが、基本的には必要な費用は現金で用意することが通例です。
申し込み時に頭金支払い+竣工時に残金支払い
新築物件を購入する場合、購入申込時に頭金を支払い、残りの代金を竣工時に支払うというパターンがあります。
購入費用の大半の支払いタイミングを繰り延べられる点が大きなメリットではあるものの、売主や物件のディベロッパーに資産状況の証明書類提出が必要となります。
頭金を分割支払い+竣工時に残金支払い
こちらの支払い方法も、新築物件の購入が対象となり、頭金を毎月分割で支払い、物件の就航時に残金を支払うパターンです。
東南アジアの物件では、一括で支払う金額が多いほど割引率が高くなり、物件をより安く購入できる仕組みを設けている場合が多く見られます。
この仕組みによれば、現金一括払いが最も割引率が高くなる一方で、頭金を分割払いで残金を竣工時払いのパターンは割引適用外となるケースがほとんどです。
住宅ローンを使用する
先述の通り、海外不動産の購入にあたって、住宅ローンを利用することは可能です。
国内と海外、いずれの金融機関でローンを組むにせよ、それぞれのデメリットの大きさを考慮したうえで慎重に検討を進める必要があります。
海外不動産向けの住宅ローンを日本の金融機関で組む場合、その金利は国内不動産向けの住宅ローンよりも割高となります。
現地の金融機関で住宅ローンを組む場合は、東南アジアであってもさらに金利が高くなるため、住宅ローンの利用自体、あまりおすすめできる方法とは言えないでしょう。

海外不動産投資購入時にかかる諸費用
海外不動産の購入には、日本の不動産購入同様に、物件代金以外にも様々な事務手数料や費用が発生します。
そのため、購入予算を定める際には、物件価格だけでなく、諸費用も含めた予算を立てた上で購入手続きを進めなければ、蓋を開けてみて予想外の出費に驚くことになってしまいます。
ここでは、物件代金以外で発生する諸費用について解説していきます。
投資する国によって異なる
一連の海外不動産購入手続きにおいて発生する諸費用は、その内容も金額も、不動産を購入する国によって異なります。
外国人がその国の不動産を購入する場合、購入先の国々によって購入手続きにかかる制度やルールが設けられており、それらに準じた手続きを踏む必要があるためです。
例えば、外国人による不動産購入が盛んなアメリカでは、不動産購入に関して手厚い制度やルールが整備されているため、各々の手続きごとに費用が細かく発生する傾向にあります。
一方で、東南アジアやアフリカ諸国では、不動産売買に必要な法律や制度が未整備(または整備中)であるため、比較的簡略な手続きで売買が可能なケースも多く、その分諸費用も安くなる傾向にあります。


購入時にかかる一般的な諸費用
ここでは、諸費用の内訳項目が最も多いアメリカを例に、不動産購入時に発生する費用を解説していきます。
各費用のタイトルは、国によって「弁護士費用」や「仲介手数料」といった項目でひとまとめにされたり、逆に手続きごとに細分化されたりして記載されます。
不動産取引にかかる法制度の整備が最も充実しているアメリカでの一連の手続きを理解しておくことで、手数料の架空請求や手続きの不備などによるトラブルを回避することにつながるため、ぜひ参考にしてください。
海外不動産購入時に発生する諸費用(アメリカの場合)を紹介します。
諸費用 | 内容 |
---|---|
エスクロー費用 | 各種書類作成から手続き、金銭の授受など、不動産取引にかかる実務全般を行う専門業者への支払い |
インスペクション費用 | 物件購入前の調査点検を行う専門業者への支払い |
タイトルインシュアランス費用 | 購入した不動産の所有権や抵当権、地上権などの権利を保護する保険料 登記情報の瑕疵や税金未払いなどによる損害から買主を保護すし、もしも被害を被った際は当保険から保証金が支払われる |
登記費用 | 購入した不動産の所有権を移すための登記費用 |
公証手続き費用 | 不動産の所有権移転や抵当権設定(ローンを組む際に必要)に必要な公証手続き費用 公証役場への手数料に加え、エスクローへの手数料などが発生 |
固定資産税 | 購入した不動産の固定資産税を日割り計算し精算 |
物件管理費 | 購入した物件の管理を管理会社が行っている場合、支払い済みの管理費を日割り計算し精算 |
コンサルティング費用 | 日本の不動産仲介業者を利用した際に支払う仲介手数料 |

海外不動産と日本の不動産の仲介手数料を比較
海外不動産を購入する際、不動産仲介業者を利用するケースがほとんどです。
そして、日本と購入先の国のどちらの仲介業者に依頼するかを決めるにあたって、大きな検討材料となるのが「仲介手数料」でしょう。
ここでは、不動産仲介手数料がどのくらい違うのかについて、日本と海外の相場を比較してみましょう。
日本の不動産の仲介手数料
日本における不動産仲介手数料は、宅建業法にて上限額が定められているため、この上限額に仲介手数料を設定している不動産会社がほとんどです。
仲介手数料は、物件の売買金額によって段階的に設定され、「売買金額400万円以上」の物件に対する仲介手数料が上限となっています。
この場合の手数料の計算方法は以下の通りです。
【日本国内の不動産売買仲介手数料の計算方法】
(売買金額の3% + 6万円) + 消費税
例えば、2,000万円の不動産を購入した場合であれば、(2,000万円 × 0.03 + 6万)× 1.10 =72万6,000円が仲介手数料の上限となります。
海外の不動産仲介手数料
海外の不動産仲介手数料の相場は、以下のように国によって大きく異なります。
国 | 不動産仲介手数料 |
---|---|
アメリカ | 6% |
中国 | 0.5〜2.5% |
フィリピン | 3〜5% |
マレーシア | 3〜8% |
カンボジア | 3〜5% |
東南アジアなどの新興国では、不動産仲介業に関する法律が未整備であることも多く、業者ごとに独自の価格設定をしている場合もあるため、業者選定の際にはしっかりと価格設定のロジックを確認しておく必要があります。


海外不動産を購入する際に必須な海外送金の仕組み
海外不動産の購入には、必ず海外送金手続きが発生します。
海外の銀行口座への送金は、国内口座間での送金の仕組みとは異なる点があるため、国内送金と同じ感覚で手続きを進めてしまうと、決済日に着金が間に合わないなどのトラブルに発展しかねません。
そのような事態を回避するためにも、ここからは海外送金の仕組みや流れを解説するとともに、海外送金手続きを進めやすい銀行も紹介していくので、参考にしてください。
基本的な海外送金の流れとは
国内の銀行口座から海外の銀行口座への送金において、国内口座間の送金と最も異なる点は、「中継(コルレス)銀行」という金融機関を経由して送金が行われる点です。
海外送金では送金元の銀行から送られたお金は、コルレス契約を締結してある中継銀行を経由して、受取人の銀行口座へと着金する仕組みとなっています。
加えて海外への送金手続きでは、国内送金と比較すると様々な書類の提出が求められる点にも注意が必要です。
これは、海外送金を利用したマネーロンダリングなどの犯罪防止のためでもあり、近年では各国において海外送金に対する取り締まりが厳しくなっています。
そのため、正当な送金理由を証明する書類がない場合や、書類内容に整合性が認められない場合などは、送金に多くの時間がかかってしまったり、最悪、送金依頼を断られることもあるため、必要書類の準備は念入りに行いましょう。
海外送金のために必要な準備としては、以下のようなものがあげられます。
海外送金に必要な準備物
送金人の確認書類 | |
本人確認書類 | 運転免許証、パスポート、在留カード、住民票の写し等 |
出金口座の通帳と届出印 | Web口座の場合は、口座番号が分かるもの |
マイナンバー確認書類 | 本人確認書類と住所や氏名が異なる場合は不可 |
海外取引の詳細に関する書類 | |
原資の証明 | 給与明細、所得証明書、給与振込口座の入出金記録等 |
送金目的 | 不動産の売買契約書(または、購入申込書)、請求書等 |
受取人に関する書類 | |
受取人確認 | 受取人の氏名、住所 |
受取金融機関 | 金融機関名、支店名、支店住所、口座番号、口座名義 |
受取金融機関コード | SWIFT / BIC、IBAN、ABA Noなど |
日本から海外への送金額が3,000万円を超える場合は、上記とは別に、日本銀行への報告書の提出が義務付けられています。
送金元となる金融機関にて手続きが可能となるため、送金金額が規定額を超える場合は、事前に確認しておきましょう。
海外送金にかかる時間
金融機関によって多少の差はあるものの、すでに送金に利用する金融機関に口座を持っている場合は、送金手続き完了日からプラス3日程度で先方に着金します。
しかし、送金を行う金融機関での口座開設から始めなければならない場合は、1〜2週間、長い場合は1ヵ月程度かかることも考えられます。
申込証拠金や購入予約金の支払いでは、支払いが遅いと購入チャンスを逃してしまうこともあるため、口座開設が必要な場合は早めに済ませておくことが重要です。
海外送金にかかる手数料
海外送金にかかる手数料として代表的なものに、以下のような手数料があげられます。
手数料の種類 | 内容 |
---|---|
送金手数料 | 送金金融機関に支払う手数料 |
受取手数料 | 受取金融機関に支払う手数料 |
中継手数料 | 中継銀行に支払う手数料 |
為替手数料 | 送金先の通貨に両替して海外へ送金する際に支払う手数料 |
リフティングチャージ | 両替せずに同じ通貨で海外へ送金する際に支払う手数料 |
海外送金で発生する手数料の中でも、中継手数料は経由する中継銀行の数だけ発生するため、注意が必要です。
しかも、中継銀行ごとにいくらの中継手数料が必要かは実際に送金するまでわかりません。
そこで、海外送金時に経由される中経銀行をなるべく少なくすることで、手数料がかさむリスクを最小化することができます。
このような理由から、海外送金には、海外の多くの銀行とコルレス契約を結んでいるメガバンクなどの大手銀行を選ぶ方が懸命と言えるでしょう。
海外不動産購入におすすめな銀行は?
不動産購入は数千万と高額になるケースも珍しくない反面、そのような高額な海外送金を取り扱う銀行はあまり多くありません。
近年台頭しているオンラインでの海外送金サービスやインターネット銀行に関しても、上限金額が数百万円であることが大半であることから、不動産購入代金の海外送金に適しているとは言えないでしょう。
そこで、高額な海外送金にも対応可能で、手数料の優遇サービスを設けている銀行を、下記の表にて紹介していきます。
送金上限額については、いずれの銀行においても、顧客の取引額やステージランクなどによって変動させているため、まずは窓口に問い合わせてみることをおすすめします。
送金上限額 | 送金手数料 | 優遇特典 | |
ソニー銀行 | 要問い合わせ | 3,000円〜 | ・リフティングチャージ無料 ・Club Sプラチナステージ獲得で送金手数料無料(月3回まで) |
UFJ銀行 | 要問い合わせ | 3,000円〜 | ・ネットからの送金可能 |
新生銀行 | 要問い合わせ | 2,000円〜 | ・ダイヤモンド・プラチナステージになると、送金手数料無料(月1回) |
SMBC信託プレスティア | 要問い合わせ | 3,500円〜 | ・プレスティアゴールドメンバーになると、送金手数料無料 ・当行に保有している口座からの送金であれば、為替手数料無料 |

海外不動産購入に関するよくある質問
海外の不動産購入に対して、具体的な流れや必要な手続きのイメージが固まってきたかと思います。 最後に、海外不動産の購入を検討する際に抱きやすい疑問に対して回答していきます。
共同購入は可能?その場合のメリットは
共同購入は可能です。
海外では不動産の名義変更にも長い期間を要することも少なくないため、夫婦の共同名義で購入する方が離婚や遺産相続にかかる将来的なリスクを軽減できるメリットを得られます。
売買取引時の通貨はどの国の通貨ですか?
不動産の購入にかかる費用はすべて、購入先の国通貨で計算されることが一般的です。
為替変動の影響をダイレクトに受ける点は、海外不動産投資において最も注意すべき点と言えます。
不動産投資先として人気の東南アジアなどの新興国は、不動産取引に関する制度が整っていないうえに、政治や経済情勢も不安定な要素が多いことから、不動産取引における為替リスクが高いエリアであることにも考慮が必要です。
現地で銀行融資を受けることは可能ですか?
現地で銀行融資を受けることは可能です。
ただし、融資を受けるには現地の銀行の口座保有者であることが大前提です。
東南アジア諸国の不動産であれば、現地銀行の口座を開設し融資を受けることが一般的です。
欧米諸国では、外国人の口座開設や融資審査のハードルが高くなっているケースも少なくないため、融資を受けたうえでの不動産購入を検討しているのであれば、仲介業者や現地エージェントに早い段階で相談しておきましょう。
用意すべき自己資金の目安はどのくらいですか?
海外の不動産購入においては、購入にかかる費用は全額一括で現金払いが基本です。
分割払いやローンを組んで支払うことも可能ですが、その割合は国や物件によって異なります。
新興国の中古コンドミニアムなどであれば、300万円程度の頭金でも手の届く物件がありますが、分割払いやローンは余計な利息や手数料に加え、為替リスクをも抱えることになるため、できるだけ自己資金は多めに準備しましょう。


まとめ
ここまで、海外不動産を初めて購入することを想定し、具体的な購入の流れや各種費用について解説してきました。
購入手続きには、現地の不動産取引に精通したプロフェッショナルの力を借りることで、言語や文化・慣習などの壁を超えて、有益な投資物件をスムーズに購入することができます。
そのためには、必要な費用や送金手続きなど、お金に関する部分は慎重に検討し準備したうえで、資金的にもスケジュール的にも余裕を持って、丁寧に手続きを進めていくことが大切なのです。