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海外不動産投資の外国税額控除|計算方法や制度の概要を詳しく解説

海外不動産投資の外国税額控除|計算方法や制度の概要を詳しく解説

海外不動産投資に挑戦したいけど、現地の税制がわからずなかなか踏み出せないという方も多いのではないでしょうか?税金は投資家においてネックになる部分なので、無駄に税金を支払っていないかなどの不安はつきものです。

そこでこの記事では、二重課税を防止する「外国税額控除」について、概要や具体的な控除額の計算方法などを解説していきます。特に租税条約は海外不動産の投資家において非常に重要なので、ぜひ参考にしてください。

目次

基本情報|海外不動産の外国税額控除とは

海外不動産を扱うには、現地で発生する税金や節税の方法を知ることが大切です。
ここでは海外不動産投資でかかる税金の基本をいくつかご紹介します。

海外不動産投資は現地と日本の両方で税金が発生する

最初に把握すべき点は、海外不動産に投資をしても、日本の税制にも対応しなければいけないことです。
現地で発生した収入に現地の税制が適用されるのは事実なので、両国で税金を支払わなければいけません

そのため効率よく稼ぐことを第一に不動産投資に挑戦するときは、現地の税率などを加味したうえで投資国を決めるのも大切です。
例えばドバイは軽度な消費税しかないので、投資家に人気のスポットとなっています。

外国税額控除は所得税の二重課税を防止する制度

前項の解説を見ると、海外不動産投資は多くの税金を支払わなければと感じるかもしれません。
確かに一部の国ではこのような傾向もありますが、一般的には「外国税額控除」が適用され、同じ所得に対して二重に課税されることを防ぎます。

外国税額控除とは、現地で課された税額を日本の所得税や住民税から控除する制度です。事業が海外に進出するほど負担が増えてしまうと成長を止めかねないので、このような制度が設けられました。  

日本に居住地がある人が制度を利用できる

前提として、海外不動産投資に限らず、どの国の税制が適用されるかは居住地で決まります。
外国税額控除が適用されるのは、日本に居住地がある人に限ります。

ここでいう居住者の定義は、日本国内に住所があるか、1年以上継続して日本に居住している個人のことです。したがって日本人であっても海外に永住する環境であれば、日本の税制には従わないことになります。

以降で紹介している「租税条約」においては、このような居住地の区別が大切です。特に海外との往来が頻繁にある方は意識しておきましょう。

個人・法人ともに海外で発生した所得税が控除対象

不動産投資で発生する税金は様々ですが、外国税額控除が適応されるのは所得税のみとなっています。ただし税金のうち所得税が占める割合は最も多いので、控除制度の恩恵は大きいでしょう。

通常不動産を取得すると印紙税や登録免許税、不動産取得税など多くの税金が発生するので、予めシミュレーションをすることがあります。
このときに外国税額控除額も考慮して、不動産の運用方法を検討するのがおすすめです。

控除には上限額が定められている

税金が控除されるといっても、上限額は定められています。どれほど控除額があるのかは計算で求められますが、個人か法人かによって異なるので注意してください。
具体的な計算方法については記事後半で解説しています。納税時に必要になってくる手続きなので、しっかり確認しておきましょう。

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外国税額控除を左右する租税条約

外国税額控除がどれほど適用されるかどうかは、租税条約というもので定められています。ここでは租税条約の概要を解説していきます。

租税条約で二国間の税金の取り決めをしている

租税条約とは、国際的二重課税や脱税を防止するために、日本と相手国との間で結ばれる条約です。主に3つの目的があります。

■国際的二重課税の防止
これまでご紹介してきた二重課税を防止することが、租税条約の一番の目的です。
近年はどのような業界においてもグローバル化が進み、事業のターゲットが海外に向けられる機会も増えてきました。そこで海外進出をするほど税金面で負荷がかからないよう、租税条約によって緩和をしています。

■脱税の防止
二重課税とは逆に、脱税の防止にも繋がっています。仮に条約がなければ、現地で発生した所得税を納税する義務があるのか不透明な状態です。
つまり租税条約が納税額・納税先のガイドラインとなり、違法な脱税や節税を防ぎます。海外で健全に事業を進めるのは欠かせない、国際的な決まり事なのです。

■両国間で税務関係の協力体制を構築する
租税条約を結ぶにあたっては、両国の租税に関する取り決めの情報交換が必須です。これらの情報を踏まえたうえで控除の方針が決まると、必ず従うべき税制のマニュアルが設けられたことになります。
この結果新規事業主が進出してきても、円滑に税務処理を進めることができるのです。

日本は146カ国と租税条約を締結している

2023年4月現在では、日本は146の国や地域と租税条約を結んでいます。世界の4分の3程度の国に該当するため、投資先のほとんどの国では外国税控除が適用されると想定していいでしょう
租税条約を結んでいない国としては、アフリカや南アメリカなどの発展途上国が多くを占めています。

どの国が租税条約を結んでいるかについては、財務省のホームページに詳しく記載があります。投資を検討している国が締結しているか、予め確認しておきましょう。

財務省「我が国の租税条約等の一覧」はこちら

租税条約以外の協定や条約

世界の国々には、租税条約のほかにも別の条約を結んでいるケースもあります。その代表として、以下の3つを解説します。

情報交換協定

情報交換協定とは、両国が租税に関する情報を共有し合い、どのような場面で税金が発生するのかを共通認識として持つためのものです。
これは思いもよらない税金が発生し、あとからトラブルを生まないために設けられました。

したがって租税に対しての対処方法は、書面での指示に従うことになります。あくまでも租税の概要を明示しているだけであり、二重課税防止のような節税関連の対応はないと想定しておきましょう。
バハマやマカオなど、11の国と地域で採用されています。

税務行政執行共助条約

税務行政執行共助条約とは、32の国々が租税に関する対処を円滑に行うために結んだ多数国間条約です。租税条約は両国間で結ぶものですが、本条約は署名国全てに該当している点が異なります。
内容としては、以下の3つで構成されています。

  • 情報交換:前項の「情報交換協定」と同様に、租税に関しての情報を共有する
  • 徴収共助:租税の滞納者の資産が他国にある場合に、その国が徴収する権利を持つ
  • 送達共助:租税に関する書類の名宛人が他国にいる場合に、その国が書類の送達をできる

日本をはじめ、アメリカやイギリスなど先進国が署名の中心です。署名国の一覧についてはこちらをご確認ください。

日台民間租税取決め

日台民間租税取決めとは、日本と台湾の民間企業同士が作成した租税に関しての条約です。国際的な条約ではないので、両国間での決まり事のような位置付けになっています。
実際に台湾で事業収入などが発生した場合には、「日台民間租税取決め第24条(相互協議手続)の取扱い等について(事務運営指針)」の内容に従って税金の対処をすることになります。

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個人投資家|外国税額控除の計算方法

外国税額控除の計算は、個人の投資家か法人かによって異なります。以下では個人投資家の場合の計算方法や限度額について解説していきます。

所得税の控除限度額の計算方法

一般的な所得税の控除限度額は、以下の式で算出されます。
【所得税控除限度額=該当年の所得税額×(該当年の国外所得金額 / 該当年の所得総額)】

具体的に各金額を当てはめて計算してみましょう。海外での収入が500万円、国内での収入が1,500万円と想定します。

<所得税控除限度額の計算例

該当年の所得総額:2,000万円(税率は40%)
該当年の所得税額:2,000万円×40%=800万円
該当年の国外所得金額:500万円

所得税控除限度額=800万円×(500万円 / 2,000万円)=200万円

上記の収入割合では、控除限度額が200万円となります。

計算においては、該当年の国内外所得総額と、海外での所得額が必要となります。
もちろん所得税額は所得総額によって変化するので、国税庁の早見表から確認しておきましょう。

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外国所得税額が控除限度額に満たない場合

上記の計算の結果、海外で発生した所得税の総額が控除上限額に満たないことがあります。
この場合の控除額は外国所得税の総額になるので、申請や納付をするときは全額適用となります。手続きも非常にシンプルです。

外国所得税額が控除限度額を超える場合

外国所得税額が控除上限額を超える場合は、この上限額に以下の2つのうち少ない額を合算した金額が控除対象となります。

・指標1:外国所得税額から控除限度額を差し引いた残額
・指標2:次の式で算出される復興特別所得税の控除限度額
【復興特別所得税の控除限度額=その年分の復興特別所得税額×(その年分の国外所得金額 / その年分の所得総額)】

計算はやや複雑になりますが、各種税額を明確にしたうえで算出しておきましょう。

<復興特別所得税の控除限度額の計算例>

海外での収入が500万円、日本での収入が1,500万円のとき、総所得額は2,000万円。
基本所得税額は総所得にかかる税金で、2,000万円の所得に対する税金は800万円。

・復興特別所得税額=基準所得税額×2.1%=800万円×2.1%=168,000円
・復興特別所得税の控除限度額=168,000円×(500万円 / 2,000万円)=42,000円

この場合、指標1の金額が42,000円を上回るか、下回るかで控除限度額が変わってきます。海外の所得税は国によって税率が異なるので、復興特別所得税を基準にするとわかりやすいです。

外国税額控除は繰越控除も可能

海外で支払った所得税が控除上限額より下回る、もしくは上回る場合、確定申告によって最大3年間繰越すことが可能です。該当年の翌年から適用となります。

控除余裕額とは

海外で支払った所得税額が、控除上限額を下回ったときの差額を「控除余裕額」といいます。
控除余裕額は翌年の控除上限額に加算されるので、無駄になることはありません。

控除限度超過額とは

海外で支払った所得税額が、控除上限額を上回ったときの差額が「控除限度超過額」です。
このときの超過額は翌年の確定申告でも控除の対象となるため、控除余裕額が発生した場合に適用となります。

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法人|外国税額控除の計算方法

法人の場合は扱う税金の種類が異なるため、個人投資家とは計算方法がやや異なります。各税金ごとの控除額を確認しておきましょう。

法人税の控除限度額

法人税は個人投資家の所得税に該当します。計算方法は以下のとおりです。
【法人税の控除限度額=当期の法人税額×(当期の国外所得金額 / 当期の所得金額)】

所得税が法人税に変化しただけで、計算方法に違いはありません。基本的な式として抑えておきましょう。

その他の税金控除限度額

法人であれば、法人税のほかにも地方法人税・道府県民税・市町村民税などが発生します。これらの控除限度額の算出方法は以下のとおりです。

■地方法人税
【地方法人税の控除限度額=当期の地方法人税額×(当期の国外所得金額/当期の所得金額)】
地方法人税もこれまでの式と同様で、違いはありません。

■道府県民税
【道府県民税の控除限度額=法人税の控除限度額×1%】
道府県民税の算出には、法人税の控除限度額が関与しています。割合としては1%なので、控除額そのものは大きくありません。

■市町村民税
【市町村民税の控除限度額=法人税の控除限度額×6%】
市町村民税は法人税控除上限額の6%です。順を追って算出していきましょう。

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不動産投資の外国税額控除に関して覚えておきたい3つのこと

外国税額控除の理解を深めるためには、以下で解説する3点は見逃せません。海外不動産投資に挑戦する方は、必ず目を通しておきましょう。

租税条約と日本国内の税法が異なるケースがある

状況によっては、租税条約に記載がある内容と日本国内の税制が異なるケースがあります。この場合租税条約の内容を優先することがほとんどです。
通常は国内法によって、日本独自の取り決めが優先されます。しかし外国税額控除などに関しては他国との連携があるため、この限りではありません。
税金に関して不明な点があれば、現地の不動産を専門に扱う企業の指示に従いましょう。

外国税額控除の適用には確定申告が必要

外国税額控除を申請するには、確定申告で専門的な手続きが必要です。必要な書類などは以下のとおりです。

確定申告時に必要な書類
  • 確定申告書
  • 外国税額控除に関する明細書
  • 外国で所得税が課されていることを証明する書類
  • 国外所得総額を証明する書類
  • 控除限度額の算出に必要な情報が記載された書類

鍵になる「外国税額控除に関する明細書」は、源泉徴収票や年間取引報告書などがあると情報をまとめやすくなります。
また繰越控除を利用する前提で、過去数年間の納税状況がわかるようにしておくとスムーズです。
確定申告の時期は通常と変わらないので、2月の中旬からの期間内に税務署に提出しましょう。

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法人は損益通算で所得税を節税できる

「海外不動産投資は損益通算で節税ができる」という情報を耳にした方もいるかもしれませんが、税制改正により法人しか損益通算ができなくなりました。

本来損益通算は、ある事業で生じた赤字を他の収入で補填し、所得税の評価額を抑えるために設けられています。しかし個人の投資家が節税目的に海外不動産を始めることが増え、従来の目的が果たせなくなったことを理由に改変されました。

現在個人投資家は損益通算ができないので、節税を第一の目的として投資を始めないように注意してください。

海外不動産の外国税額控除に関する質問

ここでは海外不動産投資における外国税額控除について、よくある質問をまとめました。ぜひ参考にしてください。

租税条約を結んでいない国で発生した所得税はどうなりますか?

現地の国の税制にもよりますが、基本的には二重に課税されると想定しておきましょう。無駄に税金を支払わないようにするためにも、極力租税条約を結んでいる国への投資がおすすめです。
また租税条約が備えられている目的としては、税額の算出や納税までの手順をスムーズにすることが挙げられます。
特別な外貨資産を持ちたいなどの理由がない限り、トラブルを生まないためにも、外国税額控除が適用される国を選びましょう。

外国税額控除をするとどのくらいの税金が戻ってきますか?

計算方法に基づきますが、最大金額は控除上限額までです。ただし「控除余裕額」や「控除限度超過額」が発生すると、翌年の評価対象額が変動します。
また控除の対象となるのは所得税のみなので、不動産投資では一般的な印紙税などは該当しません。

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まとめ

この記事では、海外不動産投資に挑戦するうえでは欠かせない「外国税額控除」について、概要や目的、具体的な計算方法などを解説してきました。
投資などの資産運用において税金は切り離せない存在ですが、外国税額控除ならびに租税条約は、活動者に大きなメリットを与えるものです。

また世界の4分の3の国と地域で締結していることから、ほとんどの投資先で二重課税を防ぐことができます。海外不動産投資を始めるひとつの基盤は整っていると評価できるので、積極的に取り入れてみてください。

ただし確定申告で必要となる書類の準備や、現地の細かな税制をひとりで把握するのは困難です。不動産投資に初めて挑戦する方は、専門企業のサポートが受けられるかどうかを重視してエージェントを選んでいきましょう。

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この記事を書いた人

三井邦弘のアバター 三井邦弘 ブログ編集長

日本生まれの韓国人。関西大学卒業後、ソウルでガイド事業開始。2010年EC運営会社設立。2013年製菓製造販売業開始。2016年和食レストラン開始。2018年ウェブマーケティング会社設立。2019年Token NewsのKorea Managerを担う。現在、アジアとアフリカへ投資(企業、不動産、ETF)実行中。

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