近年は副収入の確立や税金への対策が重視されていることから、資産運用のひとつとして海外不動産投資を検討している人も増えてきました。
このとき投資初心者が重視すべき点は、所有している不動産をどのように売却するかを考える「出口戦略」です。
売却時の収益は投資の成功を左右する重要な要素なので、予め計画を立てておく必要があります。
そこでこの記事では、海外不動産投資における出口戦略の概要を踏まえ、具体的な売却方法や注意点などをご紹介していきます。
不動産投資の出口戦略に関する専門知識
「出口戦略」とは、何らかの損失が発生した際に、被害を最小限に抑えるための撤退方法・作戦を意味するものです。
本来は戦時下で使用される言葉でしたが、引き際が重要視される不動産投資をはじめ、市場や経営にも取り入れられるようになりました。
そこで以下では、不動産投資で利益を出すにあたって重要な基礎知識と、出口戦略の概要をご紹介していきます。
不動産投資は「不動産収入」と「売却益」で決まる
国内・海外問わず、不動産投資で得られる収入は「不動産収入」と「売却益」で算出されます。
不動産収入とは家賃や礼金、駐車場利用料などの一般的な収益のことで、各収入の単価や利用者数・年数などによって目安を立てやすいものです。
一方で売却益とは、所有している不動産を売却した際に発生する利益を指します。この利益の算出に関わってくる費用は以下のとおりです。
売却益に関わる費用 | 内容 |
---|---|
売却価格 | 買主が不動産を買い取った価格 |
所得費 | 自身が不動産を受け取った(購入した)際に発生した経費 |
譲渡費 | 所有している不動産を売却した際に発生する経費 |
控除金額 | 各条件によって分類されている特例 |
上記の4つの収益・経費から、売却益を算出します。
【売却益の算出方法】
売却益=売却価格-(所得費+譲渡費+控除金額)
このような計算から得られる売却益は、保有していた不動産での収支が黒字になるかを大きく左右します。
一般的に不動産収入だけで投資した資金を回収することは困難なので、売却する際の収入も考えておくことが大切だと認識しておきましょう。
不動産投資の出口戦略とは
前項でご紹介した通り、投資が成功するかどうかは「売却益」にかかっているといっても過言ではありません。
不動産収入は、机上計算でおおよその目安が立つものです。
そのため、いかに損失なく撤退するかという出口戦略を練る場合には、「物件をどれだけ高く売却できるか」を追求していくことになります。
どれだけ順調に不動産収入を獲得できても、売却時の修繕費やリフォームなどで出費が増えてしまっては上手な投資とは言えません。
また海外不動産投資では国によって発生する税金が異なるため、譲渡費が思わぬ金額になることも考えられます。
これらの影響で収入の柱である売却益が計上できなければ、結果として赤字に繋がることもあるのです。
以上のような背景から、投資をする前の段階でも出口を見据えておくことが大切になってきます。

海外不動産投資で出口戦略を重要視するワケ
海外不動産投資は扱う物件が全世界に拡大するので、国の経済状況や投資の仕組みを理解しないと失敗するリスクが非常に高まります。
そこで以下では、海外不動産だからこそ出口戦略が重要になってくる理由を解説していきます。
売却益を考慮してどこに投資するかが変わってくる
大前提として、売却益を得るには次の不動産買主を見つけなければいけません。
これは言い換えると、買い手がいるような優良物件でなければいけないということです。
例えば、以下のような状況に当てはまるとスムーズな不動産売却はできません。
- 物件の築年数が経過しすぎていて魅力がない
- 入居者が少なく不動産利益を十分に確保できる見込みが薄い
なかなか買い手がいない不動産は、保有するメリットが少ないという意味も含まれています。
よって自身が数年間所持した後でも需要がある物件なのか、事前に売却までの道筋を立てておく必要があるのです。
経済の変化によって投資の成功が左右されるから
海外不動産投資で一番最初に考えるべきことは、どの国の物件に投資すればリスクが少ないかという点です。
この際も当然「出口戦略」が鍵になってくるので、その具体的な理由をご紹介していきます。
国の情勢「マクロ経済」による判断で投資すべき国が定まる
海外不動産を扱う企業は数多く存在しますが、最初はどの国であれば不動産需要が高いかを基準に振り分けていくことになります。
これらの状況を見極めるには多方面から分析が必要です。不動産需要が高い指標として用いられるのは主に以下の3点です。
- 人口が爆発的に増加している
- 新しい都市や首都が誕生している
- 高度経済成長期に入り、産業が大きく発展している
ある国の経済状況全般の動きを「マクロ経済」と呼びますが、海外不動産投資においてはこのように俯瞰して投資先を決めていきます。
出口戦略の面で見れば、今後も住宅需要が伸びる傾向にある国を選べるので売却益を上げやすくなるのが利点です。
地域ごとに発展している産業「ミクロ経済」で収益の上げやすさが異なる
投資先の国を上手に選ぶことができれば大きなミスは生みませんが、投資する物件によってどれほどの収益をあげられるかは当然変化していきます。
ここで大切なのは、ある区域の住民や産業、地価、生活水準などに焦点を当てた「ミクロ経済」の追求です。
例えば以下のような視点を持つことが挙げられます。
- 学校が近いエリアではファミリー向けの住宅需要が伸びてくる
- 工場など産業が発達するエリアでは集合住宅の需要が高くなりやすい
- 都心部に近いエリアでは今後の地価高騰に備えて投資用マンションが増える
このように細かな経済状況に焦点を当てれば、より論理的に優良な物件を見つけることができます。
もちろん物件も新築であることが多いので、数年後に売却しても価値は下がりにくい傾向にあります。
うまく予測通りに進めば売却益も高騰する可能性もあることから、事前に出口戦略を検討しておくことは非常に重要です。
取り扱う物件によっておすすめの売却時期・方法が異なる
これまで出口戦略について解説してきた通り、売却益をあげるには所有している物件が売れることが大前提です。
そのため売却時には、劣化した部分を修繕したり、場合によっては建物を解体して土地として販売したりする方法もあります。
これらの対応をすることで費用がかかってしまいますが、収益があげられない物件をそのまま保有するよりは効果的です。
また短期間で売却してしまうと「譲渡所得税」が増加してしまうことがあります。
よって不動産投資をする際は、
- 物件を何年間保有する予定か
- 保有期間中に考えられる経年劣化にはどのようなことが考えられるか
- どのような売却形態を選択するか
このような売却方法を予め検討しておくことで、ある程度費用や運用の想定をすることができます。
詳しくは以下でご紹介していく「物件別に考える出口戦略の立て方」を参照してください。

日本と海外における不動産投資の出口戦略の違い
日本と海外とでは経済状況や税金の仕組みが異なるので、不動産投資でも出口戦略の立て方が変わります。
そこで以下では、両者の具体的な違いを詳しく解説していきます。
表面利回りの算出結果が異なる
表面利回りとは、ある物件がどのくらいの収益をあげられるかを意味する指標です。
年間の不動産収入を購入価格で割り、%表示したものがこれに当たります。
【表面利回りの計算方法】
表面利回り=(年間不動産収入)÷(不動産購入価格)×100
ここで表面利回りが10%と算出された場合は、毎年不動産収入で投資金額の10%を回収できる計算です。
基本的には、以下の条件に該当すると数値が高くなります。
- 新築の住居:家賃が高い傾向にあることから不動産収入も増加する
- 中古の住宅:不動産価格が落ちており、初期投資を回収しやすい
また、日本の不動産は中古物件だと価格が急激に落ちる傾向にありますが、海外不動産はあまり大きな変動がみられないことが多いです。
よって日本では平均5%以下であるものの、人口が爆発的に増加し、常に住宅需要がある地域では10%近い値になることがあります。
あくまでも目安の値なので物件の詳細までは判断できませんが、投資先を見極めるひとつの指標として活用できます。
物件価格の上下変動が異なる
日本の不動産は土地の価格が高く、建物価格は低い傾向にあります。
そのうえ新築であることに価値がある不動産が多く、築年数が経過するごとに建物価格は大幅に下がっていくのが現状です。
一方で海外不動産は、中古物件でも資産価値が高い国が目立ちます。
これは気候や建築方法の違いにより耐久年数が長いことが理由のひとつで、簡単な修繕を繰り返し引き継いでいくことを前提としています。
なかには改修工事を行うことで新築よりも住みやすくなり、物件の価値が上がることも少なくありません。
海外の不動産は地域によって価値観が大きく異なるので、出口戦略の立て方が変わるということを抑えておきましょう。
発生する税金が異なる
不動産は購入時・売却時ともに多くの税金が発生しますが、その種類は投資先の国によって様々です。
ここでは国内と海外とで大別し、主に発生する税金の種類をご紹介していきます。
国内不動産投資で発生する税金
国内の不動産に投資をした際は、主に譲渡所得税を念頭に置くことになります。
譲渡所得税とは、不動産を売却した際の利益に発生する税金です。
不動産を所有してから売却するまでの期間によって、住民税や所得税の割合が変わってきます。
またそれ以外にも、不動産の取引に必要な印紙税や登録免許税なども発生します。
税額としては所得税が中心になりますが、細かく分類すると種類も多いので注意しましょう。
海外不動産投資で発生する税金
海外不動産に投資した場合でも、基本的には日本の税制に従って税金が発生します。
しかし投資先の国によっては、現地の税制も適応になるケースがあるので気を付けましょう。
主に所得税に対して税金が発生することが多いですが、二重に納税してしまった際には「外国税額控除」が適用になります。
詳しくは下記の注意点でご紹介していくので、概要を確認しておいてください。

海外不動産投資でおすすめする具体的な出口戦略5選
ここまでご紹介してきた不動産投資における出口戦略の概要を踏まえ、以下では具体的な売却のタイミング・方法をピックアップしていきます。
入居者が住んでいる状態で売却する
海外不動産投資が成功しやすい物件の基本事項は、空室の危険性がないことです。
そのため数年間満室を維持し投資の元金を回収したら、入居者がいる状態で売却することがあります。
これは「オーナーチェンジ」という方法で、投資初心者におすすめされる物件です。
オーナーチェンジのメリットには以下のような内容が挙げられます。
- 投資後すぐに安定した不動産収入が入る
- 住宅の内見期間をカットすることができる
- 前オーナーから物件の特徴を聞くことができる
- 収益性の高さから不動産ローンの審査に通りやすい
なによりも収入が安定することでの恩恵が強く、投資先で迷ったら優先して選びたい物件です。
このような利点を生かすためにも、入居者が多い状態で売却をするのは非常に有効な手段といえます。
減価償却が終了するタイミングで売却する
不動産投資における減価償却とは、高額な初期投資を経費として計上する際に、数年間に分割して会計をしていく方法を意味します。
現在は定額法という計算方法で毎年の経費が決まっていますが、住宅の構造によって償却期間が定められています。
そのため減価償却期間が終了すると経費として処理することができず、所得税や住民税が大幅に増加するため注意が必要です。
税金が増えると収支が赤字になるケースもあるので、出口戦略を考える際の指標として取り入れましょう。

改修工事を行う前のタイミングで売却する
築年数が経過すると、部分的な修繕やリフォームは少なからず発生します。
これは前述の減価償却期間にも関わってくる内容ですが、耐用年数を超えたら何らかの手を加えるものだと念頭に置いておきましょう。
そのため大幅な改修工事や建て替えが求められることも多いので、出費が増える前に売却するのもひとつの方法です。
ただし次の買い手が見つからなければ売却はできないため、物件の価値を高めるための修繕が必要かどうかは予め検討しておいてください。
円安が進んでいるタイミングで売却する
海外不動産への投資で気を付けなければならないのが「為替レート」です。
一般的に海外の不動産を購入・売却する際は現地の通貨で行うことになるので、そのタイミングに応じた為替レートの影響を受けます。
よってより大きな収益を上げるには、物件購入時は円高、売却時は円安であるほど上手な投資といえます。
各国の情勢によって投資先を決めることを第一に、景気の加速度合いも参考にして出口戦略を組んでいきましょう。
デッドクロスが発生する前に売却する
デッドクロスとは不動産ローンを組んでいる際に、元金返済額が減価償却費を上回ってしまう状況を指します。
このデッドクロスが発生してしまうと税金の支払いだけが増えてしまい、紙面上では黒字経営でも実際は手元の資金が失われるという状態に陥ります。
そのため減価償却期間を経過した物件は、需要の有無や耐久性の面だけでなく、税金管理も難しくなるので注意が必要です。
またデッドクロスを理解するには、以下の2点を抑えておきましょう。
- 減価償却ができるのは住宅そのもののみで、土地などには該当しない
- 不動産ローンの場合、経費として計上できるのは利子のみ
このような背景を踏まえると、減価償却期間を加味して返済シミュレーションを組み立てることが大切です。
その他にも返済期間を短くしたり、利回りの良い物件を選んだりして、根本的にデッドクロスのリスクを取り除いていく戦略をとりましょう。

物件別に考える出口戦略の立て方
ここまでは海外不動産投資の一般的な出口戦略を解説してきましたが、扱う物件の状況によって大別していくのもおすすめの方法です。
以下ではシチュエーションとして多い4つの場面を取り上げ、有効な出口戦略をご紹介していきます。
常に需要のある物件はオーナーチェンジとして売却する
不動産の売却予定時期になっても入居者が多いのであれば、次の買主が見つかりやすい「オーナーチェンジ物件」として売却するのが鉄板です。
基本的に海外不動産は投資家から投資家に繋がるので、以前のオーナーが実績を上げた物件は非常に人気が高くなっています。
よって住宅の設備に問題がなかったり、初めての海外不動産投資であったりした際には、手続きがスムーズに完遂するのでおすすめです。
タワーマンションは相続税対策に取り入れやすい
よくタワーマンションは相続税対策になるのでおすすめという話を耳にしますが、その理由を簡単に説明すると以下のような点が挙げられます。
- 不動産の相続税評価額は、1戸あたりの土地面積で決まる
- 現金の資産を不動産に変換して相続すると、課税対象が60~70%削減される
- どのフロアを選んでも相続税が一定であることがほとんど
- 売却しても価値が下がりにくい
このような観点から、資産運用のひとつとしてタワーマンションに投資をするケースが目立ちます。
負担になりやすい税金への対策として非常に有効な手段ではありますが、注意点として相続後すぐに売却をしないことを覚えておきましょう。
短期間で売却してしまうと税金回避行為ととらえられてしまうので、少なくとも5年間程度は運営していくようにしましょう。


立地が良い物件ならリフォームをして売却する
投資可能な物件の中には、築年数が経過しているものの立地が良い住宅も見受けられます。
このような物件を減価償却期間まで運営したら、不動産価値を高めるためにリフォームをすることもひとつの手段です。
経済が発展してきた国では10〜20年程度で大きく環境が変化します。
住環境が良く次の需要が見込める物件であれば、修繕費用をかけてでも買い手の目に留まりやすいように手を加えることも検討しましょう。

戸建て住宅は土地で売却するのも選択肢のひとつ
海外不動産では住宅の価値が下がりにくい傾向にあるものの、一棟アパートや戸建て住宅は土地にして売却した方が需要が高い場合も多いです。
これらは当然住宅の環境や築年数によって判断していきますが、空室リスクが高い物件よりは注目されやすくなります。
特に日本では土地のほうが価値が高い傾向にあります。
なかなか買い手が見つからないときや、物件の維持費が負担になりそうな場合は土地にして売却することも検討してみましょう。
基本的な不動産の売却ステップ
海外不動産投資の出口戦略は投資先や経済状況、住環境によって大きく変化します。
そのときに選択した売却方法によって手続きの順序は変わってくるものですが、以下では基本的な売却の流れを解説していきます。
海外不動産を取り扱う専門会社に問い合わせる
海外不動産の売却は、現地の経済に特化した知識や言語の問題があるため、基本的に専門の不動産会社に依頼することになります。
この際の注意点として以下の3点を抑えておきましょう。
- ある地域特定の不動産会社を選ぶ
- 実際の不動産取引実績を詳しく紹介している会社を選ぶ
- 現地にも支店を構えている会社があれば優先して選ぶ
また、場合によっては司法書士にも依頼することも考えられます。
まずは不動産会社を選び、状況に応じて対応していきましょう。
現状での売却益と税金を計算する
依頼する不動産会社が見つかったら、机上計算で現状の売却益を算出してもらいましょう。
必要な税金や手元に残る利益を計算し、総合的な収支を確認しておきます。
しかし、売却価格に不満があった際は複数の会社に査定をお願いするのもひとつの方法です。
冒頭で解説した通り、売却益は不動産投資の成功を左右する重要な収入源です。
査定に関しては慎重に行い、納得できる金額で売却の手続きを進めるようにしてください。
改修などの必要な処置を行う
売却価格に不満があったり、物件の価値を高められる施策があったりした場合には、リフォームのプランニングを進めていきます。
海外不動産は中古物件でも価値が落ちにくいため、住みやすさや内装の見た目に関する箇所を修繕し売却することはよく見られます。
なによりも次の買い手に繋がることが大前提となるので、できるだけ魅力的な不動産になるように意識していきましょう。
次の買主を探す
売却できる環境が整ったら、広告などを打ちながら買い手を探していきます。
この期間は不動産会社に一任することも多いですが、販促活動は別途費用がかかることも多いです。
トラブルにならないように事前に費用を確認しておき、円滑に進めていきましょう。
諸手続きを行い契約を結ぶ
買主が見つかった際には、契約していた不動産会社から連絡が入り手続きに進みます。
入金されているかどうかや書類の抜けなどがないかをしっかり確認し、100%完結するまで丁寧に行っていきましょう。
また場合によっては買主と面会し、物件の情報を共有することもあります。
利益が発生した場合には確定申告も必要となるので、細かなタスクを見逃さないように注意してください。

出口戦略を立てる際の注意点
ここまで海外不動産投資の出口戦略について詳細をご紹介してきましたが、併せて以下の注意点も抑えておきましょう。
最初は優良物件を見つけることを優先する
不動産投資は出口戦略が鍵であることに変わりはありません。
しかし最初に考えるべきことは、利益を上げやすい優良な物件を探し、不動産収入を安定的に獲得することです。
どのような物件であっても、利回りをもとに投資した資金を何年で回収できそうかという目安を立てていきます。
この時点で収益をあげられる見込みが少なくては、どれだけ効果的な売却方法を検討していても赤字になるリスクが非常に高いです。
住む人・買う人がいない物件を保有するメリットは皆無ともいえるため、投資を初めて行う人ほど物件選びの優先順位を間違えないようにしましょう。

オーナーチェンジ物件はデメリットもある
出口戦略の王道として「オーナーチェンジ物件」をご紹介してきましたが、入居者がいることで生じるいくつかのデメリットもあります。
以下の3点は抑えておきましょう。
内覧ができず事前に修繕費などの算出がしにくい
オーナーチェンジ物件は入居者がいる状態で取引を行うので、内覧で部屋の環境をうかがうことは非常に困難です。
一部空室があれば多少の推測は可能ですが、部屋のトラブルや部分的な劣化を特定しにくくなってきます。
そのため十分に住宅の環境を知ることができず、机上のデータを頼りに取引を進めることもあるので注意しましょう。
新しく条件を設定しにくく現状維持が基本となる
入居者からの信頼を考慮すると、オーナーチェンジをする際に新たな条件を提示することは困難です。
誰にでもメリットのある改変であればトラブルは少ないですが、契約書の手続きが必要になる場合は手間もかかります。
そのため基本的には現状維持のまま引き継ぐことになると想定しておきましょう。
買い手は投資を目的とした人に制限されやすい
オーナーチェンジ物件は投資の面でメリットの大きい不動産ですが、この点が影響し買い手も投資家に制限されがちです。
理由としては物件の内見ができないこと、居住用として検討している人が限られることが挙げられます。
よって投資をするメリットがあるタワーマンションや立地の良い不動産でなければ、なかなか買い手が見つからないという状況になりかねません。
特に海外不動産投資は選択肢が広いので、出口戦略を検討する際は投資家に人気のある物件かを確認しておきましょう。
外国税額控除の概要を抑えておく
海外の不動産に投資をする際は、税金対策のひとつとして「外国税額控除」という制度を理解しておく必要があります。以下の概要を抑えておきましょう。
外国税額控除の仕組み
外国税額控除とは、国内と投資先の国で発生する所得税をどちらも収めた際、二重課税を防ぐために設けられた仕組みです。
通常日本に居住していれば、海外で収入が発生しても日本の税制に従って所得税が発生します。
しかし投資先の国が「源泉地課税」を取り入れており、現地でも納税をしている場合には外国税額控除が適用されます。
よって投資先の目星がついたら、税金の仕組みがどのようになっているか事前に確認しておきましょう。

控除金額は上限があるので注意
ある年の外国税額控除の上限額は、以下の計算方法で算出されます。
【ある年の外国税額控除の上限額】
(控除上限額)=(所得税額)×(国外での所得総額)÷(所得総額)
この制度を受けるためには、確定申告の際に以下の書類が必要となります。
- 外国所得税が発生したことを証明する書類
- 国外所得総額がわかる書類
- 外国税額控除の明細書
- みなし外国税額控除の明細書
- 控除対象になっている税額を記載した証明書
みなし外国税額控除とは、日本が租税条約を結んでいる国で企業誘致を行うと発生するものです。必要に応じて明細書を準備することになります。
詳しい内容は国税庁のサイトに公開されています。海外不動産投資を検討している方は一度目を通しておいてください。

各国で発生する税金の違いを予め把握しておく
前述の外国税額控除にも関係してきますが、投資をする国によって発生する税金は異なることを念頭に置いておきましょう。
海外不動産への投資は大きな資金が動くことになるので、その分税金の対策もしっかり行わなければなりません。
また経費として計上できるもの・できないものを明確にしておかないと赤字になるリスクも高いため、契約前の段階で全体像を明確にしておいてください。
この点が出口戦略を立てる重要性でもあるので、契約前の段階から投資先の税制について調査しておきましょう。
短期譲渡すると譲渡所得税が高くなる
譲渡所得税とは、不動産を売却した際に発生する住民税や所得税などの総称です。
出口戦略では物件を売却するタイミングが鍵になりますが、譲渡所得税を考慮すると5年以内での売却は控えましょう。
理由としては、5年以内に短期譲渡してしまうと譲渡所得税の税率が2倍になるからです。
内訳としては以下のようになっています。
■短期譲渡所得:不動産所得から5年以下での売却
所得額×39.63%(所得税:30%、住民税:9%、復興特別所得税:0.63%)
■長期譲渡所得:不動産所得から5年経過後の売却
所得額×20.315%(所得税:15%、住民税:5%、復興特別所得税:0.315%)
よって不動産投資をする際は、最低でも5年間は所有することを前提に出口戦略を検討しておきましょう。

海外不動産投資の出口戦略に関する質問
海外不動産投資で出口戦略を構築していく際に、よくみられる質問内容をまとめました。
基本の知識として以下の2点を抑えておきましょう。
戦略のひとつとして自身が投資している住宅に住んでもいいのでしょうか?
結論からいうと、投資している物件に自分で住むことは可能です。ただし以下の点には注意してください。
- 不動産投資ローンを組んでいる物件では契約違反になる可能性が高い
- 入居する分の家賃収入は発生しない
- 減価償却費には含まれないので税金対策が難しくなる
これらの背景を踏まえると、実際に住む目的がなければ控えたほうが賢明です。
空室リスクの対策としてはあまりメリットが得られないので、戦略としては考えないようにしましょう。
物件を売却せずに保有し続けるとどのような問題がありますか?
安定して不動産収入を獲得できている状態であれば、物件を長期間保有していても問題ありません。
ただし減価償却期間が迫り、物件の価値が下がっていくと売却益を上げにくくなるので注意が必要です。
出口戦略としては、不動産を売却した際に発生する利益まで考慮することが一般的です。
そのため長期間の保有を前提とする場合は、投資した資金を何年分の不動産収入で回収できるかを検討してみてください。
まとめ
この記事では海外不動産投資における出口戦略の概要を踏まえ、具体的な戦略や注意点などをご紹介してきました。
海外不動産投資を成功させるためには、不動産収入を安定して獲得し、価値ある状態で物件を売却していくことが大切です。
ただし投資する国ごとに税制が変わったり、住宅の耐久性・建築方法が異なったりと、意識をしなければならないことは数多くあります。
よって投資を始める前の段階から一連の流れを把握して、ゴール地点を見定めておくようにしましょう。
特に発展が著しい国では、数年間で情勢が大きく変化することが考えられます。
これに伴い不動産の価値や収益も上下してくるので、計画性が非常に重要です。
過去の事例なども参考にしながら、利益につながる出口戦略を考えてみてください。