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海外不動産の相続税や贈与税の評価方法|国内不動産との違いも解説

海外不動産の相続税や贈与税の評価方法|国内不動産との違いも解説

海外不動産投資が順調に進んだとしても、将来的に売却するだけでなく、相続や贈与も視野に入れておくのが妥当です。

しかし相続はトラブルが生まれやすいことでもあり、事前に仕組みを知っておかなければ税金にも対応できません。特に国際相続となると手続きも増えてくるので、日本と海外とでの違いを把握しておくことも大切です。

そこでこの記事では、海外不動産投資における相続税と贈与税について、評価の方法や基準などを解説していきます。財産を受け取ったときは参考にしてみてください。

目次

海外不動産は相続や贈与が可能か?

まずは海外不動産投資における相続や贈与の基本を抑えておきましょう。

海外不動産も日本国内同様に相続や贈与が可能

結論として、海外不動産を扱っていても、日本で行う相続や贈与と同様に手続きを進めることが可能です。
ただし以下の2つの項目によって、発生する税金や手続きの方法が異なってきます。

  • 対象となる不動産の所在がどこにあるのか
  • 相続、贈与する人の国籍はどこか

仕組みや税金については次で詳しく解説していくので、相続をするときの最初の視点として覚えておきましょう。

相続は被相続人の国籍の法律に準拠する

海外不動産を相続や贈与するときに大切なのは、どの国の法律が適用されるかです。例えば相続税の支払額や、物件そのものの評価額などが該当します。

海外不動産を相続することを国際相続と言いますが、まずは財産(不動産)がどこにあるかを明確にしてください。その後被相続人の国籍や居住地によって、詳細を見極めていきます。

大まかに振り分けていくと、以下のようになります。日本に居住地がある相続人を想定しました。

国籍不動産の所在地相続税の有無
日本人日本に所在がある不動産日本の相続税がかかる
海外に所在がある不動産日本の相続税がかかる
外国人日本に所在がある不動産日本の相続税がかかる
海外に所在がある不動産現地の税制による

たとえ外国人が日本に居住地があるとしても、相続する物件が海外にある場合は現地の税制に従って相続することになります。この場合、日本では相続税がかかりません。

固定資産税評価額が設けられていない国が多い

日本にある不動産を相続しようと思った場合、建物は「固定資産税評価額」で、土地は「路線価」で評価することから始まります。しかし海外にはこれらの概念がないケースが多く、基本的には時価がそのまま評価額となるので注意してください。

特に路線価は、国税庁が定めた日本独自の評価方法です。土地には定価がないので、ある程度の基準価格として設けられました。

つまり海外では土地の価格の基準が不透明なため、専門家の査定に一任してしまうことになります。予め、ある程度の相場を把握しておかなければ損をしかねません。

相続時は過去の事例から予測するか、複数の専門家に査定してもらうことをおすすめします。

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海外不動産の相続税評価方法

ここでは海外不動産を相続するときに発生する税金に対して、評価方法や注目すべき点を解説していきます。

相続税は物件の所在地と相続相手の国籍で決まる

相続の基本ではありますが、相続税を納めるのは財産を受け取った側(相続人)です。

例えば、海外にある不動産を日本に居住地のある相続人に相続すると、日本の税制に従って納税することになります。加えて海外の制度によっては両国での対応が必要になるので、購入段階で相続方法も把握するようにしてください。

また、海外と日本のどちらでも相続税を支払うことになった場合、二重課税を防止する「外国税額控除」が適用されます。通常、海外で支払う相続税と日本で納める相続税のうち、少ない金額のほうを控除することが可能です。

海外不動産は時価がそのまま評価額として反映される

海外不動産の資産価値を算出するときは、時価がそのまま評価額となることが多いです。日本の制度とは異なる部分が多いので、詳しく解説していきます。

国内不動産は時価の8割程度に抑えられる

日本国内の不動産の相続税を評価するときは、時価のおおよそ8割程度に抑えられます。この理由は、相続税評価額が路線価や固定資産税評価額によって算出されているからです。

そもそも時価とは「実勢価格」とよばれ、実際に不動産が取引された価格を意味します。しかし実勢価格は景気や需要によって大きく揺さぶられるものなので、この1点だけで評価すると取引が成立しにくいのが欠点です。

そこで日本では取引価格をある程度安定させるために、土地の平均価格を定める「公示地価」を設けました。路線価や固定資産税評価額は公示地価の20〜30%低い価格になっているので、結果的に時価よりも安く算出されるのです。

公示地価は国土交通省で、路線価は国税庁でそれぞれ確認できます。

海外不動産は査定・鑑定額が評価額となる

前項でご紹介した「公示地価」は日本で定められた指標なので、海外の不動産には適用されません。つまり日本で言う「実勢地価」そのものが評価額となってしまうため、景気や需要に大きく左右されることになります。

このときは査定がしっかり行われているか、そもそも依頼した業者が信頼できるのかなどを見極めなければならず、円滑に相続が進むとは限りません。専門家に依頼する費用を考えると、思いがけない出費が増えることも考えられます。

またアメリカでは、裁判所で「プロベート」とよばれる手続きをしなければ相続ができません。手間も費用もかかってしまうので、日本国内での相続より苦労する場面が多いでしょう。

海外不動産投資は相続税の節税にならない

海外不動産投資は節税に有効という話題が出ることが多いですが、相続税に関しては当てはまらないと考えましょう。時価がそのまま評価額になることを踏まえると、日本よりも割高になってしまいます。

もちろん時価そのものが安ければこの限りではないものの、相続税を抑えるために海外不動産投資に挑戦するにはメリットが少ないです。

根本的に、海外不動産投資が節税になると言われているのは所得税に対してです。税制の改正前は個人投資家でも損益通算ができたため、非常に有効な手段でした。
しかし2023年現在では損益通算ができるのは法人のみなので、節税目的に海外不動産投資をするのは控えたほうが無難です。国際相続はむしろ手間が増えてしまうため、意図的に財産を海外に分割するときは注意しましょう。

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海外不動産の贈与税評価方法

相続税に続いて、海外不動産を贈与するときの評価方法を解説していきます。

受贈者・贈与者どちらかが日本国籍であれば贈与税が発生する

原則、受贈者と贈与者のどちらかが日本国内に在住していると、日本の税制に従って贈与税を納めることになります。このとき財産(不動産)がどの国にあるかは問わず、いわゆる「全世界財産」が評価対象です。

ただし、日本国内に在住している外国人の場合は評価が複雑になってきます。以下の場合は注意しましょう。

■受贈者が短期滞在中の外国人であるとき
対象の外国人が以下の条件に当てはまれば、日本での贈与税は課税されません。
贈与時に在留資格を保有している
贈与前の15年間のうち日本滞在期間の合計が10年以下である
この場合日本国籍ではないと評価されます。

■贈与者が外国人のとき
贈与時に日本国籍ではなかった場合は、日本での贈与税は課税されません。

双方が10年以上国外に住んでいると贈与税は発生しない

贈与前の10年間において、贈与者・受贈者ともに日本国内に住んでいなければ、日本での贈与税は発生しません。しかし以下のように、複雑に条件が分かれています。

■受贈者が日本国籍のとき
贈与者もしくは受贈者のどちらかが贈与前の10年間以内に日本に在住していた
贈与者が「国外転出時課税の納税猶予の特例」に該当していた
上記のいずれかに当てはまる場合は、全世界財産の贈与が課税対象です。該当しない場合は日本国内の財産を贈与したときだけ、納税の義務が発生します。

■受贈者が日本国籍でないとき
贈与者が贈与前の10年間以内に日本に在住していた場合に限り、全世界財産が贈与税の課税対象となります。同様に該当しない場合は、日本国内の財産を贈与したときのみ課税対象です。

原則受贈者が確定申告で納税する

一般的な税金通り、発生した税金は確定申告で納付することになります。原則受贈者の住所がある税務署で手続きをすることになるので、確定申告の期間になったら対応しましょう。

もし受贈者が海外に住んでいた場合には、受贈者が申告した納税地で行います。この納税tも不明であれば、国税庁長官が指定した場所で手続きを行ってください。

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不動産投資の相続税・贈与税に関して覚えておきたい5つのこと

ここまでは相続税や贈与税の概要をご紹介してきましたが、おさらいも含めて下の5点にも目を通しておきましょう。

路線価方式は日本固有の相続税評価方法

日本では土地の価格を定めるときに「路線価」が使用されますが、あくまでも国内でのみ採用されている方法です。海外では現場での査定をもとに評価額が決まります。

この難点としては、事前に資産価値の予測がつきにくいことです。日本では国土交通省などのホームページから検索すれば、おおよその評価額がわかります。しかし海外では“そのタイミング”での評価に一任することになるので、状況に応じて変動が激しいです。

日本では基本となっている評価方法が他国では存在しないことが多いので、現地の税制を詳しく学ぶことは海外不動産投資の必須条件といえます。

相続税や贈与税は為替の影響を受ける

原則として、海外不動産の評価をするときは日本円に換算されます。つまり円高・円安の影響を受けてしまうので、税金を抑えるにはできるだけ円高のタイミングを見計らうことが大切です。

ただし相続は事前に予測できないケースも多く、遺言書などがあった場合は円滑に手続きが進まないことも考えられます。相続・贈与どちらの場合でも税金は発生するので、円高のタイミングで生前贈与する方法も手段のひとつです。

税金をできる限り抑え、スムーズに財産を引き継ぎたいときは検討してみてください。

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一部の国では裁判所での手続きが必要になる

アメリカにおける「プロベート」を代表するように、相続時に裁判所での手続きが必要な国が見られます。特に国際相続となると相続人の見極めや税金への対応が複雑になり、簡単には進まないことがほとんどです。

なかには弁護士への相談が発生するケースもあるので、手続きは複雑になります。どの国の不動産を扱ったとしても、日本国内で完結する相続よりは困難になると想定しておきましょう。

贈与者に贈与税が課される国もある

相続税や贈与税は、基本的に財産を受け取った人に納税の義務があります。しかし一部の国では、贈与をした人に税金が課されることもあるので注意してください。

贈与者と受贈者のどちらが税金を払うかの区別は、贈与したものがどのような財産かが挙げられます。不動産に限らず、現金や車など現地の有形財産を贈与するときは、事前の確認が必要です。

税制は国によって異なるため、一概には言えないケースも多くあります。前提として現地の法律を詳しく知ることを心がけてください。

相続税や贈与税にも外国税額控除が適用される

相続税は日本国籍かどうかなどで異なってきますが、海外でも納税した場合は外国税額控除が適用されるので、二重課税にはなりません。

基本的には両国で納税した金額のうち、少ない方が控除されます。もちろん財産が膨大だと全額の免除とはなりませんが、上限額の範囲内で対応できるので見逃せない制度です。

海外不動産投資において発生する税金の種類は非常に多いので、どの国でどの税金を支払ったかは明確にしておきましょう。各種証明書も忘れないようにしてください。

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海外不動産の相続税・贈与税に関する質問

ここでは海外不動産の相続税と贈与税に関して、よくある質問をまとめました。参考にしてください。

海外不動産の相続は申告しなければバレませんか?

納税の義務がある場合、脱税行為になるので絶対に申告しましょう。5,000万円以上の資産を持っていると「国外財産調書」の提出が義務付けられるため、どの国でどれほどの資産を抱えているのかがすぐにわかります。

また納税が遅れてしまうと、滞納金も追加で支払うことになります。かえって大事になりかねないので、確定申告のタイミングで対応してください。

「海外の遺産までは目が届かないだろう」ということはありませんので、遺産相続や贈与の際は必ず納税するようにしましょう。

海外不動産は相続税の節税対策に有効ですか?

結論としては、海外不動産の方が相続税が高くなる可能性があります。日本では物件の相続時に、時価の7~8割程の評価額となるのが一般的です。ただし海外では時価そのものが評価額となる傾向があるので、税金の割合としては海外の方が高くなります。

また日本の税制で相続税が発生しなかったといっても、現地の税制で納税の義務が発生する可能性は十分にあります。日本と相続税率が変わるかもしれませんが、全く税金が発生しないことはありません。

結果的に国際相続は手間がかかり、相続税の節税になったとしても費用対効果は別物です。節税を目的に海外不動産投資をするのは危険でしょう。

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まとめ

この記事では海外不動産投資における相続税と贈与税について、評価の方法や基準などを解説してきました。

日本で納税の義務があるかどうかは明確な判断基準がありますが、海外ではどのように相続税が発生するのかは一概に言えません。なかには贈与者に納税の義務が発生する場合もあるため、まずは現地の税制を十分に理解することから始めましょう。

また、海外不動産投資が相続税の節税に繋がることは稀です。むしろ査定や弁護士への依頼などで出費が増えるほか、両国で税金の対応が必要になり手間もかかります。

外国税額控除が適用されるといっても、遺産の相続を目的に海外不動産投資に挑戦するのはリスクが高いです。納税が遅れてしまうと滞納金も発生してしまうので、財産を受け取ったときは十分に注意してください。

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この記事を書いた人

三井邦弘のアバター 三井邦弘 ブログ編集長

日本生まれの韓国人。関西大学卒業後、ソウルでガイド事業開始。2010年EC運営会社設立。2013年製菓製造販売業開始。2016年和食レストラン開始。2018年ウェブマーケティング会社設立。2019年Token NewsのKorea Managerを担う。現在、アジアとアフリカへ投資(企業、不動産、ETF)実行中。

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