海外不動産投資への資金をどのようにして調達するかは難しい問題です。
ローンを組むことを検討されている方もいれば、国内と現地の金融機関のどちらから融資を受けるべきかついて知りたい方もおられるでしょう。
海外不動産投資ローンを申し込む際の基礎知識、融資を受ける金融機関の比較検討を行う上での情報として参考にして下さい。
この記事を読めば、海外不動産投資をする際の融資の受け方、融資を受けるべき金融機関の選び方が分かるようになるでしょう。
海外不動産投資で融資を受ける方法
海外不動産投資で融資を受ける方法は2つです。
- 日本の金融機関から融資を受ける
- 現地の金融機関から融資を受ける
それぞれについて解説します。
日本国内の銀行のローンを利用する
海外不動産投資向けのローン商品を取り扱っている日本の金融機関は多くはありません。海外不動産投資は、国内不動産投資に比べてリスクが高いためです。
国内の金融機関から海外不動産投資のための融資を受ける方法は2つです。
国内の物件を担保にしてローンを組む
国内の物件を担保にしてローンを組む場合は、金融機関が指定するエリアに担保物件がないと融資を受けることができません。
しかし、ローンの承認がおりれば、投資先の地域を自由に選べるのが一般的です。
海外の物件を担保にしてローンを組む
海外の物件を担保にしてローンを組む場合、融資元の金融機関が担保能力を判断できる国と地域に担保物件があることが必要です。
フリーローンのご利用を考えられる方もおられるかもしれませんが、次の理由から現実的とは言いかねます。
- 海外不動産投資は融資対象でないことが多い
- 金利が高い
- 少額の融資しか受けられない
また、融資は基本的に円建てで行われるため、ローン返済時の為替リスクが存在します。
海外銀行のローンを利用する
海外不動産投資で現地の銀行からローンを受けるためには、購入した物件を担保にすることが一般的です。
現地の銀行からローンを受ける際の交渉と手続きは現地の公用語か英語で行うことが必要で、投資先によっては外国人に対して高い金利が適用される場合もあります。
また、国内銀行とは異なる海外の銀行ならではのメリットとデメリットについて理解しておくことが必要です。
メリット:為替リスクを軽減できる
現地通貨でローンの返済ができるため、為替リスクを避けることができます。
現地通貨で得た収益をそのままローン返済にあてられるため、為替変動による利益の減少は発生しません。
デメリット:日本よりも金利が高い国が多い
日本のようなマイナス金利政策を行なっている国は少ないため、海外金融機関のローンの金利は日本に比べて高いことが多いです。
参考までに海外の金利をご参照下さい。
国名 | ローンの金利(%) | 金利データの取得時期 |
---|---|---|
アメリカ | 6.33% | 2022年9月 |
オーストラリア | 6.36% | 2022年9月 |
イギリス | 2.29% | 2022年6月 |
カナダ | 2.81% | 2022年6月 |
韓国 | 4.16% | 2022年7月 |
南アフリカ | 9.00% | 2022年8月 |
ブラジル | 10.12% | 2022年9月 |
エジプト | 14.25% | 2022年10月 |
出典:TheGlobalEconomy.com “Mortgage credit interest rate by country: the latest data”
一方で、投資する国によってはデベロッパーのインハウスローンの利用が可能な場合もありますが、一般的に現地の金融機関よりも金利が高くなっています。

現地の銀行で不動産投資資金をローンを組むが難しい理由
先述の通り、海外不動産投資をする際に現地の銀行から融資を受けることは簡単ではありません。
特に、次のようなケースでは、現地銀行から融資を受けることは難しいです。
- 言葉の壁がある
- 現地でのクレヒスがない
- 現地での収入がない
現地の言語が話せないとローンを組むのは難しい
言葉の壁があると、現地銀行にローンを申し込む際の交渉と手続きや、審査に必要な書類の用意が困難になるだけでなく、トラブルの原因にもなり得ます。
また、国によっては英語が通じにくい場合もあります。
現地でのクレヒスが求められる場合がある
クレヒス(クレジットヒストリーの略称)とは、現地銀行口座の長期的な入出金履歴のことです。ローン審査の際に、クレヒスの提出が要求される場合があります。
現地での収入が必要な場合がある
銀行によっては、現地で定収入があるかどうかがローン審査の審査項目に含まれている場合があります。

海外不動産購入ローンを借りられる金融機関8選
下記は海外不動産投資ローンの借り入れが可能な金融機関8選です。
- 国内不動産を担保にできるなら「オリックス銀行」
- 事業目的で海外不動産を買うなら「日本政策金融公庫」
- アメリカの不動産へ投資するなら「日本保証」
- 銀行の近くに担保があるなら「SMBC信託銀行」
- オープンハウスの物件を買うなら「アイビーネット」
- ホノルル南部の物件を買うなら「SBJ銀行」
- ハワイの不動産を買うなら「東京スター銀行」
- カリフォルニアの不動産を買うなら「香川銀行」
各金融機関の特徴について解説をします。
国内不動産を担保にできるなら「オリックス銀行」
オリックス銀行には海外不動産投資のために利用できる「不動産担保ローン」があります。
担保にできるのは首都圏・近畿圏・名古屋市・福岡市にある不動産のみですが、投資先の国や地域を自由に選ぶことが可能です。
また、融資額を決める基準は担保となる不動産の評価額です。
海外で購入する物件の金額が、担保となる不動産の評価額より安い場合は、フルローンを組むこともできます。
ただし、融資を受けるためには、年収が700万円以上あることが必要です。
借入限度額 | 原則1,000万円以上2億円以内(10万円単位) |
借入期間 | 1年以上35年以内 |
金利種別と借入利率 | ①変動金利型(年2回見直し型):3.675% ②固定金利期間特約付変動金利型 ・3年固定金利特約型:3.300% ・5年固定金利特約型:3.500% |
年収条件 | 前年度の税込み年収700万円以上 |
事業目的で海外不動産を買うなら「日本政策金融公庫」
日本政策金融公庫では「海外展開・事業再編資金」と呼ばれる融資を行なっています。
融資の対象になるのは、不動産賃貸業者が海外への事業展開を目的として海外不動産を購入する場合のみです。個人の海外不動産投資が目的の場合はローンを組むことはできません。
日本政策金融公庫から融資を受けるために必要な条件は次の通りです。
- 国内での不動産賃貸業の営業許可と、賃貸経営実績があること
- 国内不動産を担保にできること
- 経営上の理由で海外に事業展開をすることを証明できる詳細な事業計画書があること
- ローンの返済が可能なことを示す収支計画書があること
- 経営が黒字であること
借入限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
借入期間 | ・設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内) ・運転資金 7年以内(うち据置期間2年以内) |
金利種別 | 固定 |
借入利率 | ローン申込者の担保の有無、融資で得た資金の使用目的などの条件により利率が異なるため、詳しくは日本政策金融公庫の公式サイトをご参照下さい。 海外展開・事業再編資金 |
アメリカの不動産へ投資するなら「日本保証」
日本保証は、ローンの債務保証会社として国内の銀行と提携をすることで、下記の地域に対する海外不動産担保ローンサービスを提供しています。担保になるのは海外で購入予定の不動産です。
アメリカ・カリフォルニア州
提携銀行 | 香川銀行 |
借入限度額 | 1案件あたり100万円以上3億円以内(10万単位・円建て) |
借入期間 | 1年以上35年以内(5年元金据え置き期間含める) |
金利種別 | 変動 |
借入利率 | 2.80%(当初5年固定金利特約条件付) |
出典:日本保証 海外不動産担保ローン カリフォルニア
アメリカ・ハワイ州
東京スター銀行、SBJ銀行、西京銀行の3行から選ぶことが可能です。
提携銀行 | 東京スター銀行 | SBJ銀行 | 西京銀行 |
借入限度額 | 1000万円以上3億円以下 (50万円単位・円建て) | 1,000万円以上2億円以内 (10万円単位・円建て) | 1,000万円以上5億円以内 (10万円単位・円建て) |
借入期間 | 1年以上5年以内 (1年単位、原則、期日での契約期間延長可) | 1年以上35年以内 (保証会社の保証期間内) | 1年以上30年以内 (1年単位・据置期間含む) |
金利種別 | 固定 | 変動 | 変動 |
借入利率 | 2.8% | 2.8% | 2.8% |
銀行の近くに担保があるなら「SMBC信託銀行」
SMBC信託銀行には「プレスティア不動産アドバンテージローン」と呼ばれる、同銀行に1,000万円相当額以上の月間平均総取引残高がある顧客のみを対象にしたローン商品があります。
融資の使い道は自由とされているため、海外不動産投資にも使うことが可能です。
ただし、ローンの申し込みには次の条件があります。
- 担保となる物件が同銀行の各支店・出張所より1時間圏内にあること
- 第1順位の抵当権の設定が可能な居住用不動産を担保にできること
借入限度額 | 2,000万円以上5億円以下(10万円単位) |
借入期間 | 1年以上25年以内 |
金利種別 | 変動 |
借入利率 | 担保種別によって異なる |
出典:SMBC信託銀行 プレスティア不動産アドバンテージローン
オープンハウスの物件を買うなら「アイビーネット」
オープンハウスグループの金融会社であるアイビーネットでは「プラチナモーゲージ」と呼ばれる海外不動産投資ローンを行なっています。
プラチナモーゲージの特徴は、ローンを組む際に購入する米国不動産を担保にできることです。国内担保は必要ありません。
日本語で対応してもらえるため、言葉の壁がないこともメリットです。
また、元金を返済期日に一括払いする「元金期日一括弁済」を選ぶことができるので、手元に資金を残しておくことが可能です。
ただし、融資対象はオープンハウスグループが次の地域内で販売している不動産のみになります。
- ハワイ州
- カリフォルニア州ロサンゼルス
- テキサス州ダラス
- ジョージア州アトランタ
名称 | 個人・資産管理法人 | 法人 |
借入限度額 | ・購入物件価格の70%まで(円建て) ※ただし、カリフォルニア州ロサンゼルスにある物件については50%まで ・最大で3億円以内(投資先の州により異なる) | ・購入物件価格の50%まで(円建て) ・最大で3億円以内 |
借入期間 | 最長10年 | 最長10年 |
金利種別 | 変動 | 変動 |
借入利率 | 3.80% | 3.80% |
ホノルル南部の物件を買うなら「SBJ銀行」
SBJ銀行では、ハワイ州ホノルル南部の物件を専門とする「海外不動産(ハワイ州ホノルル)購入ローン」を販売しています。
融資の対象になるのはハワイ州ホノルル南部にある物件のみです。また、購入する不動産の普通抵当権第一順位にSBJ銀行を設定する必要があります。
国内担保が必要なく、2.8%の金利で最長35年の借入期間を設定できることがメリットです。
しかし、ホノルル市内にある不動産は他の国と比べて高額です。投資効率を意識した不動産選びをしないと、上述のメリットを活かすことが難しくなります。
借入限度額 | 1,000万円以上2億円以内(10万円単位・円建て) |
借入期間 | 1年以上35年以内 |
金利種別 | 変動 |
借入利率 | 2.80% |
ハワイの不動産を買うなら「東京スター銀行」
東京スター銀行では、ハワイ州オアフ島南岸エリアにある不動産投資への融資を専門とする「ハワイ不動産担保ローン」を販売しています。
2.8%の低金利で固定がされているため、資金運用のリスクを減らすことが可能です。一方で、借入期間は最長でも5年で、担保にできるのは購入した不動産のみになっています。
また、2件目以降の不動産購入の融資を受ける際に、ハワイに既にある1件目の物件を担保にすることが可能です。
ハワイにある不動産を担保として得た資金を、国内・海外への投資に使うこともできます。
借入限度額 | 1,000万円以上3億円以下(50万円単位・円建て) |
借入期間 | 1年以上5年以内 |
金利種別 | 固定 |
借入利率 | 2.8% |
カリフォルニアの不動産を買うなら「香川銀行」
香川銀行は、アメリカ・カリフォルニア州への海外不動産投資を対象にしたローン商品「香川銀行 有担保フリーローン 海外投資用不動産」を取り扱っています。
融資を受ける際の担保になるのは購入予定の不動産です。
ローン返済の方法として、最長5年間の元金据え置きで支払いを行うことも可能です。銀行と合意した期間中は元金を据え置きにして、利息のみを毎月支払うことが可能なため、資金計画を立てやすくなります。
カリフォルニア州への海外不動産投資をお考えであれば、ローンの申込先銀行の候補の1つとしてご検討されてもよいでしょう。
借入限度額 | 1案件あたり100万円以上3億円以内(10万単位・円建て) |
借入期間 | 1年以上35年以内(5年元金据え置き期間含める) |
金利種別 | 変動 |
借入利率 | 2.80%(当初5年固定金利特約条件付) |
海外不動産投資ローンを組む流れ
国内金融機関で海外不動産投資ローンを組む流れには次の8つのステップがあります。
- 海外不動産の購入を申し込む
- 国内金融機関へローンを申し込む
- 仮審査を受ける
- 不動産売買契約を締結する
- 本審査を受ける
- 公証役場で認証手続きを行う
- 融資実行後に代金を現地へ送金する
- 登記済証を提出する
各ステップについて解説します。
海外不動産の購入を申し込む
海外不動産投資の最初のステップは、投資先の国、現地の不動産会社、物件の選定を行うことです。
購入物件を決める際には、物件のあるエリアの家賃相場、物件の空室状況などを事前に調べ、利回りのよい投資になるかをまず判断しましょう。物件について調査した内容をもとにどのようなローンを組むかについて考えることも必要です。
購入額が適正な評価額や周辺家賃相場よりも高い物件は避けて、自己資金比率を可能な限り抑えたローンを組めるようにすることが重要になります。
物件が決まったら、現地の売主に対して購入の申し込みと、申込金の支払いを行います。
国内金融機関へローンの申し込み
次に、国内の金融機関へのローンの申し込みを行います。金融機関が得意とする国と地域や、融資条件などを確認した上でローン申請をしましょう。
仮審査を受ける
銀行にローンを申し込み、仮審査を受けます。仮審査の際には、収入を含めた申込者の属性についての基本情報や、海外不動産の資料などを提出します。
不動産売買契約を締結する
売主に対して支払った申込金の入金確認が取れ、金融機関によるローンの仮審査にも合格したら、不動産売買契約の締結に進みましょう。
不動産売買契約を結ぶ前に確認が必要なこととして、売買契約書にキャンセル条項が含まれているかがあります。
キャンセル条項があると、金融機関へのローンの申し込みが審査落ちになった場合に、売主との不動産売買契約をキャンセルすることができます。
キャンセル条項にある、キャンセル可能期限、ペナルティの有無、手付金の返金の可否などの条件についても確認しておくことが重要です。
本審査を受ける
次に、サイン済みの不動産売買契約書を金融機関による本審査のために提出します。他にも、収入を証明する書類や、金融機関が指定する書類の提出が必要です。
一般的に本審査の所用期間は、申し込みから1週間〜1ヶ月程です。金融機関により異なります。
ただし、投資先の国によっては本審査に時間がかかる場合があるので注意が必要です。
例えば、海外不動産投資をアメリカで行う場合は、担保となる不動産の価値の現地鑑定が行われるため、本審査完了までの期間が長くなることがあります。
公証役場で認証手続きを行う
本審査に合格したら、公証役場での認証手続きへと進みます。購入した海外不動産に対して、現地銀行が抵当権の設定を行うためです。
公証役場での認証手続きは、アメリカ不動産投資用にローンを組む際には必須になります。何故なら、日本で不動産売買が行われる際に、売主と買主の本人証明として提出される住民票や、謄本などに該当する公的書類がアメリカにはないためです。
公証役場での認証手続きができるのは平日の日中のみです。また、一般的に、銀行が認証手続を行うのはローン契約当日になっているため、注意して認証スケジュールの調整を行うことが必要になります。
なお、前項で紹介したオリックス銀行は、国内不動産を担保にするため、認証手続きは必要ありません。
融資実行し代金を現地へ送金する
ローン契約締結と、公証役場での認証が完了した後の決済日に、金融機関による融資の実行が行われます。
融資が実行される前に、融資金額が申込者の口座と、売主の指定口座のどちらに振り込まれるかを確認しておくことが重要です。
もし、融資金の振込先が申込者の口座の場合、入金確認後に改めて申込者から売主の口座へ送金を行うことが必要になります。
海外送金には時間がかかるため、売主との決済日までに着金が間に合うように手配をして、購入手続に遅延が発生しないようにしましょう。
登記済証を提出する
海外不動産投資では、金融機関、または、保証会社による融資実行後に購入した不動産の所有件登記済証の提出が要求される場合があります。
登記済証の発行にかかる時間は国によって異なります。特に、新興国では数カ月以上かかる場合があるため注意が必要です。
売主との契約手続きの際に登記済証発行までの必要期間を確認しておくと、融資を行う金融機関や保証会社に対して予め提出予定日を伝えることができます。

海外不動産投資ローンの金利や融資限度額
次は、海外不動産投資ローンの金利と、融資限度額がどれくらいかについて見ていきましょう。
海外不動産投資ローンの金利
海外不動産投資ローンの金利は、各金融機関の審査制度やローン商品の内容により異なりますが、2%〜4%程が目安になっています。
海外不動産投資ローンの融資限度額
各金融機関で設定している融資限度額の範囲内で融資を受けられることが一般的です。
前述の通り、金融機関により最低額が100万円以上であったり、2,000万円以上であったりします。
また、金融機関によっては、高額の不動産を担保にすれば1億円以上の高額融資を受けることも可能です。

海外不動産投資ローンの審査基準
海外不動産ローンの審査基準は主に3つあります。
- 投資する不動産の収益
- 担保にする不動産の評価額
- 申込者本人の年収
それぞれについて解説します。
投資する不動産の収益
ローン審査の際には、投資対象となる不動産の収益性が重視されます。
購入予定の海外不動産の収益性が、申込者の返済能力の一部として評価されるためです。
ローンの返済額に対して、海外不動産投資による収益がどれくらいあるかが、審査の合否に影響します。
ローン申込み時に、海外不動産投資の収益性の裏付けとなる収支計画書を提出しておくと、審査をよりスムーズに進められるでしょう。
また、収益が高ければ、融資額の上限を上げてもらえる可能性もあります。
担保にする不動産の評価額
金融機関からの融資金額は、担保となる不動産の評価額の範囲内です。
また、融資の上限額を算出する際に、担保評価額に対する値引き調整のための「掛け目」が適用されることが一般的です。
掛け目は担保となる不動産の建物としての価値や、立地条件などの要素によって決まります。
金融機関が値引き調整を行う理由は、担保物件の価格下落リスクを避けるためです。
申込者本人の年収
ローン審査の際には、申込者本人の年収がどれくらいか、安定かつ継続した収入があるかも評価対象になります。
また、年収以外にも、勤続年数、雇用形態、給与体系(インセンティブの有無)なども評価項目に含まれています。
ローン申込者の海外不動産投資の成否に関わらず、銀行は行なった融資を回収しなければならないため、本人の信用性が重視されるのです。

海外不動産投資ローンの注意点
海外不動産投資ローンに申し込む際には、次の点に注意が必要です。
- 一定の自己資金が必要で、フルローンでの借り入れは難しい
- 日本政策金融公庫では海外不動産投資は融資の対象外
- ローンを申し込む金融機関によっては国内不動産を担保にすることが必須
それぞれについて解説します。
一定の自己資金が必要|フルローンは難しい
海外不動産投資では、頭金なしのフルローンで不動産価格全額を支払うことは非常に難しいです。
一般的に、海外不動産投資ローンを組む際には、物件価格に対して3〜5割程の自己資金が必要になります。
何故なら、海外と日本では不動産投資の制度と文化が異なるからです。
海外、特に英米圏では、日本のように土地と建物の価値を合算して不動産の積算価格を出すことはありません。「土地と建物は一体」という扱いになります。
さらに、ローン審査時に鑑定士が出した担保物件の適正価格に対して、金融機関の掛け目が適用されます。
従って「積算価格が売買価格を上回ったのでフルローンの借り入れができる」ということは海外では起こりえません。
また、海外では、ローン申込人の属性よりも、投資対象の不動産の担保評価額がより重視される傾向があります。
日本のように、本人の返済能力の高さがフルローンを受ける上での決め手になることは少ないです。
また、海外不動産投資を行うのが日本に居住する日本人で、現地での住所や定収入がないこともフルローンでの借り入れが難しい原因の一つになります。
融資対象が日本人の場合、海外の金融機関は「海外不動産を担保として取り上げたとして売却先はあるか」「現地の法律について理解があるか」を疑問視する場合があります。
日本政策金融公庫では単純な投資資金を借りられない
前述の通り、日本政策金融公庫は海外不動産投資への融資は行なっていません。
融資を受けるためには、不動産賃貸業の事業展開の一環として、海外不動産の購入を行うことを日本政策金融公庫に認めてもらうことが必要です。
ローン申し込み際には、不動産賃貸業者としての事業展開が目的であることと、融資を確実に返済できる収支計画があることを事業計画書と収支計画書に明記しておきましょう。
さらに注意すべきこととして、日本政策金融公庫には海外不動産の購入に対して融資を行う可能性がある支店と、ない支店があることがあります。さらに、融資申請却下の履歴は数年残るだけでなく、全ての支店で共有されます。
日本政策金融公庫に融資を申し込みたい場合は、融資申請に成功した実績を持つ税理士と事前に相談するとよいでしょう。

日本国内の不動産を担保に求められることがある
ローンを申し込む金融機関によっては、国内の不動産しか担保として認めていない場合があります。
前項で紹介した、オリックス銀行、SMBC信託銀行、日本政策金融公庫は、海外で購入する不動産を担保として認めていません。
また、オリックス銀行とSMBC信託銀行については、担保となる不動産の所在地に指定があります。
海外不動産投資ローンについてよくある質問
海外不動産投資ローンのリスクや、ローンを土地購入に利用できるかについてよくご質問を頂きますので、それぞれについて回答します。
海外不動産投資にローンを利用するのにリスクがありますか?
A.投資した海外不動産に十分な収益を上げられる見込みがあれば、リスクは少ないです。
また、ローンに対する自己資金比率をできるだけ抑えられる海外不動産を選び、余裕を持った自己資金の確保をすれば、よりリスクを減らすことができるでしょう。
土地購入の際も海外不動産ローンは利用できますか?
A.ローン審査に通過すれば利用可能です。
ただし、国(例:フィリピン、タイ、中国、インドネシア)によっては外国人が土地を所有することを禁止している場合があります。投資先の国を選ぶ段階で確認をしておきましょう。
まとめ
海外不動産投資ローンについての基本情報と、海外と国内の金融機関の特徴について紹介をしてきました。
海外の金融機関は日本と比べて金利が高く、現地でのクレヒスと定収入、言葉の壁などの問題をクリアしないとローンを組むことは難しいです。反面、為替リスクを軽減できるメリットがあります。
一方で、日本の金融機関は投資先や担保物権についての制限がされている場合がありますが、言葉の壁もなく、比較的低金利でローンを組むことが可能です。
金融機関から融資を受けるための諸条件を比較検討した上で、ローンの申込先を決めましょう。