近年、マレーシアは東南アジアの中では、シンガポールに次ぐ経済発展を見せており、日本人が移住したい国として人気です。
そして、不動産投資先として見た時も、人口が集中するクアラルンプールはもちろんのこと、観光地や都市開発が進む地域へ、投資家の熱い視線が注がれています。
今回の記事では、マレーシアを不動産投資先と考えた場合、必ずチェックが必要な国の基本情報から、将来的な見通し、注意事項やおススメのエリアなどを詳しく解説していきます。
海外不動産投資先としてマレーシアを視野に入れている人にとっては、参考になる情報が満載の内容となっていますので、是非、最後まで読んで下さい。
マレーシアの情勢
マレーシアの不動産投資の可能性を検討するにあたって、「人口」「言語」「為替」の3つは必ずマークすべきポイントですので、最初にこの3つの状況を見ていきましょう。
人口と年層の区分
2021年時点でのマレーシアの人口は約3,212万人で、平均年齢が29.5歳と非常に若く、将来の経済成長のベース”となる若年層の比率が高い国です。
全体の35%近くを占める10代・20代の層が、10数年後にはの不動産購入の主力層となるため、マレーシアの不動産ニーズは年を追うごとに拡大していくことが期待できます。
経済の発展に欠かせない生産年齢人口(15~64歳)でみても現時点で約2,200万人であり、全人口比69.2%と非常に高い割合を占める勢いのある国であることがわかります。
しかも、人口増加率も1.3%と増加傾向にあり、「ASEANの優等生」と呼ばれているだけあって将来有望です。
扱う言語と情報収集のしやすさ
マレーシアの公用語はマレー語(マレーシア語)で、英語は共通語とされています。
ただし、マレーシアには多民族・多言語の国民が住んでおり、マレー語以外にも話される言語は多数あります。
そのような事情から、国民の多くが最低2カ国語を、人によっては4カ国語、5カ国語を話すという多言語環境で、ビジネスシーンでは英語が使用されるのが一般的です。
イギリス植民地時代に植民地政策として英語教育が取り入れられたという過去の歴史があり、1960年代までは英語が公用語であった背景から、現在においても英語教育は盛んです。
そのため、英語力はアジアにおいてはシンガポールに次いで2位と評価されています。
ビジネスではもちろんのこと、日常生活でも民族が異なれば英語が利用されているので、不動産に関する情報収集も英語を理解していれば大丈夫だと言えます。
また、不動産取引における売買契約書も英語なので、外国人でも安心して購入できる環境が整っています。
通貨と平均的な為替レート
マレーシアの通貨は「マレーシアリンギット」であり、略称はRMです。
先進国が発行する紙幣は「不換紙幣」が一般的であり、マレーシアも同様に不換紙幣を採用しています。
不換紙幣とは、金貨との交換を保証しない国(政府)の信用で流通するお金のことで、信用紙幣とも呼ばれており、マレーシアも為替が安定した国と言うことが可能です。
実際、リンギットはマレーシアの経済成長や貿易収支の改善に伴って、対ドルや対円で上昇傾向にあり、政府や中央銀行の金融政策や為替管理によって過度な変動を抑えられています。
そのような背景から、マレーシアリンギットは「世界の中で為替の変動が安定した通貨」として知られています。
不動産投資においては、為替情報も日本円へ換金するときに重要な要素ですので、特に物件購入時や売却時には注意を払うことが必要です。

日本とマレーシアの不動産の違い
海外における不動産投資は、法律や規制、慣習などさまざまな面で日本と異なります。
ここではマレーシアの不動産事情を詳しく見ていきますので、日本との違いに対する理解を深めましょう。
外国人は州によって投資できる物件の最低価格が設定されている
マレーシアでは外国人が不動産を購入する場合、購入規制やルールがあり、州政府による許可が必要です。
その中で一番チェックが必要なのが、外国人が不動産を購入する際に設定されている最低価格です。
通常は100万RM以上の物件のみ購入可能
外国人が購入できる物件の最低価格は、原則として100万RMとなっており、これは新築・中古にかかわらず同じ条件です。
2023年3月現在のマレーシアリンギットのレートは30円程度で推移しているので、単純計算をしても3,000万円以下の不動産は購入できません。
100万RMの価格帯で購入できるのは、首都クアラルンプールでは下記のような物件に限られることになります。
- 中心地にある外国人や裕福層向けのコンドミニアム
- 都市圏内のマレーシア人中間層向けコンドミニアム
この規制は、外国人による大量の不動産投資が発生すると、国内の住宅価格や物価が上昇するなどの問題が発生することを懸念しての対策とされています。
長期滞在ビザを所有していれば規制が緩和される州もある
マレーシアにおける不動産投資の規制も、長期滞在ビザ(MM2H)を所有していれば規制が緩和される州があります。
MM2HはMalaysia My Second Home(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)の略で、コロナ禍の影響で2020年7月より申請受付が停止になっていましたが、2021年10月より新規の申請が再開されました。
MM2Hのビザ取得において、経済的要件では下記のような条件を満たしている必要があり、再開に伴って下表の通り以前より内容が厳しくなっています。
要件 | 旧条件 | 新規条件 |
---|---|---|
預金条件 (マレーシアの銀行での定期預金額) | 50歳未満:30万RM(約900万円)以上 50歳以上:15万RM(約450万円)以上 | 100万RM(約3,000万円)以上 |
収入条件 (マレーシア国外からの収入月額) | 1万RM(約30万円)以上 | 4万RM(約120万円)以上 |
資産条件 (長期滞在前の資金残高証明) | 50歳未満:50万RM(約1,500万円)以上 50歳以上:35万RM(約1,050万円)以上 | 150万RM(約4,500万円)以上 |
参照:MM2Hプログラムの再開、新規申請に関するマレーシア内務省発表内容(2021年8月13日)
このように新規の申請要件が特に経済条件で厳しくなったことには、マレーシアにおける外国人の比率を一定水準以内に押さえたいという政府の意向があるようです。
今までよりも裕福な外国人に絞ってビザを発給する方針であり、この変更は「マレーシアのシンガポール化」とも言われています。
しかし、マレーシアではMM2Hを持っていれば下記の州においては、外国人不動産投資規制が緩和されています。
州 | 最低購入価格(MM2H保有者) |
---|---|
ペナン州 | 2件までRM50万(約1,500万円)で購入可能 |
ジョホール州 | 物件により異なる |
ケダ州 | 制限なし |
ペラ州 | RM35万(約1,050万円) |
サラワク州 | RM30万(約900万円) |
ただし、これらの規制は今後も変更される可能性があるため、実際の投資前には各州の最新情報を確認することが重要です。
マレーシアは平均利回り3.7%と東南アジアの中では低い
マレーシアの不動産投資の平均利回りは2022年9月時点で3.7%となっており、他の東南アジアの平均利回り、フィリピン・6.1%、カンボジア・5.3%、タイ・5.1%と比べると、低いレベルです。
先進国と新興国とで平均利回りを比較すると、経済が成長して不動産価格も高い先進国では、新興国よりも利回りが低くなる傾向があります。
マレーシアの平均利回りは日本よりも高いエリアが多いですが、東南アジアの他の新興国と比べると低いところを見ると、先進国に近づいていると言えるでしょう。
プレビルド物件の建設遅れ・中止がみられる
プレビルド物件とは、建設が始まる前または竣工前に不動産を購入できる制度であり、東南アジアでは不動産購入のひとつの方法として一般的です。
プレビルド物件のメリットは、販売開始直後を狙うと安く購入できるケースが多いところであり、完成後に高く販売することで大きなキャピタルゲインを得られる可能性があります。
しかしながら、プレビルド物件のデメリットとして、竣工が大幅に遅れたり物件が完成しないケースがあげられ、最悪の場合は手付金が戻ってこないという事も起こります。
マレーシアを含め、東南アジアではこのようなトラブルは減少傾向にありますが、建設業の安定感は日本と比較すると欠けている状況です。
したがって、プレビルド物件を購入する際には、信頼できるデベロッパーや仲介会社を選ぶことや、契約内容や保証制度をよく確認することが重要です。
不動産価格は年々緩やかに上昇中
マレーシアの不動産価格は、2012年から2013年にかけて大きく上昇した後、2017年ごろまで年々緩やかに上昇して2019年までの約10年間で2倍まで値上がりしました。
2020年以降、新型コロナの影響を受け急激な価格上昇はみられませんが、毎年安定した収入を得やすい状況です。
また、人口増加や後述する都市開発が進んでいる状況から、今後、不動産価格が上昇することが期待できます。
平米単価は東京都心の1/3程度
東京・港区のハイエンドクラスのマンション価格(1戸の専有面積あたりの分譲単価)を100とした場合、クアラルンプールにおける高級マンションの価格は1/3程度となっています。(日本不動産研究所の調査結果・2022年10月現在)
日本の不動産市場は、少子高齢化が進む状況で将来的にキャピタルゲインを見込むのが難しいことを考えると、同レベルの物件であれば、経済成長が著しいマレーシアで安く購入して値上りを期待する方が得策と言えるでしょう。
また、日本で不動産を購入できる資金があるのであれば、マレーシアで複数の物件に不動産投資を行うことにより、リスクヘッジが可能となります。

マレーシア不動産のおすすめポイント
東南アジアの新興国では、経済発展が著しい国や人口が増加傾向にある国は他にもありますが、ここでは「なぜ、マレーシアでの不動産投資がおススメなのか」について説明します。
東南アジアでトップクラスの人口増加を誇る
人口の増減は不動産価格に大きな影響力を持ちます。一般的に、人口が増える国の不動産価格は上昇し、人口が減る国の不動産価格は下落する傾向があります。
したがって、安定して不動産収入を上げるには、人口増加が発生している国に投資をするのが基本です。
そういった見地で見ると、東南アジアは人口増加が続く新興国が多い地域で、その中でも直近の10年間におけるマレーシアの人口増加率は12.2%とトップクラスを誇ります。(※人口増加率はIMFによる2022年10月時点の推計より)
そして、マレーシアをはじめ、フィリピン、インドネシアは人口ボーナス期にあり、今後も人口増加が見込まれるので、海外不動産投資先として有望な国です。
平均5%以上のGDP成長を維持している
不動産価格は国の成長に伴って上昇していくのが一般的で、高度成長期の日本をふり返ってみても明らかです。
日本はすでに成長期を終えて成熟期に入っていると言われており、今後のGDPの伸び率もあまり期待できない状況です。
一方、東南アジアの国々ではGDPが伸びている国が多く、マレーシアはこの10年で毎年平均5%以上の成長を維持しており、不動産価格の上昇も比較的安定して続くことが予測できます。
経済成長は物価上昇につながるので指標として非常に有効であり、不動産の需要と供給のバランスを注視して投資エリアを選ぶことで継続的なリターンを得られるでしょう。
日本人の移住先として長年人気で接点を持ちやすい
マレーシアは、日本人の移住先として大変人気があり、ロングステイ財団の調査によると、マレーシアは14年連続で「日本人が移住したい国ナンバーワン」に選ばれています。
その理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 税制面が日本より有利で、住民税や消費税などが免除される
- マレーシアは親日国で、日本の文化や商品に対する需要が高い
- インフラが整備されていて住環境が良く、物価も安い
- 長期滞在ビザMM2Hの存在で、手続きも比較的容易
- マレーシアも親日的なのでトラブルが少ない
- 東南アジア諸国へのアクセスも良く、旅行やビジネスに便利
- 比較的治安が良く、暴力事件やテロなどは少ない
ただし、気温や湿度が高く、一年中暑いので体調管理に気をつけたり、イスラム教徒の多い国なので宗教的な習慣や法律に気を配ることが必要です。
土地の所有に制限がなく戸建ての購入も可能
マレーシアは、国内不動産市場の活性化を狙って、2006年12月の法改正によって規制を緩和し、外国人による不動産所有を奨励してきました。
前述のように、マレーシアで外国人が不動産を購入するには、原則として100万RM以上の物件と制限されていますが、それさえクリアすれば土地の所有に制限がなく戸建ての購入も可能です。
また、マレーシア政府は、外国人投資家に対して、低金利の融資制度を提供しています。
一部の大手銀行では、外国人でも物件価格の最大50%程度のローンを組むことが可能で、これにより、外国人の不動産投資も行いやすくなっています。
シンガポール、タイ、フィリピンなどでは、外国人による土地付住宅購入を原則的に禁じる国が多い中、マレーシアのように外国人の不動産売買に制限が少ない国は珍しいです。


イスカンダル計画で都市開発が進んでいる
イスカンダル計画とは、マレーシア政府が推進する五つの重点地域開発プロジェクトの一つで、2006年から開発が始まり2025年に終了予定の長期計画です。
シンガポール対岸のジョホールバル市を中心に、2217平方キロメートル(東京都とほぼ同じ面積、シンガポールの約3倍)に及ぶエリアを大規模に開発し、人口や経済活動を増やすことを目的としています。
シンガポールとの連結強化により利便性やブランド力を向上させるため、高速道路や鉄道、空港などの整備が進められています。
また、2025年までに300万人になると予想される人口を受け入れるために、住宅や商業施設、教育機関などが建設され、観光や物流、金融などの産業も発展しています。
治安が良く高級住宅の建築も進んでいるので、有望な不動産投資先として見逃せません。
マレーシアの不動産投資でかかる税金
海外不動産投資においては、投資先国の税金などの経費が日本と異なるため、ここでは、物件の購入時、運用時、売却時に分けて、必要な主な税金・諸経費を見ていきます。
不動産購入時に発生する税金
マレーシアで不動産を購入した際は、主に下記のような税金や費用が発生します。
税金 | 概要 |
---|---|
印紙税 | 不動産価格に合わせて、下記の通りとなります。 RM100,000まで :1% RM100,000~RM500,000 :2% RM500,001-RM1,000,000 :3% RM1,000,000以上 :4% |
登記費用 | 物件価格の約0.1%程度 |
弁護士費用 | 物件価格の約1 %程度 |
州政府合意取得申請費用 | 約RM1,000~10,000 (州によって異なる) |
賃貸運用時に発生する税金
マレーシアの不動産投資において、賃貸運用時には下記のような税金や費用がかかります。
税金 | 概要 |
---|---|
固定資産税 | 100㎡の物件の場合、およそRM1,000(約3万円)程度 |
所得税 | 一律28% (租税条約により二重課税は回避可能) |
維持管理費・修繕積立費 | 100㎡の物件の場合、月およそRM500(約1.5万円)程度 |
※ 所得税は日本とマレーシアが租税条約を結んでいるため、外国税額控除や免除の制度があります。また、維持管理費・修繕積立費は平均的な金額であり、物件により異なります。
不動産売却時に発生する税金
マレーシアの不動産投資において、不動産売却時には下記のような税金や費用がかかります。
税金 | 摘要 |
---|---|
不動産譲渡税 | 5年目まで:30%、6年目以降:10% |
印紙税 | 不動産価格に合わせて、下記の通りとなります。 RM100,000まで :1% RM100,000~RM500,000 :2% RM500,001-RM1,000,000 :3% RM1,000,000以上 :4% |
仲介手数料 | 物件価格の約3%程度 |

マレーシアの不動産投資でおすすめの地域
マレーシアではイスカンダル計画など、投資開発が進むエリアが複数あり、観光資源も豊富な国なので、不動産投資先としておすすめの地域が多くあります。
ここでは、その中から代表的な3エリアを紹介します。
クアラルンプール
クアラルンプールはマレーシアの首都であり、経済・文化・教育の中心地です。
人口はマレーシア全体の4分の1を大きな割合を占めていて、人口増加率が高く不動産の需要も拡大を続けているので、最も注目すべき投資エリアです。
新規プロジェクトや中古売買物件、賃貸物件など様々な不動産が取引されていて、特にコンドミニアムやサービスアパートメントなどの高層住宅が人気となっています。
クアラルンプールで不動産投資をするメリットとしては、安定した政治・経済環境、低い税金・諸費用、豊富な生活インフラ、多様な文化や食事などが挙げられます。
ランカウイ
ランカウイはマレーシアの北西部にある99の島からなる島々で、美しい自然やビーチが魅力的なリゾート地です。
観光地として注目を集めており、毎年外国人の出入りが激しい地域で、不動産の需要も高まっています。
ランカウイではコンドミニアムやサービスアパートメントなどの高層住宅や、ヴィラやバンガローなどの一戸建て住宅など様々な不動産が取引されています。特に海岸沿いや山間部にある物件が人気です。
ランカウイで不動産投資をするメリットとしては、免税地域として税金・諸費用が安いこと、シンガポールからのアクセスが良いこと、豊かな自然環境やリゾートライフを楽しめることなどが挙げられます。
ジョホールバル
ジョホールバルはマレーシアの南部にあるジョホール州の州都で、シンガポールと橋で結ばれています。
シンガポールから約30分という近さにもかかわらず、不動産価格がシンガポールの5分の1~10分の1程度と安いため、シンガポール人や外国人の不動産投資家に人気です。
ジョホールバルではコンドミニアムやサービスアパートメントなどの高層住宅や、ランドマークタワーなどのオフィスビルなど様々な不動産が取引されています。
特に前述のイスカンダル計画と呼ばれる、大規模開発プロジェクトが進められているエリアが注目の的です。
ジョホールバルで不動産投資をするメリットとしては、シンガポールからのアクセスが良いこと、イスカンダル計画によるインフラ整備や経済発展が期待できること、免税地域として税金・諸費用が安いことなどが挙げられます。
マレーシア不動産投資でよくある失敗例
ここではマレーシアにおける不動産投資の際に、注意が必要な典型的な失敗事例を紹介しますので、物件を検討するときに参考として下さい。
物件の完成が大幅に遅れ手続きに戸惑った
東南アジアの国で新築のコンドミニアムを購入する場合は、大半は物件が完成する前の「プレビルド」での購入となります。マレーシアにおけるプレビルド物件の場合、当初の完成予定時期よりも6ヶ月から1年ほど遅れることが多いです。
納期に間に合うことはほとんどなく、最長で2年近く遅れたこともあるので、期日はあくまでも予定時期という認識が必要です。特に新型コロナ蔓延の影響で建設業界が大きな打撃を受け、工事が停止したり遅延したりするケースが増えました。
こういった竣工リスクを軽減するためには、現地の大手デベロッパーまたは日系のデベロッパーが開発する物件を選ぶことがポイントです。
入居者の手配までに時間がかかりインカムゲインが入らなかった
マレーシアの不動産は、購入者の好みに合わせて内装を自由に選べるようにするためや、建築費用を抑えるため、内装未着手で引き渡されることが多いです。
その場合、物件の引き渡し後に内装に着手し、電気や水道などインフラ関連の開通手続きや、家具家電の購入と搬入などが必要となります。
これらの工事や作業が終了してからの入居者募集開始となるので、客付けまでに1年くらいの時間が必要なことがあります。
内装工事の費用が想定より高額だった
内装工事を現地の業者に依頼する場合、運用できるまでにかかる費用の総額がよみにくい状況があります。
下記のように品質や工事内容などの影響によって、内装工事費用が想定より高くなるケースもあるので注意が必要です。
- 内装工事の設計やプランに変更が加えられた場合
- 電気配線の更新など、予期しない費用が発生する場合
- 物件のグレードにより、内装仕様が高額となる場合
このような事態をできるだけ避けるために、内装工事費用の見積もりを複数取りリスクマネジメントを行うことや、信頼できる専門家の助言を仰ぐことが重要です。

マレーシアへの不動産投資における注意点
不動産投資を海外で行う場合の注意点はいろいろありますが、ここでは特にマレーシアに焦点を当てた注意点を解説します。
実績が十分に公開されているディベロッパーを選択する
マレーシアの不動産投資において、実績が十分に公開されているディベロッパーは、信頼性が高く品質の高い物件を提供していることが期待できます。
また、そのディベロッパーの歴史や経営状況を調べることができるため、投資家はより良い判断が可能です。
ただし、ディベロッパーが実績を公開している場合でも、その実績が本当にあるかどうか確認する必要があります。
具体的には、完成した物件を実際に訪問して、建物の状態や入居者の評価を確認することが大切です。
また、ディベロッパーの信頼性は過去の実績だけでなく、経営状況や評判なども含めて調べる必要があります。
不動産投資には長期的な視野が必要となるため、信頼できるディベロッパーを選ぶことが大切で、通常は大手企業を選ぶのが一般的です。
石油産業が停滞すると不動産市場にも影響を及ぼすことがある
マレーシアは石油生産国であり国内総生産(GDP)の約20%を占めているため、石油産業が停滞すると不動産市場にも様々な影響が及ぶ可能性があります。
直接的な影響としては、石油関連企業や従業員が多く集中する地域では、従業員の需要が減少することでオフィスや住宅の空室率が上昇し、賃料や物件価格が下落するかも知れません。
間接的な影響としては、消費者や投資家の信頼感や購買力が低下することで、不動産市場全体の需要が落ち込む可能性があります。
マレーシアの石油産業は、我々がコントロールできる要因ではありませんので、不動産投資を検討する段階で、上記のようなポイントへ注意を払うことが必要です。
キャピタルゲインを中心に出口戦略を立てる
マレーシアの不動産投資における賃貸利回りは、前述の通り3.72%(2022年9月時点)で、決して高いとは言えません。
一方で、マレーシアでは、新型コロナの蔓延や石油価格の低迷などにより、一時的に不動産の需要や価格が下落しましたが、経済成長や人口増加などの要因により、不動産市場の回復が見込まれています。
また、物件の保有期間が長くなるほどキャピタルゲイン税の税率が低くなり、最低5年以上保有することで、30%から10%へと税率が下がり売却時の税金を大幅に抑えることができます。
このような状況を考えると、インカムゲインをあまり期待せずに、キャピタルゲインを中心に出口戦略を立てるのが賢明な不動産投資となるでしょう。
最低購入価格は細かく変更になる可能性がある
前述の通り、マレーシアで外国人が不動産を購入するときの最低購入価格は、州によって異なりますが、原則としてRM100万(約3,000万円)以上です。
しかし、2020年からは、不動産供給過剰を解消するために、最低購入価格がRM60万(約1,800万円)まで引き下げられた州もあります。
マレーシアには、3つの連邦直轄領と13の州があり、外国人による不動産の最低購入価格は、連邦政府と各州政府の決定事項です。
このため、不動産の最低購入価格は物件が立地する州によって異なり、経済状況によって今後もこまめに変わる可能性があるので、最新情報に目を向けておきましょう。
プレビルド物件の価格が高くなってきている
マレーシア経済は近年堅調に推移しており、不動産市場もコロナ禍で一時低迷しましたが、現在は回復基調にあります。
また、イスカンダル計画などにより新しい街区が開発されるなど、都市部での不動産需要の拡大が進んでいます。
このような経済発展で建材や労働力のコストが上昇し、プレビルド物件の需要も高まっている状況なので、安さがウリのプレビルド価格も近年は高騰しており、おすすめ物件が限られています。
したがって、極端に価格が安いプレビルド物件は、背景になにか良くない事情が隠れている場合がありますので、物件選びには十分な注意を払うことが必要です。
住居の質が想定よりも悪く感じることが多い
マレーシアの不動産は日本のように細部まで整った物件ではないので、下記のような理由からギャップを感じることがあります。
<建設基準の差>
マレーシアの建設基準は、日本や欧米などと比べると厳しくありません。特に、古い物件や安価な物件については、建設基準が低いことがあるので、住居の質が想定よりも悪く感じることが多いです。
<メンテナンスの不足>
マレーシアの一部の物件では、メンテナンスが不足していることがあります。特に、古い物件や安価な物件については、修繕やリフォームがされていないことがあるため、住居の質が劣っていると感じるかも知れません。
<環境の問題>
マレーシアでは、熱帯気候による湿気や高温、または交通量の多さなど、環境的な問題が住居の質に影響を与えることがあります。特に、道路沿いや高架下などの物件では、騒音や大気汚染などが問題となる可能性があります。
不動産投資を行う際には、このようなポイントを念頭にしっかりと調査を行うことが重要です。また、管理会社の選定や定期的なメンテナンスなど、物件を維持するための取り組みも不可欠です。

マレーシアの不動産投資に関しての質問
最後にマレーシアの不動産投資を検討している方からの、よくある質問とそれに対する回答を紹介しますので参考にして下さい。
マレーシア不動産の将来性は高いですか?
マレーシアの不動産市場の将来性は、下記の理由によって高いと考えられます。
- 経済成長の見込み
人口増加や経済成長が見込まれており、持続的な経済成長が期待されている - インフラストラクチャーの整備
政府主導のインフラ整備が進んでおり、新しい鉄道や高速道路の開通が相次いでいるので、不動産市場への需要が高まることが期待される - 進んだ都市開発
クアラルンプール市内やイスカンダル地区などにおいて、計画的な都市開発が進んでいるので、不動産市場への需要が高まることが期待される - 外国人投資家の注目
マレーシアは、外国人投資家からの注目度が高く、多くの外国人投資家が不動産市場に参入している
マレーシアの銀行でローンは組めますか?
マレーシアの銀行でローンを組むことは可能ですが、条件や手続きが日本と異なる場合がありますので、以下のような点に注意する必要があります。
- マレーシアでは不動産価格の50%までが、ローンを借りれる限度である場合が多い
- マレーシアではローンの審査に時間がかかることがある
- マレーシアではローンの金利は変動金利であり、日本よりも高いことが多い
- マレーシアでのローンの返済期間は、35年までしか認められていない
マレーシア不動産はコロナ禍の影響を受けていますか?
コロナの影響は不動産市況にも影響を与え、2021年頃まで不動産価格と賃料が下落しました。
しかし、マレーシアの大手不動産サイト「PropertyGuru」公表のProperty Indexによれば、2021年Q4に不動産価格と賃料が底を打ち、2022年Q1からは徐々に回復をしていることが確認されるので、一時的な下落だったと言えるでしょう。
まとめ
この記事では、東南アジアの優等生と呼ばれ、日本人の移住先としても人気のあるマレーシアの不動産投資について詳しく解説しました。
マレーシアの経済状況や不動産に関わる指標はポジティブな要素が非常に多く、2021年後半に不動産価格や賃料が底を打って回復基調にあります。
人口増加も続いており平均年齢も若いことから、物件の供給過剰が起こらない限り、これから不動産需要が活発になるでしょう。
マレーシアでの不動産投資は、まさに絶好のタイミングである可能性が高いので、解説した失敗事例や注意事項を踏まえた上で、有望なエリアで慎重に物件を吟味して取り組むことをおすすめします。