海外不動産投資する際は現地で税金を納める必要がありますが、不動産にかかる税金のうち、固定資産税の取り扱いはどうなるのでしょうか。
本記事では、世界各国の固定資産税について、エジプトやアメリカ、アジア、ヨーロッパなど各国の具体的な制度内容をご紹介していきます。
これから海外不動産投資を検討されている方はぜひ参考になさってください。
日本の税制|固定資産税は不動産の所有者に課される税金
本記事では海外不動産に課される税金について解説しますが、そもそも固定資産税とはどのようなものでしょうか。
ここでは、日本の固定資産税の税制に触れながら解説していきます。
固定遺産税とは
日本における固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課される税金となっています。
不動産を所有し続けるかぎり負担しなければならない税金であり、不動産を購入したり取得したりする際には、毎年どのくらいの税負担があるのか想定しておく必要があるでしょう。
また、不動産は仮に使用していなくても負担する必要があるものであり、例えば実家を相続して空き家になっているようなケースでも税金を支払い続けなければなりません。
なお、例えば年の途中で所有者が変わってしまった場合、所有権が移転した年は譲渡側・売主側が負担しなければなりません。
ただし、売買の場合、実務上は取引時点までを売主、以降を買主として、土地決済時に日割りで精算するのが一般的です。
固定資産税評価額と税率
固定資産税の納税額は、固定資産税評価額に税率をかけて算出されます。
固定資産税評価額とは、主に固定資産税を算出するために市区町村が算出する評価額です。
固定資産税は市区町村に納める税金であり、その税額を算出するための数値として固定資産税評価額が用いられます。
固定資産税の納税額を求める計算式は以下の通りです。
【固定資産税の納税額の計算方法】
固定資産税=固定資産税評価額×税率
税率は1.4%が基本ですが、自治体ごとに定められることになっています。
なお、固定資産税評価額は1つ1つの不動産を評価する必要があることから、3年に1回しか評価替えが行なわれません。
このため、3年の間に地価が変動することによる、納税者間の不公平をなくするために、時価の70%程度を目安に定めることとされています。
固定資産税の納め方
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して送られる納付書を利用して納税します。
具体的なタイミングは自治体により若干異なりますが、おおよそ5~6月頃に送付され、4回に分けて納付しなければなりません。
不動産取得税との違い
固定資産税と同様、不動産に関する税金として不動産取得税があります。
固定資産税は不動産を所有している限り、毎年納める必要がある税金ですが、不動産取得税はその名の通り、不動産を取得したときに納める税金です。
海外不動産を購入するときも、固定資産税に相当する税金以外に、不動産取得税のような取得時に課される税金がないか確認しておくとよいでしょう。

【世界を比較】海外不動産投資で固定資産税はどうなる?
日本の固定資産税の税制についてお伝えしましたが、海外の不動産ではどうなるのでしょうか。
海外不動産の固定資産税制度は国毎に異なる
海外不動産投資において、通常海外の不動産を取得すると、その国における固定資産税に相当する税金を納めなければなりません。
ただし、固定資産税の制度は国によってさまざまです。
そもそも固定資産税が存在しない国もあり、税制次第で投資の判断が変わることもあるでしょう。
海外不動産に投資する際は、その国の政治システムや歴史などよく知っておくことが大切です。
海外不動産の固定資産税の納め方
海外に不動産を所有している場合、日本人は日本と現地、どちらに納税する必要があるのでしょうか。
この点、固定資産税については、基本的に現地に納税する必要があります。
ただし、海外不動産の固定資産税の納め方についてはも、国によって異なるため、投資する国が決まったら事前に調べておくことが大切だといえるでしょう。
例えば、アメリカの場合、税率など州ごとに制度が大きく異なりますが、不動産のある郡に対して直接納めることとなっています。ある州ではクレジットカードでの納付が可能なのに、別の州ではできないといったことも起こりうる点には注意が必要です。
固定資産税がない国もある?
海外不動産の中には固定資産税がない国もあります。
例えば、中国には日本の固定資産税のように全国一律で土地・建物の保有に課される税金はありません。
中国においても、貧富の差の拡大を防ぐといった目的もあり、固定資産税の導入は考えられてきています。
2011年には上海や重慶において固定資産税に近い税制が導入されていますが、これは建物の所有のみに対して課されるものです。
中国で固定資産税の導入が遅れている理由としては、大都市に複数の不動産を持つ共産党高官の反対があったことなどが挙げられます。なお、中国においても、土地を含めた固定資産税の導入が計画されています。
現時点ではまだ一部エリアのみとなりますが、今後はより広く適用されていくことが予想されるでしょう。
このように、海外不動産における固定資産税の制度は国によって大きく異なります。
以下、国別の固定資産税制度の違いを詳しく見ていきましょう。

エジプトの固定資産税
エジプトの固定資産税については、以下2項目を解説します。
それぞれ見ていきましょう。
外国人は2件までしか不動産を購入できない
固定資産税について触れる前に、エジプトにおける不動産関連の法制で重要なポイントとして、外国人は2件までしか不動産を購入できないということを押さえておきましょう。
このため、1個人で複数の海外不動産に投資していくといったことができません。
ただし、これについては抜け道があります。
その一つが、家族名義で不動産を購入するという方法です。
例えば、本人と妻、子供の名義で購入すれば、それぞれ2件まで、合計6件購入できることになります。
さらに、エジプトで法人を設立してしまえば外国人1人に2件までといった規制の適用を受けることはありません。
不動産税が課される
エジプトにおける固定資産税としては、不動産税が該当すると考えるとよいでしょう。
エジプトにおける不動産税の要件は以下のようになります。
「得られた年間賃貸料価額から非居住用不動産の関連費用に充当する賃貸料価額32%相当額を控除した金額に対して、税率10%が適用される。不動産の年間賃貸料価額は、税務当局により5年ごとに再評価される」
引用:エジプトの税制

アメリカの固定資産税
次はアメリカの固定資産税について見ていきましょう。
州により固定資産税の取り扱いが異なる
アメリカの固定資産税については、州ごとに取り扱いが異なる点に注意が必要です。
不動産が属する州によって、税率や納付方法が異なる可能性があります。
特に複数の州にまたがって海外不動産投資する場合には注意しなければならないでしょう。
ハワイの固定資産税
ハワイで固定資産税を所有すると、毎年その取引価格に税率をかけた額を納税しなければなりません。
アメリカは州ごとに固定資産税の税率が異なりますが、ハワイはアメリカの中でもかなり低い税率となっています。
ただし、同じハワイであっても島ごとに税率が異なるといった点には注意が必要です。
カリフォルニア州の固定資産税
カリフォルニア州の税率はハワイと比べると高いものの、成熟市場であり、他の州と比べると比較的低い水準となっています。
ただし、これはアメリカの他の州でも同様ですが、日本のように評価額が時価の7割程度といったことはなく、取引額相当の評価額に対して税率を掛け合わせて算出するため、納税額が大きくなりやすい点に注意が必要です。
また、インフレに合わせて納税額が高くなってしまうため、購入して数年経つと固定資産税の負担がかなり大きくなってしまっているといったことも起こりえます。
テキサス州の固定資産税
テキサス州はカリフォルニア州と比べて高い税率となっています。
また、不動産取引が活発になったのが近年になってから、ということもあり、課税評価額の整備が追いついていないという点にも注意しなければなりません。
場合によっては、短い期間で課税評価額が大きく上昇してしまうといったことが起こりやすいのです。

アジア各国の固定資産税
次はアジア各国の固定資産税について見ていきましょう。
中国の固定資産税
中国の固定資産税については、すでにお伝えしたように現時点では、国内全地域の建物・土地の所有に対して課される税金といったものはありません。
ただし、中国は不動産の所有に対して課される税金の導入を積極的に検討している段階です。
固定資産税が導入されることになれば、不動産価格にも影響が及ぶことが考えられるため、今後中国で海外不動産投資していきたいという方は注目しておく必要があるでしょう。
インドの固定資産税
インドの固定資産税は、不動産の所有者に対して課される税金です。
アメリカと同じく州によって税率が異なるため、投資する州の税率がどうなっているか確認するようにしましょう。
なお、インドで海外不動産投資する際に気を付けたいのが権利関係のトラブルです。
インドは不動産の所有者に対して権利証が発行されず、売買契約書に基づいて第三者への対抗要件を備えることとなっています。インドで不動産を取得する際は実績のある専門家と相談しながら進めることが大切だといえるでしょう。
インドネシアの固定資産税
インドネシアは土地と建物の所有者に対して固定資産税(土地建物税)が課されます。
具体的な税率は地域ごとに定められることになっていますが、実効税率が0.1%程度と非常に低い税率です。
また、所有する土地・建物の資産価値に応じて税率が変わる制度になっています。
フィリピンの固定資産税
フィリピンは土地と建物の所有者に対して固定資産税が課されます。
フィリピンも地域によって税率が変わりますが、概ね1~2%程度の税率となっているようです。
なお、フィリピンでは外国人が土地を取得することができません。
一方、建物に関しては外国人でも所有できるようになっています。
このため、フィリピンで海外不動産投資する際はコンドミニアムを購入するのが一般的です。
ただし、外国人が不動産を所有できるのは1つの建物で40%までとされているため、1棟丸ごと購入するといったことはできません。

タイの固定資産税
タイには2019年以前は土地家屋税と呼ばれる税金が課されており、土地家屋税は年間賃貸額や評価額に応じて課税される仕組みとなっていました。
この土地家屋税は2020年に廃止され、固定資産税に該当する土地家屋税制度が始まっています。
土地建物税の税率は利用目的によって異なりますが、0.02%程度と低い設定です。
また、2020年には新型コロナウイルスの影響があり、90%をカットする措置が取られています。
なお、タイにおいても外国人が土地を取得することはできませんが、コンドミニアムは購入できるようになっているため、基本的にはコンドミニアムへの投資を検討することになるでしょう。

シンガポールの固定資産税
シンガポールの固定資産税は、不動産の所有者に対して毎年課されます。
固定資産税を計算する際の基になる、不動産の評価額については政府機関によって、家賃収入に応じて算出されることになっています。
シンガポールの固定資産税の税率は住宅用土地、商業不動産の場合は10%です。
シンガポールの固定資産税は毎年12月頃に請求され、1月末までに納める必要がありますが、概ね家賃の1カ月程度の負担になると考えるとよいでしょう。

ヨーロッパ各国の固定資産税
最後に、ヨーロッパ各国の固定資産税について見ていきましょう。
イギリスの固定資産税
イギリスには固定資産税の制度がありませんが、似た仕組みとしてカウンシル・タックスがあります。
カウンシル・タックスは居住用不動産に居住している人に課される税金です。
固定資産税は不動産の所有者に対して課される制度ですが、カウンシル・タックスの場合は賃借人がいる場合は賃借人に納税義務が生じます。
このため、イギリスで海外不動産投資する際は、入居者がいる間は税金を負担する必要がなく、空室の間は負担する必要があるという点を押さえておく必要があるでしょう。
ドイツの固定資産税
ドイツにおいて固定資産税に該当する税制は不動産税です。
不動産税は不動産の所有者に対して毎年課される税金で、不動産のカテゴリに応じて税率が異なります。
一般の建物付き不動産であれば、0.35%です。
なお、ドイツでは外国人の不動産取得が制限されていません。
イタリアの固定資産税
イタリアにおいて固定資産税に該当する税制としてIMUと呼ばれる制度があります。
IMUはイタリアの不動産を所有する人に対して課される税金です。
IMUを計算する基になる評価額は、名目収入に対して1.05を掛けたもの、さらに居住用不動産の場合は160をかけたものとなります。
また、税率は主たる住居として利用している建物でない場合は0.76%となっています。

まとめ
海外不動産における各国の固定資産税についてお伝えしました。
各国の固定資産税の制度は国ごとに異なります。
また、国によっては同じ国であっても投資するエリアによって制度が大きく異なるケースもある点には注意が必要でしょう。
海外不動産投資する際は、事前にリサーチするとともに、現地の情報に精通した専門家に相談することが大切です。