手元に生活に必要な資金を十分確保している人は「余分なお金を投資で増やせないかな?」と思うこともあるでしょう。投資を検討し始めたとき考えるべきは、どんな種類の投資を行うか、そしてどんな国に対して投資するのかということです。
投資の種類については、株式や債券、投資信託といったペーパーアセットが思いつきます。しかし高い利回りを期待できる商品は少なく、あっても高いリスクを負う商品が多いものです。そこで次に思いつくのは不動産投資です。特に海外不動産投資は高い利回りが期待でき、近年は投資しやすい環境が整ってきた点も追い風になっています。
日本は少子高齢化に伴う経済成長の鈍化が予想され、投資をしても高いリターンは見込めません。一方で海外では人口の増加による経済成長が予想される国が多く見られ、海外不動産投資を行うことで成長の恩恵を受けられることが見込まれます。
本記事では、そんな海外不動産投資について、特に会社に勤めるサラリーマンにとってのメリット・デメリットを解説します。記事の終わりの方では、投資を行うのにおすすめの国も紹介するので、合わせて参考にしてみてください。
サラリーマンが海外不動産投資をするメリット
はじめに、サラリーマンが海外不動産投資を行う場合のメリットを紹介します。法人や個人事業を営む経営者と異なる、サラリーマンの最大の特徴は安定的に給与が振り込まれることです。特徴を活かして手元の資産を効率的に増やしましょう。
日本国内とリスク分散ができる
1つ目のメリットは「日本~海外間のリスク分散」です。
日本人は、資産を預貯金として日本円で貯めておく傾向があります。日本銀行が行った調査によると、家計の金融資産のうち54.3%を現金・預金として保有しているようです。一方で米国では現預金の割合は13.7%で、日米で金融資産の構成比に差が生じています。
日本円として現預金で資産を保有する割合が大きいと、日本円の価値がドル・ユーロといった海外の通貨と比べて弱くなったときや、日本で円の価値が下がるインフレが発生したときに保有する資産は目減りしてしまいます。
海外不動産投資を行うことで外国通貨建ての、現預金以外の資産を保有することになり、円安やインフレといったイベントが起きても極端に資産を減らさずに済み、リスクを分散させることができるでしょうら。
少額で一等地の物件を入手できる
海外不動産投資を行う2つ目のメリットは「少額でも一等地を購入できること」です。
日本で都市部の駅の近くや大通り沿いなど、一等地の購入を試みる場合、エリアや広さにもよりますが、1億・2億と大金を積む必要があります。
一方で海外不動産投資の場合は、発展途上国を中心に土地・建物の価格が上がりきっていないことから、比較的安価に一等地を購入できるでしょう。
1,000万円前後といったサラリーマンでも手が届く金額で、首都の一等地を購入できるケースもあり、国の経済成長によってインフレが発生した場合、土地の価格は何倍にもなり大きなキャピタルゲインが得られる可能性があります。
また、一等地は継続して高い需要を持つので、空室リスクが低く賃料が値下がりする可能性も低いといえます。賃貸住宅やオフィスとして貸し出した場合に、安定的なインカムゲインを生み出す収益物件になる可能性もあります。
少ない投資で高い利益を生み出せるのは、海外不動産投資の醍醐味です。
ローン審査に通りやすい
物件を一括キャッシュで購入せずにローンを組む場合は、サラリーマンは「ローンの審査に通りやすい」というメリットを享受できます。
経営者や個人投資家の場合、不動産を購入するためにローンを申請すると断られるケースが散見されます。その理由は収入が安定しないからです。いくら単月の収入が多く、資産が豊富でも、突然収入がストップしてしまえば、ローンの支払いに窮してしまう可能性があります。
一方でサラリーマンは毎月安定した給与が振り込まれるため、ローンの支払いが滞る可能性が低くなり、ローン商品を販売する銀行側からの信頼が高くなる傾向にあります。
こうした理由で、サラリーマンはローン実行の可否や適用金利が優遇されやすいと言われています。

給料と別に投資で外貨を受け取れる
「給料と異なる収入を得られること」もサラリーマンが海外不動産投資を行うメリットです。
資産を日本円としてのみ保有するリスクの高さは先述したとおりです。資産に加えて収入も複数の入り口を作ることで、様々なリスク低減を図れます。
たとえば、万が一勤めている会社が倒産してしまったときを想定しましょう。会社からの給料が収入の全ての場合、倒産や免職で給与が貰えなくなると、収入はゼロになってしまいます。
一方で海外不動産投資を行い、定期的に賃料収入が得られる環境を作っておくと、会社からの収入がなくなったとしても収入がゼロにはならず、心理的に安心して再就職先を探し始められます。

サラリーマンの海外不動産投資の注意点
サラリーマンが海外不動産投資を行うメリットを述べてきましたが、サラリーマンならではの注意しなければならない点もあります。
現地へ行くことが難しい
サラリーマンは「現地に行くのが難しい」ことが1つ目の注意点です。
不動産投資は、不動産の価格や想定される賃料、建物のメンテナンスに必要な費用や物件の周辺環境など様々な条件を勘案して購入を検討します。
このため本来は現地に行って、自分が利用する立場になって物件を検討することを求められます。最も近いスーパーマーケットはどこか、公共交通機関との距離はどの程度か、物件周囲の雰囲気を確認することが大切です。
一方で海外不動産に投資する場合は、現地へと物件を見に行くのも一苦労です。交通費や宿泊費が必要になりますし、何より有給休暇を利用して本業を数日間休むというハードルが存在します。とはいえ物件を自分の目で見て購入できないのも不安になってしまいます。
ただし、投資先の国によってはプレビルド方式(建設前・建設途中の物件を購入する投資方法)が主な投資方法となっているケースもあります。この場合は現地にいったところで物件を確認することができないので、現地に行く場合、行かない場合の差は少なくなるでしょう。
減価償却費の費用計上ができない
2つ目の注意点は「減価償却費の費用計上ができない」ことで、節税が図れない点です。
令和2年度税制改正大綱が施行されるまでの間、海外不動産投資は富裕層の節税策として頻繁に利用されてきました。
その節税手法とは、海外の中古不動産を購入することで多額の減価償却費を作り赤字を計上、日本での給与所得や事業所得と相殺することで所得税を大幅に節税するというものです。
しかし2020年4月1日から、海外不動産投資で赤字が出ても日本での所得と損益通算ができなくなりました。
税制が改正されて間もないため、上記節税スキームが利用できると考えている人は多いです。実はもう使えなくなっていることを認識しておきましょう。

言語や文化が違うので物件探しが難しい
3つ目の注意点は「言語や文化の違いで物件探しが困難」であることです。
多くのサラリーマンは観光目的以外で日本から出たことがなく、言語や文化を少しでも知っているのはアメリカやEU圏内の国々のことでしょう。
海外不動産投資はこうした先進国のほかにも、アフリカや東南アジアといった国々も対象になります。日本から遠く離れて、見たことも話したこともない言語を使い、全く異なる文化に生きる人が利用する不動産を購入するのは簡単ではありません。
サラリーマンは本業があるため、言語や文化を勉強する時間を取るのは困難でしょう。投資利回りの高い魅力的な国に安全に投資するためには、信頼できるエージェントや代理店を探すことが得策かもしれません。

副業禁止の会社にバレるリスクがある
4つ目の注意点は「副業禁止の会社にバレてしまう」リスクがあることです。
経団連は2022年10月、「副業・兼業に関するアンケート調査結果」を公表しています。調査によると、回答した企業全体の53.1%は副業を認めていて、17.5%は認める予定である一方、29.5%は「検討していない・認める予定はない」と回答しています。
さらに100人未満の小規模な会社に限ると、57.9%が「検討していない・認める予定はない」と回答し、副業への強い風当たりが見て取れます。
副業禁止の会社でバレてしまった場合、口頭での注意のほか、減給や降格、最悪解雇される恐れもあります。
では、どういったときに副業が会社にバレてしまうのでしょうか。
最もバレる可能性が高いルートは、人から人へ噂話として広まってしまうことです。大きな収入が得られると周囲の人に漏らしたくなりますが、親しい人であっても会社の関係者には教えないようにしましょう。
会社にバレてしまうもうひとつの理由は、住民税の通知です。サラリーマンは住民税を自分で支払わず、会社から天引きされる形で支払います。給料以外の収入がある場合、この住民税は経理が計算したものより高額になってしまい、不一致の原因調査からバレてしまいます。
確定申告を行う時に、申告書最下部にある「普通徴収」に丸をつければ、住民税を自分で支払うことになるので、バレる可能性を低減できるでしょう。
悪徳仲介業者にカモられるリスクがある
サラリーマンの海外不動産投資、5つ目の注意点は「悪徳業者にカモられてしまう」ことです。
高い利回りが期待できる海外不動産投資は、金利差や為替などの金融知識、不動産に関する知識、現地事情など様々な知識が求められます。一方でサラリーマンは本業があるので、勉強する時間や現地を確認する時間が取りづらいものです。
そこで言葉巧みに「リサーチする時間は不要!」「全てお任せ!」などと簡単に海外の不動産に投資できることを宣伝され、相場よりも高い金額の物件を掴まされてしまったり、不具合があり修繕が必要な物件を購入させられたりしてしまいます。
サラリーマンが海外不動産投資を行う場合、時間や労力を考えると相談できる仲介業者やエージェントを確保することは効果的です。しかし一定数の悪徳業者がいることを認識して、提示された数字や条件を検証できる程度に知識をつけましょう。

サラリーマンの海外不動産投資のやり方
サラリーマンの海外不動産投資について、メリットや注意点を解説しました。ここからは具体的に。どうすれば物件を購入できるのか、簡易的な手順を紹介します。
①国内で不動産会社を探す
まずは「国内で不動産会社を探す」ことから始めましょう。
海外不動産の素人が、海外の現地に赴いて物件を購入するのは実質的に不可能です。購入を代理してくれる不動産業者の存在は不可欠といえるでしょう。
海外不動産全般の物件を取り扱う業者や特定の国に特化した業者、大手から中小規模のものまで様々な会社があるので、情報を仕入れるためにも実際に物件を購入するためにも、信頼できる会社・担当者を探しましょう。
②物件を決める
信頼できる会社が見つかったら「実際に購入する物件を確定」します。場合によっては現地に赴き、対象とする物件の外観・内装、周囲の状況を確認します。
③契約を締結し代金を支払う
物件が決まれば「契約の締結、および代金の支払い」です。このとき注意するべきは、投資が計画通りにいかなかった場合です。
海外不動産投資の場合に用いられるプレビルド方式の場合、どの時点でキャンセルが効かなくなるのか、建築工事が頓挫した場合の費用負担など、様々なケースを想定して確認することが大切です。
④物件の引き渡し
代金の支払いが終われば「物件の引き渡し」を受けて売買契約は完了します。物件の鍵や各種図面、中古物件を購入する場合に既に入居者がいる場合は賃貸借契約書なども引き渡されます。
日本の物件を購入する場合は、オーナー自身が管理を行うケースもありますが、海外不動産投資の場合は管理会社に日々の清掃や賃料の受け渡しなどの日常業務を委託することになります。引き渡しと同時に管理会社との契約も必要になるでしょう。

サラリーマンが海外不動産投資で成功するコツ
サラリーマンが海外不動産投資を行う場合の特徴や手続きについては分かりましたが、投資を成功させるコツはあるのでしょうか。
投資する国選びが重要
1つ目のコツは「投資する国選び」です。海外不動産投資は国選びで成否が半分決まってしまいます。投資を検討している国の人口は増加傾向にあるのか、経済成長する見通しがあるのか、確認が必要です。
人口が増加傾向にあれば、住宅に対する需要が増え続けると考えられ、不動産価格の上昇や賃貸物件の入居者増加など、投資家にとって好ましい環境が整うことになります。
また、経済が成長する中で物の価値は上昇するため、高い経済成長率を記録する国では不動産価格や賃料の増加も期待できます。不動産価格が上がれば売却してキャピタルゲインを狙うことができ、賃料が増加すれば安定的に収入が得られるインカムゲインが期待できるでしょう。

焦らずにしっかりリサーチする
2つ目のコツは「焦らず時間をかけてリサーチすること」です。
投資の勉強を始めた人の多くは、低い利回りの預貯金から高い利回りが期待できる投資商品へと、資産配分を変更する志向が強くなります。しかし、ここで急いでしまうと手元の大事な資金を失ってしまうことになりかねません。
特に海外不動産投資は高いリターンが期待できる一方で、資産を失うリスクも比較的高い投資手法です。限られた時間の中でも、投資をする国や物件をしっかり選定することが大切です。
なお、勉強した情報が現在の世界情勢に見合ったものなのか、検証を行う意識も持ちましょう。海外不動産の最新の状況は、不動産会社や現地エージェントが持っています。こうしたプロに相談できるよう、信頼できるパートナーを探してみましょう。

少額投資から始める
3つ目のコツは「少額投資から始めること」です。
たくさんの投資利益を得るために、保有している資産の大半を投資に回してしまうのはよくあることです。しかし一気に多額の資産を運用してしまうと値動きの幅も大きくなってしまい、不動産の価値が急落した瞬間に最悪のタイミングで損切りすることになりかねません。
まずは少額から投資を始めて、どの程度の値動きがあるのか、自分がどの程度までなら値下がりに耐えられるのか確認してみましょう。
心理的にストレスになる金額で投資をすると、物件のことが頭から離れなくなり本業にも支障を来たす可能性があります。無理のない範囲で投資を始めてください。

サラリーマンの海外不動産投資におすすめの国
実際に海外不動産投資を行う際に重要になるのは「どこの国に投資するのか」ということです。海外不動産投資を行うべき国と、行うべきでない国があるので注意が必要です。
判断するための要素は様々ありますが、そのうちのひとつは「人口」です。たとえば2022年の日本の人口は1億2,484万人ですが、2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人と減少すると予想されています。人口が減少すれば、中古住宅は余って値下がりし、新築住宅の需要は低下してしまいます。一方で、人口が増加する国があるなら、住宅の需要は増加し値上がりが期待できるでしょう。
このように、人口や経済の状態によって、投資するべき国は変わります。不動産投資に適した状況にある国を探すことが、海外不動産投資を成功させるコツといえるでしょう。
人口増加を狙うならカンボジア
最初に紹介する国は「カンボジア」です。
カンボジアは東南アジアに位置していて、タイ・ベトナムなどの山岳地帯、タイランド湾という海に囲まれた国です。世界遺産であるアンコール・ワットや、ナイトマーケットで有名なシェムリアップなど、観光地として知っている人の方が多いかもしれません。
海外不動産投資の視点でカンボジアを見ると、特筆すべきは人口の増加率です。2019年に1,555万人であった人口は、2030年までに2,000万人を超えると予想されています。
先述したとおり、人口の増加は不動産投資を検討する際に大事な指標になります。新築・中古を問わず住宅への需要は増え続けることになり、投資によって中・長期的に大きな利益が見込めます。
また、カンボジアはリエルという自国通貨があるものの、実際は米ドルの流通率が高く物件の購入から賃貸収入まで、総じて米ドルで管理できる点もメリットです。加えて海外への送金規制もないので、カンボジアで得た利益はスムーズに日本へと送金できるでしょう。
注意が必要なのは、法整備の遅れと所有権の曖昧さです。カンボジアでは、1970年にカンボジア王国が倒れ1993年に民主政権が誕生するまでの長い間、内線が続いてきました。その最中に土地所有に関する書類が消失するなどして、土地の所有権が曖昧になっている点がリスクとして指摘されます。
さらにカンボジアでは外国人が土地を所有することが禁じられています。日本人が不動産を所有する場合は、集合住宅の2階以上についてのみ所有が認められています。
人口増加によって高い成長率が期待されるものの、投資する際には高いリスクが見込まれるため、投資する場合は信頼できる仲介業者やコーディネーターを見つけることが重要です。
高い経済成長を狙うならエジプト
海外不動産投資におすすめの国、2つ目に紹介するのは高い経済成長率と首都移転で注目される「エジプト」です。
エジプトもカンボジアと同様に、日本人の視点ではピラミッドを中心とする観光業が主であると思われがちです。しかし実際は、自動車産業を中心とする製造業や、ナイル川沿岸地域に広がる広大な農地で生産される小麦やとうもろこしを主とする農業など、複数の産業が発達しています。
こうした各種産業が勃興する中で、世界中から投資マネーや人材が集まり、2010年に8,044万人であった人口は2020年には1億人を突破、2030年には1億2,000万人になることが予想されています。
人口の増減は経済とも密接に関わっていることから、エジプトでは高い経済成長が見込まれており、2022年の経済成長率は5.9%と予想されています。
人口の増加や高い経済成長率は、海外不動産投資の観点から好ましいものですが、エジプトに注目が集まるのには、もうひとつ理由があります。それは「首都移転」です。
エジプトの首都カイロには、総人口の2割が住んでいて、交通渋滞や大気汚染といった問題が顕在化していました。問題に対応するために、カイロから70kmほど離れた場所に新首都が建設され、2021年12月から順次移転が始まっています。
新首都へ行政機関などの機能が移転されるに従い、周辺では住宅への需要が高まることが確実視されています。海外不動産投資をどの国に行おうか迷っている人は、エジプトの動向を注視しておきましょう。

年齢が若い国を狙うならフィリピン
3つ目に紹介する国は「フィリピン」です。
外務省が2019年に発表した調査によると、フィリピンには1万6,894人の日本人が在住していて、世界で17番目に日本人が多い国とされています。東京から飛行機で4時間30分ほどで到着できる距離感も手伝い、日本人からは馴染み深い国と認識されています。
距離的な近さは海外不動産投資の観点からも重要で、購入前に物件を確認したり、メンテナンスの必要性を検討するために現地を確認したりすることも可能です。
今まで紹介してきた国と遜色ないほどフィリピンは人口増加が著しい国で、同時に高い経済成長を記録している点に注目です。
2015年の調査では1億98万人、2020年の調査では1億903万人と、800万人も人口が増加しています。2045年には1億4,200万人に達するとする予測も見られ、人口増加による経済成長が期待されます。
人口ピラミッドが綺麗な正三角形であることも知られていて、15歳未満の人口が30%を超え、15~64歳の生産年齢人口が60%程度と、長期的に経済成長が続くことが示唆されます。
若い人が多いことから住宅への需要も継続的に増えることが予想されています。家賃の上昇は安定したインカムゲインにつながり、物件価格の高騰は短期的なキャピタルゲインを狙うことにもつながります。
海外不動産投資を狙う人にとって、短期・長期、どちらの利益も狙えるフィリピンは魅力的な国といえるでしょう。

空室率の低い国を狙うならベトナム
海外不動産投資に適した国として紹介する4つ目の国は「ベトナム」です。ベトナムは東京からの直行便に乗れば6時間程度で到着する、比較的近い距離にある国です。
南北に細長い国で起伏に富んだ地形をしていますが、実は活火山が存在せず、地震の発生率が低いことでも知られています。台風が直撃することも少ないと言われるので、不動産オーナーとしては安心できる環境といえるでしょう。
他の東南アジア諸国と同様に、ベトナムも人口増加・経済発展の最中にあります。
2010年に8,797万人であった人口は、2021年には9,851万人になり、1,000万人近く増加しています。2030年には1億416万人、2050年には1億961万人と、緩やかながら増加すると予想されていて、爆発力はないものの穏やかで安定的な経済発展が見込まれています。
新型コロナウイルスのまん延で成長率が落ち込んだ時期があったものの、安定して6%台の経済成長率を見せるベトナムは、2022年第2四半期の実質GDP成長率が7.72%にもなっています。
こうした人口・経済の発展は不動産市場にも好影響を与えることが予想され、短期間に大きな利益を得られるキャピタルゲインから、中長期的に利益が期待できるインカムゲインまで、どちらの収益スタイルでも狙っていけます。
また、ベトナムは2015年に法改正が行われるまで外国人の不動産購入が認められていませんでした。開放されて時間が経過していない不動産市場は、他の東南アジア諸国と比べても比較的安価な水準に落ち着いています。早期に購入することで、より大きなリターンが得られるかもしれません。

安定的な収益と値上がりを狙うならアメリカ
最後に紹介する、海外不動産投資に適した国は「アメリカ」です。
今回紹介する国の中で唯一の先進国ですが、世界経済の中心として、アメリカを外すことはできません。
おおむね2%から3%の経済成長率を維持してきましたが、2020年にはコロナショックによりマイナス成長を記録しました。しかし2022年第3四半期の成長率は2.6%となり、経済成長が上向くことが期待されます。
先進国でありながら経済成長が見込まれる理由のひとつは、安定して増え続ける人口にあります。2010年に行われた調査時は3億874万人であった人口は、2020年には3億3,144万人になり、2,270万人も増えていることになります。
今後も人口は増加傾向が続くと見られていて、2055年には4億人を超えるという推計もあります。
人口の増加は海外不動産投資を行う人にとっても追い風になり、新築・中古とも不動産価格の上昇トレンドは継続することが予想されます。
日本とアメリカの不動産市場の違いは中古物件の扱いにあると言われており、日本では住宅全体に占める中古物件の割合が14.5%であるのに対して、アメリカは81.0%ものシェアを占めます。
中古物件の流通は、住宅の価値が下がらないことにもつながり、安定した家賃収入が得られることや、物件を手放すときの値下がりリスクを避けられることにもつながります。
また、成熟した不動産市場は適切な法整備がなされており、安心して投資できる環境であることも嬉しい点です。
ただし、発展途上の国々と比べると新築・中古とも不動産価格が高額である点に注意しましょう。購入時に高額な借り入れを行うと、金利の支払いのため利回りが低下してしまいます。購入から売却まで、長期目線で利益を計算するようにしましょう。

サラリーマンの海外不動産投資についてよくある質問
記事の最後に、サラリーマンが海外不動産投資を行うときに聞かれやすい疑問について回答します。
海外不動産投資にかかる税金は源泉徴収される?
「海外不動産投資で得られた収益は源泉徴収されるのか?」と聞かれることもあります。海外の一部の国では、家賃収入を得て日本へ送金する場合に自動的に源泉徴収されることがあります。
一方で日本では、海外不動産投資で得た収益は自分で申告し納税する必要があります。したがって源泉徴収されることはありません。
なお、上記のケースでは投資先の国で税金を支払い、日本でも確定申告後に再度税金がかけられる二重課税になってしまいます。二重課税を避けるために、国によっては租税条約を結んでいて、海外で納付した所得税分、日本での確定申告時に控除できる制度もあります。

海外不動産投資は日本よりも儲かる?
「海外不動産投資は日本での不動産投資より儲かるか?」という問いも聞かれます。確かに海外での不動産投資は、日本で行う不動産投資より利回りが高いケースが見受けられます。その理由は、途上国を中心に人口増加や経済成長が期待されているからです。
ただし、利回りが高いからといって海外での不動産投資が必ず儲かるという訳ではありません。投資対象の国と日本の間の為替差や、法整備の充実度、政治情勢の安定性など、様々なリスクが存在していて、期待したとおりの収益が得られない可能性があるからです。
海外不動産投資を行って多くの利益が得られる場合もあれば、損失を被る可能性もあることは認識しておきましょう。

海外不動産投資セミナーは怪しい?
「海外不動産投資に関するセミナーは怪しいのか?」という問いについては、「セミナーによる」が回答です。
海外不動産投資が流行していた時期、異常に高い利回りで宣伝したり、投資のメリットばかりを宣伝したりして人を集めるセミナーが開催されることがありました。こうしたセミナーの宣伝を真に受けた人の多くは損失を被ったため「セミナー=怪しい」というイメージが刷り込まれてしまったのでしょう。
セミナーの中には怪しいものもありますが、中身があって誠実にメリット・デメリットを伝えるものも存在します。主催する会社は信頼できるか、提示された情報は正しいか、確認できるようにたくさんのセミナーに参加してみることが大切です。


まとめ
サラリーマンの海外不動産投資について、全般的に解説しました。
海外の物件にサラリーマンが投資する際の最大の武器は「安定性」です。一定の給与を長期的に安定して貰えることが期待できるので余剰資金が生まれやすく、投資に振り向けられる資金が高額になりがちです。
こうした余裕資金を利率の低い預貯金に入れておくよりも、高い利回りが期待できる国へと投資することを検討してみましょう。ただし、参入してすぐに全額を投資することは勧められません。
本業が終わったあとの限られた時間でも、しっかりと勉強して不動産業者から提示される数字や言葉の意味を理解して投資しましょう。また、信頼できる海外不動産業者や現地エージェントを探して、いつでも相談できる状態を作っておくのもおすすめです。