円安に終わりが見えない状況が続く中、海外不動産の売却を検討する動きがにわかに高まっています。
そんな中で海外不動産投資へ注目が集まっています。
海外不動産へ投資するなら購入物件のリサーチだけではなく、売却方法などしっかりとした出口戦略が必要です。
本記事では、売却によるキャピタルゲインを最大化することを目的とし、多角的に出口戦略を策定するポイントを、各国の課税制度とともに解説していきます。
海外不動産売却の流れ
海外不動産売却の流れは、日本での不動産売却の流れと基本的には共通しています。
ただし、不動産を売却する国によって、不動産業界における通説や一般的なルール、または法律上の観点から、日本と異なる手続きが必要となることがあります。
ここではまず、基本的な売却の流れについて、順を追って解説していきます。
不動産仲介会社を選定する
保有している不動産の売買にかかる諸手続きを依頼する仲介業者を選定します。
業者選定のポイントは、日本における仲介業者選びの指標と同様で、豊富な仲介実績があることが大前提です。
さらには、売却する不動産のタイプや立地エリアにどれほど精通しているかおり、どれほどの仲介実績があるかによって、売却が有利に進むか否かが大きく左右されるため、業者選定は慎重に行いましょう。
業者の査定と売却価格の設定
過去実績や取り扱い物件の数、タイプなどの総合的観点からの査定を経て業者が決定したら、売却価格の設定へと進みます。
価格設定は仲介業者の手腕が問われるプロセスでもあり、対象エリアのマーケット状況や売却相場、条件などの傾向を分析したうえで、適正な売却価格を割り出します。
仲介業者の売却活動
売却価格の決定後は、不動産のポータルサイトなどに物件広告を掲載して購入希望者を募ります。
日本と同様に、魅力的な写真や売り文句でアピールすることが、速やかな売却につながる第一歩です。
業者に丸投げするのではなく、応募や問い合わせ状況を定期的に確認しながら戦略的に売却活動を進めることが重要です。
購入希望者からのオファー審査・受理
購入希望者からのオファーが届き始めたら、オファー内容を査定し、売主にとって最も好条件のオファーを選びます。
審査においては、「購入希望価格」「ローンの有無」「希望引き渡し時期」の3点が重要なポイントです。
契約書の締結
売買にかかる諸条件が合意に達し売却先が決定したら、売買契約の締結に進みます。
アメリカで不動産を売却する際は、契約の締結や手付金などの金銭のやり取りといった、引き渡しまでに発生する諸手続きを「エクスロー」と呼ばれる第三者機関に依頼します。
エクスローは、売主と買主の間における不利益・不合理な取引の防止を目的とし、公正な立場で取引物件の実態調査を行うなどの仲介業務を担います。
代金の支払い
契約締結後は「物件インスペクション」と呼ばれる買主側による引き渡し前点検調査が行われ、問題がなければ売り手に売却金が支払われます。
不動産仲介業者やエクスローへの支払いも売却金の入金後に行われるのが一般的です。
引き渡し
買主からの入金を確認後、所有権移転登記が行われ、買主に物件が引き渡されれば取引は完了します。

海外不動産売却時に発生する税金
日本の居住者が海外に保有する不動産を売却した場合、売却によって得た譲渡益は日本での課税の対象となります。
ここでは、海外不動産売却によって発生する「譲渡所得税」に加え、所得増により変動する「住民税」と「健康保険」について解説していきます。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、保有する不動産売却による収入から、売却にかかった経費を差し引いた金額(譲渡所得)に対して課せられる税金です。
譲渡所得税は、国内・国外いずれの不動産を売却した場合であっても同様に課税されます。
課税される税率は、対象となる不動産の保有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類それぞれに対し設定されています。
・短期譲渡所得税(保有期間が5年以下)の計算式
譲渡所得 × 39.63%(うち所得税率30.63%、住民税率9%)
・長期譲渡所得税(保有期間が5年超)の計算式
譲渡所得 × 20.315%(うち所得税率15.315%、住民税率5%)
保有期間は、対象の不動産を譲渡した翌年の1月1日を起算日として算出します。
また外貨で売却益を得た場合、譲渡所得の算出に用いられる為替レートは、不動産購入時や売却時、経費が発生した日など、その都度のレートを用いて計算される点には注意が必要です。

住民税と健康保険も引き上がる
海外不動産の売却による売却益に対しても、国内不動産の売却と同じく所得税の課税対象となるため、所得増に乗じて住民税と健康保険料も引き上げられます。
住民税の算出方法は先述通り、売却した不動産の保有期間に紐づく税率で算出されます。
対して健康保険料は、保険の種類によって引き上げの対象となるか否かが変わってきます。
まず引き上げ対象となるのは、被保険者の所得が保険料算出に反映される国民健康保険料です。
一方で、公務員や会社員が加入している共済保険や社会保険に関しては、保険料算出の基準が給与額であるため、不動産売却による譲渡所得が発生しても、保険料に反映されることはありません。


海外不動産売却時の税金を支払う方法
海外不動産の売却益に対する税金は、基本的に日本と売却を行った国の両方で納めなければなりません。
ここからは、日本と海外双方での納税方法に加え、重要な仕組みである外国税額控除制度について解説していきます。
日本で確定申告をする
日本では全世界所得課税制度が施行されているため、日本の居住者は国内外双方における所得全てが課税対象であり、その全額を確定申告する必要があります。
海外不動産の売却による譲渡所得も、国内での不動産売却と同様に課税対象となります。
ただし、全世界所得課税制度の対象となるのは日本の居住者のみとされているため、国内に住所を持たない非居住者であれば、海外不動産の売却益に対し日本で課税されることはありません。

国によっては現地でキャピタルゲイン税が取られることも
不動産を保有している国によっては、売却益に対し課税する「キャピタルゲイン税」を設けているところがあります。
一方でドバイのように、キャピタルゲイン税はもちろん、不動産税や所得税などが一切かからない国もあります。
国によって税率や税制度が異なるため、海外不動産購入時にはキャピタルゲイン税の有無や税率もしっかりと調べておいたほうがよいでしょう。
二重課税を防ぐための外国税額控除とは?
キャピタルゲイン税を課せられる国で不動産を売却した場合、日本と対象国の2カ国で納税義務が発生します。
このような二重課税防止のために設けられたのが「外国税額控除」という仕組みです。
日本と租税条約を締結している国において不動産投資をしている場合、外国税額控除が適用となり、対象不動産にかかる日本での納税額から海外で支払った税金を控除することが可能となります。
ただし、この制度を利用するためには、日本での納税前に海外での税額が決定していなければならず、決定するタイミングによっては翌年に申告が持ち越される可能性がある点には注意が必要です。

キャピタルゲイン税がある国と税率
ここからは実際にキャピタルゲイン税を設けている国を対象に、国別の税制度や税率の違い、特徴について解説していきます。
アメリカ
アメリカでは、キャピタルゲインが給与や配当などのその他所得と合算されて税金が計算されます。
税率は家族構成などによって多少異なるものの、総所得に対して段階ごとに税率が設定される方式です。
アメリカの場合、国税である「連邦税」に加えて、地域ごとで税率の異なる州・地方政府税が設けられています。
富裕層の多いカリフォルニア州では、連邦税と州・地方税を合わせた税率が50%を超えるとも言われています。
カナダ
カナダでは、非居住者が不動産を売却した際、対象不動産の購入価格を売却価格が上回り利益が発生した場合に限り、キャピタルゲイン税が発生します。
税率は通常、総利益額の25%とされており、確定申告の際に不動産仲介手数料や弁護士費用などの必要経費を差し引いて税務処理を行います。
イギリス
イギリスでもアメリカと同様に、給与や配当などの他の所得とキャピタルゲインを合算した額に対して税金が計算されます。
税率は、資産の内容や所得水準によって多少の変動はあるものの、総所得が34,500GBP以下であれば10%、34,500GBPを超えると20%となり、最大税率は28%です。
ドイツ
ドイツでは、不動産の売却益に対して25%のキャピタルゲイン税を課し、そこに連帯付加税が合算され合計で26.375%の税率で税金が課せられます。
ただし、不動産売却による資本所得とその他の所得を合算した総所得に対する課税率が25%を下回る場合においては、申告することで総合課税が適用されるケースもあります。
もしも申告後に、総合課税を選択した方が納税者が不利益を被るようであれば、通常の26.375%の源泉徴収税のみ納めればよいという仕組みになっています。
フランス
フランスでは、利子や配当、譲渡益などの全ての金融所得に対し、分離課税(キャピタルゲイン税)と総合課税のいずれかの課税方式を選択することができます。
分離課税を選択した場合は、原則として一律30.0%の税率が適用されます。
一方で、総合課税を選択した場合は、金融所得以外の所得と合算した総所得額に基づき最大62.2%までの所得税率で税金が課せられます。
オーストラリア
オーストラリアでは、キャピタルゲイン税が所得税同様の税率で課せられます。
売却で得た課税所得が12万AUD以下であれば税率は最低の32.5%となり、課税所得額に応じて最大税率は45%まで上がります。
また、オーストラリア非居住者の不動産売却に対しては、一律で12.5%の不動産源泉徴収税が適用されるため、こちらも納税義務が生じます。
フィリピン
フィリピンでは、対象不動産の売却価格と市場価格を比較して、高い方の価格に対して6%のキャピタルゲイン税が課せられます。
キャピタルゲイン税は、売買取引が発生した日より60日以内の納付が義務付けられ、支払いは売主が行います。
稀に、キャピタルゲイン税が不動産の販売価格に含まれていることもあるため、契約時には販売価格設定のロジックをしっかりと確認しておくことが大切です。
タイ
タイでは、売却額が100万THB以下であれば税率15%のキャピタルゲイン税が課税されます。
タイのキャピタルゲイン税は、売却益ではなく売却金額に対して課せられる点が他国のキャピタルゲイン税と異なるため、注意が必要です。
加えて、対象不動産の保有期間に応じて控除額が設定されており、控除された後の売却金額が課税対象となるため、算出の際に混同しないようにしましょう。

エジプト
エジプトでは、キャピタルゲインと通常の所得とを合算した総所得額に対して課税され、個人の場合は所得税率の上限は25%に設定されています。
さらにエジプトでは、「不動産売買税」と呼ばれる税制度があり、不動産売却益に対し一律2.5%の税金が課せられます。
マレーシア
マレーシアでは、原則キャピタルゲイン税がありませんが、不動産は対象外であるため、売却益に対してキャピタルゲイン税が発生します。
この場合のキャピタルゲイン税は「RPGT(不動産譲渡益税)」と呼ばれ、不動産の保有期間と保有者の属性(居住者、外国人、永住権保有者)によって設定された税率をもとに納税額が決定されます。
海外投資家であれば、対象不動産の保有期間が3年以下であれば3%、5年超であれば10%の税率で算出された額が納税額です。
RPGTは不動産売却によって生じた収益に課せられる税金であるため、売却時に損失が生じた場合は、RPGTの支払い義務はなくなります。
不動産売却時のキャピタルゲイン税がない国
様々な形で不動産売却益に対してキャピタルゲイン税を課する国がある一方で、キャピタルゲイン税がない国もあります。
まずはベトナムでの不動産売却にかかる税金について解説します。
ベトナムにはキャピタルゲイン税はないため、売却益は「不動産譲渡所得」とされ、売主が居住者、非居住者にかかわらず、売却益に対して一律2%の課税が適用されます。
続いて、シンガポールもキャピタルゲイン非課税国であるため、不動産を含む資産売却益は課税対象外です。
注意点としては、売却目的によって課税対象になる可能性があるという点です。
シンガポールでは、投資目的による保有資産の売却(資本取引)についてはすべて、原則非課税です。
しかし、同じ資産売却であっても、トレーディングなどの利益獲得を目的とした売却(損益取引)と判断されれば課税対象となります。
資産取引か損益取引かの判断基準は明確な指標などでは示されていないものの、保有期間が著しく短期間であることや、何度も転売活動を行っているなどの実態が確認された場合は、課税対象とみなされるかもしれないため注意しましょう。
近年はキャピタルゲイン非課税国として知られる国々においても、取り締まりが強化傾向にあります。
富裕層の移住先としても有名なスイスでは、不動産を源泉とする所得やキャピタルゲインに関しては税対象となります。
同じくニュージーランドでも、原則キャピタルゲイン税は適用されないものの、一部の住宅不動産に対してはその売却益が課税対象とする制度を取り入れています。
同国では課税対象か否かの判断基準として「ブライトライン・テスト」という審査基準を設定し、購入後一定期間内で売却する場合、当テストの審査により課税対象と判断される仕組みを設けています。


海外不動産投資の出口戦略パターン
保有している不動産を売却することは「出口を取る」とも言われ、売却に関する計画のことは「出口戦略」と表現されます。
不動産投資において、家賃収入以外で収益を上げるには、有利な条件で売却しキャピタルゲインを得なければなりません。
そのため、購入前から売却戦略を策定しておいた方が、購入基準が明確になることで優良物件の目利きができ、ベストなタイミングで売却することが可能となるのです。
ここからは、海外不動産の出口戦略として高い効果が期待できる3つのパターンについて解説していきます。
プレビルドを完工前に売却する
「プレビルド」と呼ばれる物件は、リゾート地のコンドミニアムを中心に完成前から購入希望者を募り、完成を待たずして販売される物件です。
プレビルドの不動産価格は、完成が近づくにつれて徐々にに吊り上がっていく傾向にあることから、発売早々に青田買い目的のオファーが来ることが期待できます。
完成前から優良物件を購入し価格が上がりきったタイミングで売却すれば、キャピタルゲインも最大化するため、プレビルド物件は投資家にも人気の物件です。
短期間で不動産売却益を狙う人にとっては好都合な戦略ですが、先述のニュージーランドのように短期売買を理由に課税される可能性もあります。
そのため、プレビルドの立地国の税制度をよく確認したうえで購入に進みましょう。
入居者がいる状態で収益物件のまま売却する
継続的にインカムゲインを得てきた物件であれば、これまで得た家賃収入の総額と売却価格を合計した額が、その物件の購入価格を上回った時点で、投資による利益が出たことになります。
この「黒字ライン」を突破している状態にあるタイミングで売却が成功すれば、損益が発生せずに出口を取ることが可能です。
買主側の視点からしても、現在入居者がいてインカムゲインが発生している物件は収益性の高い優良物件として評価が高くなります。
収益物件というメリットを考えれば、多少売却価格が高くても購入希望者は増える要因となるため、売主にとってより好条件のオファーで売買契約を結ぶことができる可能性が高くなるのです。
特に東南アジアなどの新興国では、今後も人口増加が見込まれるため、空室ができたとしてもすぐに埋まることが期待できるため、収益物件の人気も高いエリアです。
一方で、人気エリアは投資物件が急増しやすく、供給過多による値崩れリスクが高いというデメリットもあるため、ある程度値崩れのリスクが低いタイミングで売却に出した方が、買い手が見つかりやすくなります。
長期保有で家賃収入を得る
保有する不動産の立地エリアや国によっては、早々に売却益を狙うよりも長期保有してインカムゲインを狙った方がメリットが大きい場合があります。
不動産価値が今後向上するか否かを判断するうえで重要な指標となるのは、その国の中長期的な経済成長率や人口の増加率です。
中長期的な経済成長と人口増加が見込まれる国に不動産を保有していれば、今後も高い利回りでインカムゲインを得ることが期待できます。
昨今の人気エリアとしては、東南アジアであればインドネシアやフィリピン、アフリカであればエジプトやガーナなどが、将来性がある不動産投資先として人気が高まっています。

売却する適切なタイミング
売却に適したタイミングとは、保有する不動産の売却時に得られるキャピタルゲインが最大化するタイミングのことを指します。
ここでは、売却に適したタイミングとして代表的な2つの指標について解説していきます。
運用開始から5年経過後
海外不動産を売却した際の売却益に課される譲渡所得税は、対象不動産の保有期間が「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」のどちらに該当するかによって税率が大きく異なります。
物件の所有権移転が完了した翌年の1月1日を起算日として5年以内に売却した場合は、短期譲渡所得に該当し、税率は39.63%で譲渡所得税が計算されます。
対して、保有期間が5年を超えた不動産の売却益は長期譲渡所得に該当するため、税率は20.315%と短期譲渡所得の半分の税率で計算されます。
このように保有期間5年のラインを超えるか超えないかによって大きく納税額が変わってきます。
そのため、保有期間が5年を超えて長期譲渡所得に該当するようになってから売却する方が税制上有利な方法なのです。
資産価値がなくなったタイミング
2019年に発表された税制改正により、2022年以降に行う確定申告においては、海外不動産の減価償却費が計上できなくなりました。
その結果、これまで海外不動産投資の大きなメリットとなっていた節税効果が得られなくなってしまったのです。
この税制改正を受け、減価償却期間中に最大限節税対策ができるということで人気だったアメリカの不動産投資も、今後は節税目的で保有する意味はほぼ無いと考えて良いでしょう。
海外には日本で不動産価値を評価する際に用いられる路線価制度などが無いことから、資産価値は市場価格により決定されます。
経年劣化で価値が下がり続ける物件を保有していてもメリットが減る一方となってしまうため、資産価値の低い物件は早々に売却した方が懸命な判断と言えます。
一方で、法人が所有者である海外不動産の減価償却費に関しては引き続き計上することが可能で、当該年度の法人税の納税額を減らすことができます。
注意点としては、法人の場合は減価償却費の計上が課税の繰り延べであるという点です。
単年の納税額で見れば節税効果があっても、売却時に得た売却益には、不動産の保有年数にかかわらず「一律」の税率で課税されることから、中長期的に見れば節税効果がないと感じてしまうかもしれません。
そのため、他の損失が多い時期に売却する、売却物件と同額程度の物件に買い替えて、売却益に対する課税の繰延期間を延長するなど、戦略的に納税計画を立てることも法人の節税対策においては重要なのです。

海外不動産売却時の注意点
海外不動産の売却を行う際には、いくつかの点に注意しながら諸手続きを進めていくことが大切です。
その国によって異なるビジネス感覚や習慣であったり、売却益に影響を及ぼす外的要因であったりを考慮した上で適切な対応とリスクヘッジを行うことが、売却成功という結果につながるためです。
ここでは、海外不動産売却に際し、特に注意すべき3つのポイントについて解説していきます。
プレビルド物件売却の注意点
プレビルド物件の売却においては、物件が完成する前に安く購入できるというメリットがリスクに転じる可能性があることを考慮しなければなりません。
まず一つ目は、本当に予定通り工事が完了するのかという点です。
建築業者によっては、プレビルドで得た販売代金をそのまま建築費にあてるというケースもあるため、売れ行きが芳しくない場合は工事が中断したり、延期したりする可能性があります。
そのため、プレビルド物件の購入を検討する際は、不動産会社や建築会社がどのような会社であるかを入念に調べ、その結果をふまえて購入の可否を判断した方がよいでしょう。
二つ目の注意点は、完成後の引き渡しから権利書の受領までに要する期間です。
特に新興国のプレビルド物件では、権利書の受領までに1年以上かかったというケースもまだまだ散見されます。
権利書がなければ転売手続きもできないため、いつ権利書がもらえるのかについてはしっかりと事前確認が必要です。
最後に、プレビルド物件の購入は、将来性を見込んだ青田買い的な要素が高い投資です。
そのため、マーケットの需要が今後どのように推移していくかを考慮した上で売却タイミングを見極めることが、売却を成功させるうえで重要なポイントとなることもおさえておきましょう。
為替の動向に注意する
海外不動産の売買では、円高で購入し円安で売却する方法が為替メリットを得られる最適な方法と考えられます。
海外不動産の売買における代金のやり取りの多くはその国の通貨で行われるため、適切な売却タイミングを見極めるためには、為替変動のチェックは欠かせません。
為替変動から売却タイミングを見極める際には、外貨建て取引による譲渡所得の計算ルールを考慮する必要があります。
これは所得税法で、取引発生時点での為替相場を用いて、売却価格や取得費、譲渡費用を円換算し、譲渡所得額を算出することが定められているためです。
購入時と売却時との為替レートの差が大きいほど為替差益が発生するため、売却タイミングを誤ると、為替によって本来得られたはずのキャピタルゲインが相殺されてしまう恐れもあります。
海外不動産の売却では、この譲渡所得額を為替変動に連動させながら利益を得られるタイミングを見計らうことが重要なのです。
売却力のあるエージェントを探す
不動産売却において、どれほど有能なエージェントに手続きを依頼できるかは、売却結果を左右する重要なポイントです。
なぜなら、売主が有利な条件で売却を成功させるためには、その国特有の内情や市場動向、相場の変動などの様々な現地情報を収集し分析する高い能力が必要不可欠であるためです。
また購入希望者に対しては、物件価値を理解してもらい、売主が提示する条件に承諾してもらうための高い交渉力も必要となるでしょう。
信頼に足るエージェントを見つける最も有効な方法は、知人からの紹介ですが、難しい場合は、海外不動産投資を専門に支援を行っている日本のエージェントに一度相談してみることをおすすめします。
国や地域によっては、ローカル不動産エージェントのポータルサイトを利用して探しても良いでしょう。

海外不動産売却時に関するよくある質問
初めて海外不動産の売却を行う際には、様々な疑問が生じます。
ここからは売却ビギナーが抱く疑問の中でも代表的なものをピックアップして回答していきます。
海外不動産を仲介する時に必要な資格は?
不動産がある国によって資格の要不要は異なります。
不動産仲介業を営む上での資格の要不要について、3カ国を例にあげてみましょう。
アメリカ
アメリカ版の宅建とも言える資格が「REセールスパーソンライセンス」です。
ライセンス保有者は、国内外の不動産に関する高い知識と実績を有する人材として高い評価を得ることができ、就職・転職にも有利に働きます。
中国
日本の宅建にあたる「不動産経紀人就業資格」は中国の不動産仲介業者に必要な国家資格です。
学歴に応じて、中国国内での実務経験が受験資格として必要であるため、外国人にとってはややハードルの高い資格と言えます。
シンガポール
シンガポールでは、不動産仲介業者が資格の保有を求められることはありません。
そのため、日本と比べて比較的自由なルールのうえで不動産仲介業が営まれており、不動産業者によって仲介手数料などの料金が異なります。
海外不動産の売却は税務署にバレる?
基本的にバレると思って間違い無いでしょう。
その理由としては、OECD(経済協力開発機構)が策定した国際基準「共通報告基準」(通称CRS : Common Reporting Standard )の存在があげられます。
CRSという国際基準に基づき、加盟国における非居住者の金融口座情報を各国間で自動的に情報交換できる仕組みを構築することで、近年問題視されている国際的な脱税や租税回避の防止策としたのです。
この加盟国に日本も参加しているため、他の加盟国に置かれている金融口座の情報も国税庁は自動的に取得することができます。
CRSの参加不参加にかかわらず、100万円以上の送金・着金が発生した場合、海外金融機関は日銀に調書を提出する義務が生じます。
さらに送金・着金額が3,000万円を超えると財務省への報告書提出が義務付けられています。
日本と馴染みの深いタイやカンボジア、フィリピンはCRS不参加国ですが、不参加国と日本間での送金・着金には、国税局も一層目を光らせています。
このように幾層にも渡ってチェック体制がしかれているため、不動産売却によって得た利益は正直に申告した方が懸命です。
海外で支払う税金は確定申告が必要?
海外で不動産売却をした際に得た売却益に対して、国によってはキャピタルゲイン税の納付義務が発生する場合があります。
同時に海外不動産売却によって得た利益であっても、日本居住者であれば確定申告で譲渡所得として申告する義務があります。
2カ国で納税義務が発生した場合、海外での納税額を日本での納税額から差し引くことができる、外国税額控除という制度を利用することで、二重課税を防ぐことができます。
控除申告は確定申告によって行うため、海外ですでに税金を納付していても忘れずに行いましょう。
非居住者が海外不動産を売却した場合はどこに税金を納めるべき?
日本の非住居者が海外で不動産を売却した場合、そこで得た利益を日本で確定申告する必要はないため、対象国の税制法に従ってその国に納税します。
ただし居住国の法律によっては、日本のように全世界所得課税制度を施行している国もあるため、その場合は居住国での納税義務が発生します。

まとめ
海外不動産の売却は、戦略的に行うことによって大きく資産を増やすことが可能です。
売却を成功させるためには、対象国の税制度や関連法案に加え、現地マーケットの最新情報などの情報収集が欠かせません。
キャピタルゲインが最大化するタイミングを見極めるためにも、優秀なエージェントを見つけ、二人三脚で売却戦略を練っていくことが最良策です。
最新情報へのアップデートを怠らず、有利な条件で売却が成功する出口戦略を策定していきましょう。