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海外不動産投資における税金と節税スキーム

海外不動産投資における税金と節税スキーム

海外不動産投資を活用した節税スキームにメスが入ったのをご存知でしょうか?

実は富裕層の間でこの節税スキームが広がったことが問題視され、2020年度の税制改正で是正が図られました。
節税スキームに対してどのような税制改正が行われ、今後、海外不動産についてどのように対処するべきかを知らなければ、トラブルになる可能性もあります。

そこで今回は、海外不動産投資に課税される税金とこれまで活用されてきた節税スキーム、税制改正後の海外不動産の取扱いについてご説明します。

目次

海外不動産投資で発生する税金

海外不動産投資で発生する税金は、大きく3種類に分けることができます。

  • 海外不動産を取得した際にかかる税金
  • 海外不動産の保有中にかかる税金
  • 海外不動産を売却した際にかかる税金

日本国内の不動産投資に課税される税金との違いを理解しておくことは、海外不動産投資を行う上で重要となります。
これら3種類の税金について解説します。

海外不動産を取得した際にかかる税金

日本国内に居住しながら海外不動産を取得した際にかかる税金は、日本と海外のそれぞれで課税されます。

具体的には、以下のような税金です。

  • 日本の不動産会社を通じて購入した場合の仲介手数料・コンサルフィーに課税される消費税
  • 不動産の売買契約書やローン利用時の契約書に課税される印紙税
  • 固定資産税(固定資産税を課税する国で不動産を購入した場合)

海外不動産の購入は、言語やコミュニケーション、信頼性の問題から海外現地の不動産会社よりも、海外不動産を取り扱う日本国内の不動産会社を選択する方が多いと思います。
日本国内の事業者が「役務の提供(不動産仲介・海外不動産コンサルティング)」を日本国内で行うと、その取引には消費税が課税されます。

また印紙税については、外国人による不動産投機の抑制を目的として高い税率を課す国もあります(シンガポールなど)。

なお固定資産税を課税する国で中古物件を取得した場合、取得したエリアと時期に応じて売主側と固定資産税の精算が必要となります。

一方で、日本国内の不動産取得時に課税される不動産取得税は地方税に該当するため、海外不動産取得の場合には課税されません。
ですが、国によって日本の不動産取得税に該当する税金があるので確認が必要です(カンボジアの資産譲渡税など)。

所有権移転登記を行う際に課税される登録免許税も、国内の不動産が登記対象となるので海外不動産投資では課税されません。ただし、登記制度が整備された国で不動産を取得する場合は、現地の登記費用や登記に伴う税金が課税されます。

海外不動産取得で課税される税金は、国や物件が所在する地域によって異なります。
そのため、事前にどのような税金が課税されるのかを調べておく必要があります。
なお、取得時に支払った税金はあとで経費計上できるので、領収書を忘れずに残しておきましょう。

海外不動産の保有中にかかる税金

日本に居住しながら海外不動産を保有して家賃収入を得ている場合、日本国内の所得税と住民税が課税されます。
海外不動産投資の所得は、日本国内にて事業所得とみなされるためです。

なお、海外不動産の保有中に発生した所得は、「総合課税」に分類されます。
そのため日本国内の不動産投資と同様に、給与所得などと損益通算が可能です。
これにより海外不動産投資が赤字の場合、損益通算によって節税できます。

損益通算を行うためには確定申告をして、後日還付金を受け取るかたちになります。
なお家賃収入を海外現地の銀行口座に入金したまま日本に送金しなかった場合でも、所得を確定申告する必要があるので注意して下さい。

また海外不動産の保有期間中は、ほぼどの国でも固定資産税が課税されます。
例えば固定資産税が安く海外不動産投資先として人気のハワイでは、所有形態や固定資産税評価額によって税率が変わるので注意が必要です。

海外不動産投資の場合、各年末時点での保有海外資産(預貯金・有価証券・不動産)の総額が5,000万円を超えると、毎年確定申告と同じ時期に「国外財産調書」を税務署に提出する必要があります。

日本国内に住みながら海外不動産を保有する場合、日本国内と海外現地の両方で納税することになります。
また日本だけでなく海外現地でも確定申告が必要なため、現地の税務に精通した税理士に相談するのがおすすめです。

海外不動産所得を計算する際に経費にできる費用

海外不動産投資の所得計算の際に経費として認められるのは、以下の費用です。

海外不動産投資の所得計算の際に認められる経費
  • 管理会社に支払う賃貸管理費
  • 固定資産税などの租税公課
  • 火災保険などの損害保険料
  • 物件の修繕費
  • ローンを利用した場合の支払利息
  • 建物部分の減価償却費
  • 交通費
  • 通信費
  • 新聞図書費
  • 接待交際費
  • カメラやパソコン、プリンターなどの消耗品
  • 税理士へ支払う報酬

ローンを利用して海外不動産を購入した場合の支払利息は経費計上できますが、ローン元金は経費計上できません。
なぜなら物件の購入費用は、減価償却するからです。
また建物購入のための支払利息は経費にできますが、土地の取得費用の支払利息はできないので注意してください。

部屋のリフォーム費用、古くなった設備の交換費用など、物件の維持管理や原状回復のための支払いは経費計上できます。
一方で、設備の新設や修理・改良などが物件の耐久性や価値の向上に繋がる工事については、資本的支出に該当するため費用として認められません。
これらの費用がどのタイミングで発生したのかについては、管理会社の収支レポートを見れば確認できます。

管理会社と連絡を取るための国際電話、現地購入のSIMカードやインターネット接続料などが通信費の対象となります。
ただし、全額経費計上できるかは税理士に相談することをおすすめします。

物件の購入前後の現地視察、不動産会社主催のセミナー参加、管理会社と打ち合わせのためにかかった交通費も経費計上できます。
また管理会社との飲食代は接待交際費に、セミナー参加費も経費にできますが、海外不動産投資に限定した領収書にしておくほうが無難でしょう。

海外不動産投資の収入や経費を計算する上で重要になるのが、為替レートです。
なぜならそれらの金額を計算する際、対象期間中の為替レートの平均値を用いるので為替レートから大きな影響を受けるためです。

海外不動産を売却した際にかかる税金

海外不動産の売却で売却益(譲渡所得)を得た場合、譲渡所得税(不動産譲渡税)が課税されます。

譲渡所得税とは、所得税、住民税、復興支援所得税を合算した税金の総称です。
売却益の算出で注意が必要なのは、売却益とは物件の売却価格そのものではなく、また物件の売却価格から購入額を差し引いた金額でもないということです。

売却益は、以下の計算式で算出します。

売却益の計算式

譲渡所得=不動産の売却価格-取得費-譲渡費用

取得費とは、不動産の購入代金と物件の購入に掛かった仲介手数料などの費用です。
ただし、不動産の購入代金は土地と建物に分けて、建物部分については減価償却費を差し引いた金額となります。
譲渡費用は、売却時に支払った仲介手数料などの費用です。

減価償却費は、海外不動産の保有期間が長いほど大きくなります。
そのため保有期間が長いにも関わらず購入価格に近い金額で売却できた場合、売却益が大きくなり譲渡所得税の金額も大きくなるので注意が必要です。

また譲渡所得税は、海外不動産の保有期間によって税率が変わります。
保有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率は20.315%です。
ですが保有期間が5年以内の場合、短期譲渡所得に該当して税率は39.63%にもなり、長期譲渡所得の税率の2倍近くまで跳ね上がります。

所有期間所得税住民税復興とくべ所得税合計税率
5年以下30%9%0.63%39.63%
5年超15%5%0.315%20.315%
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海外不動産の節税スキームと4つの理由

海外不動産の節税スキームによる投資対象は、主にアメリカの中古木造物件になります。
なぜアメリカの中古木造物件に投資することで節税できるのか、そのポイントは以下のとおりです。

  • 22年を超える築年数の物件を購入し、減価償却期間を4年に圧縮する
  • 4年に圧縮した減価償却期間によって、単年の減価償却費を最大化させる
  • 減価償却費を最大化させるために、建物比率が高い地域に投資する
  • 最大化させた減価償却費を、日本の税制で損益通算する

これらのポイントが成り立つ理由について、詳しく説明します。

海外は日本よりも耐用年数が長い

海外不動産の耐用年数は、日本の税制上の耐用年数よりも長いです。
日本の会計検査院の報告によると、建物が建築されてから滅失するまでの期間が日本は平均32年なのに対し、アメリカは平均66年、イギリスは平均80年と大きな差があります。
アメリカやイギリスでは、築100年超えの物件も珍しくなく、しかも物件価格も下がりにくいです。

一方、日本の木造物件の税法上の法定耐用年数は、事業用で22年、非事業用(マイホーム)で33年と定められています。
実際、日本の住宅の大半は木造なので、さきほどの「建築されてから滅失するまでの期間32年」とほぼ一致しています。

日本の住宅よりも耐用年数が長く、中古不動産の価値が下落しにくい海外不動産に対して、税務上は期間の短い日本の耐用年数が適用されます。
そのため、税額の計算結果に歪が生じるのです。

よって、日本の税法上の耐用年数を超えた海外の中古不動産に投資すれば、減価償却費を最大化できることになります。

海外は土地が安く建物が高い

アメリカは国土が広いので土地が安く、しかも中古物件を高値で売却できる市場があります。

日本でもやっとホームインスペクション(住宅診断)の認知度が広まってきましたが、アメリカや欧米ではすでにホームインスペクションの実施はスタンダードです。

立地を厳選すれば、築古の木造物件でも売却益が期待できます。
将来の高値売却が期待できるから、コストをかけてしっかりした建物を建築する文化が育まれます。
よってアメリカは土地が安く、建物価格が高いのです。

一方、日本は国土が狭いので土地価格が高く、新築住宅は買った瞬間に値下がりします。
そのため将来的な高値売却は期待できず、欧米のように中古物件市場の流通量の増加も期待できません。

この海外(アメリカ)と日本の不動産価格の違いは、建物比率を見るとよく分かります。
建物比率とは、不動産価格に対する土地と建物の価格の割合のことです。

日本の木造中古物件の建物比率は、30%程度が一般的です。
例えば建物比率が30%の不動産が2,000万円で売られているとします。
この場合、土地価格は1,400万円、建物価格が600万円、土地と建物を合わせた不動産価格が2,000万円だということです。
一方、アメリカでは建物比率が80%や90%というような物件が珍しくありません。

同じ価格の不動産があった場合、建物比率が大きい不動産の方が減価償却費を大きくできます。
海外不動産の売却益に課税される際、日本の税制が適用されます。

日本の税制では、建物は経年劣化によって価値が減っていくので減価償却しますが、土地については価値が減らないものと考えるため減価償却しません。
そのため減価償却しない土地よりも、減価償却する建物の価格割合を大きく取ることが出来れば、減価償却費を最大化して節税に繋げることができます。

建物比率の大きいアメリカの中古木造不動産は、海外不動産の節税スキームに適しているのです。

海外不動産は簡便法で計算し、日本の税制で申告する

海外不動産投資においても日本の税制が適用されるため、海外の中古物件の減価償却費の計算には簡便法が使用されます。

簡便法は、建物の減価償却費を耐用年数に応じて損金計上する方法です。
中古不動産の築年数が法定耐用年数を超えている場合、減価償却期間は以下の計算式で求めます。

減価償却期間の計算方法

築年数が法定耐用年数を経過した物件の減価償却期間 = 法定耐用年数 × 20%

よってアメリカで築30年の中古木造物件に投資した場合、日本の木造の法定耐用年数22年を経過しているので、上記の式に当てはめて減価償却期間を計算すると以下のようになります。

アメリカの中古木造物件(築30年)の減価償却期間 = 22年 × 20%= 4.4年

1年未満の端数については切り捨てとなるため減価償却期間は4年となり、最短期間になります。

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不動産所得の損失を他の所得と損益通算する

海外不動産投資で発生した損失は、給与所得などの他の所得と損益通算することができます。

発生する主な損失は、減価償却費です。
よって減価償却期間を最小化すれば減価償却費を最大化でき、その結果、確定申告で損益通算することによって節税効果を最大化できるということになります。

例えば日本で建物価格1億円の木造住宅を新築した場合、減価償却期間は22年になります。
よって1年で計上できる減価償却費は、460万円だけです。

1億円 × 0.046(1 ÷ 22年)= 460万円

ところが海外の築30年、建物価格1億円の木造中古物件であれば、わずか4年ですべて経費計上できます。

1億円×0.25(1 ÷ 4年)=2,500万円

築25年で建物価格1億円という木造中古物件は、建物比率の高い海外(アメリカ)ならではで、日本にこのような木造中古物件はまずありません。
同じ1億円の木造物件ですが、海外中古物件のほうがより多額の経費計上ができるのです。

海外不動産投資で節税スキームを利用する人は、主に富裕層が中心で多額の所得があります。

そのため海外不動産投資による減価償却費の経費計上と損益通算を利用することによって、所得税の対象となる個人所得を大幅に圧縮して節税する仕組みが、海外不動産の節税スキームの仕組みなのです。

海外不動産を活用した節税の事例(オープンハウスで投資した事例)

ここではオープンハウスという不動産会社を通じて、海外不動産(アメリカ)を活用した節税スキームの具体的シミュレーションをご紹介します。

海外不動産投資向けの物件を取り扱う国内不動産会社の数は、決して多くはありません。
また、その中には詐欺案件を取り扱うような怪しい会社も存在します。

今回、事例として取り上げるオープンハウスは東証プライムに上場しており、アメリカの投資物件の取扱いで豊富な実績を有しているので参考にすることとしました。
アメリカにおけるオープンハウスの取扱いエリアは、下記の4つです。

  • カリフォルニア州ロサンゼルス
  • テキサス州ダラス
  • ジョージア州アトランタ
  • ハワイ

ホームページに下記の物件が紹介されていたので、一番右端のジョージアの木造中古物件でシミュレーションをしたいと思います。

アメリカ海外不動産投資節税シミュレーション

参考:https://wm.openhouse-group.com/

物件購入価格30万ドル(1ドル146円換算で4,380万円)
建物比率80%(土地価格 対 建物価格 = 2 対 8)
築年数42年
構造木造
投資家の課税される所得金額2,000万円

上記物件は築42年と日本の木造住宅の法定耐用年数22年を超えているので、減価償却期間は4年となります。

課税所得所得税率所得税
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
(図1)個人の所得税率

課税所得が2,000万円の場合、図1を見ると所得税は40%が課税されます。
よって海外不動産による節税スキームを用いない場合、所得税、住民税、復興特別所得税は以下のとおりとなります。

所得税 = 課税所得2,000万円 × 40% - 所得税の控除279.6万円 = 520.4万円
住民税 = 課税所得2,000万円 × 10% = 200万円
復興税 = 所得税額520.4万円 x 2.1% = 10.9万円

合計731.3万円(千円未満切り捨て、以下同)

次に海外不動産投資によって節税スキームを活用した場合の税額を見てみましょう。

この不動産の建物価格は、4,380万円×80%=3,500万円です。
損益通算する単年の減価償却費は、3,500万円÷4年=875万円です。
よって確定申告時の課税所得は、2,000万円-875万円=1,125万円まで圧縮されます。

この結果、図1の所得税率を確認すると、節税スキームを使ったことによって所得税率が40%から33%に下がりました。
税率が下がった後の各税額は、以下のように変化します。

所得税=課税所得1,125万円×33%-所得税の控除153.6万円=217.7万円
住民税=課税所得1,125万円×10%=112.5万円
復興税=217.7万円×2.1%=4.6万円

合計334.8万円

よって保有期間4年間は、損益通算によって毎年396.5万円(=731.3万円-334.8万円)節税できます。
4年間の損益通算による節税額の合計は、396.5万円×4年=1,586万円

この物件を譲渡所得税の税率が長期譲渡になって減税される6年後に、購入時と同額で売却でき、購入時諸費用438万円(購入価格の10%)、売却時諸費用438万円(売却価格の10%)だったとします。

売却益=売却価格4,380万円-取得費-売却時諸費用438万円
取得費=土地購入費用4,380万円×20%(建物比率80%)+購入時諸費用438万円
   =1314万円
売却益=2,628万円
長期譲渡所得税=2,628万円×20.315%=533.9万円

よって4年間の損益通算による節税額から売却時の譲渡所得税を差し引いた6年間トータルの節税額は、以下のとおりです。

4年間の損益通算による節税額1,586万円-売却時の譲渡所得税533.9万円=1052.1万円

よって海外不動産の節税スキームによる6年間のトータル節税額は、1052.1万円となります。

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日本で同じ物件に投資した場合

日本で同じ築42年、4,380万円の中古木造物件に投資した場合のシミュレーションをしてみましょう。
日本の場合、築42年の木造住宅となると、建物価値は0円査定です。
ですがシミュレーションのために、ここでは便宜的に建物比率10%として計算します。

不動産の建物価格は、4,380万円×10%=438万円です。
損益通算する単年の減価償却費は、438万円÷4年=109.5万円です。
よって確定申告時の課税所得は、2,000万円-109.5万円=1890.5万円となります。

図1の所得税率を確認すると、所得税率は40%のままです。
損益通算後の各税額は、以下のように変化します。

所得税=課税所得1890.5万円×40%-所得税の控除279.6万円=476.6万円
住民税=課税所得1890.5万円×10%=189万円
復興税=476.6万円×2.1%=10万円

合計675.6万円

よって損益通算による保有期間4年間の毎年の節税額は396.5万円から55.7万円(=731.3万円-675.6万円)まで減少しました。
4年間の節税額の合計は、55.7万円×4年=222.8万円

この物件を譲渡所得税の税率が長期譲渡になって減税される6年後に、購入時と同額で売却できたとします。

売却益=売却価格4,380万円-取得費-売却時諸費用438万円
取得費=土地購入費用4,380万円×90%(建物比率10%)+購入時諸費用438万円
   =4380万円
売却益=-438万円
長期譲渡所得税=0万円

よって6年間トータルの節税額は、以下のとおりです。

4年間の損益通算による節税額222.8万円-売却時の譲渡所得税0万円=222.8万円
6年間のトータル節税額は222.8万円となり、節税スキームを使った場合の1052.1万円と比べて大幅減額となりました。

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個人の海外不動産への投資で節税が規制された税制改正とは?

ここまで海外不動産の節税スキームの仕組みについて解説してきました。
この節税スキームが日本の富裕層の間で広がりを見せたことから、税制改正によって節税封じ込め策が講じられました。
海外不動産の節税スキームがどのように規制されたのかに加えて、見落とされがちな従来からある不動産投資に対する節税封じ込め策についても解説します。

「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」で損益通算不可能に

これまで説明してきた海外不動産投資を活用した節税スキームが広まった背景を受け、2020年度に税制改正がおこなわれました。

この改正では、「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」が設けられ、それまで可能だった海外不動産の減価償却費を個人の所得と損益通算することが、2022年の確定申告からは認められなくなりました。
よってこの税制改正により、海外不動産の節税スキームは節税効果をほとんど失うことになりました。

なおこの税制改正の適用は、2021年以降に購入した海外不動産だけではありません。
2021年以前に購入した海外不動産についても適用されることに注意してください。

土地取得資金の利子も損益通算不可能に

税制改正による海外不動産の節税スキーム封じの影に隠れて、見落とされがちな不動産投資の節税封じ策があります。
それは、土地購入のための借入金利息については、給与所得などと損益通算ができないことです。

つまり不動産購入の際に融資を利用した場合、銀行に支払う金利のうち、建物購入の借入れ分の金利は損益通算できますが、土地購入の借入れ分の金利は損益通算できないということです。
そもそも金利は費用計上できるものと思っておられる方が多いため、土地購入分の金利も費用計上できるものだと誤解されがちなので注意が必要です。

なおこの節税封じ策は、海外不動産投資のみならず、国内の不動産投資においても適用されます。
土地が安くて建物価格が高い海外不動産(アメリカ)よりも、土地が高くて建物が安い日本の不動産投資を行った際に、より影響が大きい節税封じとなります。

税制改正以降の海外不動産投資の節税メリット

さきほど説明した税制改正による海外不動産の節税スキームの規制により、今まで損益通算できていた減価償却費の取扱いはどうなるのか?

土地取得資金の利子のように、経費計上できないものとされるのか疑問に思ったかたもいるでしょう。
また個人所得に対して海外不動産の損益通算が不可能となったのであれば、法人ではどうなのか。
これらの疑問についてお答えします。

減価償却費は売却時の取得費に算入できる

税制改正によって損益通算できなくなった海外不動産投資の減価償却費は、売却時の取得費に算入できることとなりました。

例えば2019年に築25年、建物価格2,000万円(土地価格を含む総額2,500万円)の海外不動産を購入し、長期譲渡になる6年後の2024年に購入時と同額の2,500万円で売却できたとします。

単年の減価償却費は、建物価格2,000万円 ÷ 4年 = 500万円です。

2019年と2020年の減価償却費については、税制改正が適用されないので損益通算できます。
ですが、2021年と2022年の減価償却費は、税制改正が適用されるので損益通算できません。
この損益通算できない2021年と2022年の減価償却費は、税制改正によって売却時の取得費に参入することができるようになったのです。

購入時の諸費用100万円、売却時の諸費用100万円だった場合、売却益(課税譲渡所得)は以下の計算式で求めることができます。

取得費 = 土地購入費用500万円 + 購入時諸費用100万円+ 2021年・2022年の減価償却費1,000万円
    = 1,600万円

売却益 = 売却価格2,500万円 - 取得費1,600万円 - 売却時諸費用100万円
    = 800万円

このように税制改正適用後は損益通算の恩恵は受けられないものの、売却時に取得費に組み込んで売却益を圧縮することができるので、譲渡所得税を節税することができます。

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法人は引き続き海外不動産投資で節税可能

税制改正による海外不動産の節税スキームの封じ込めは個人所得に対してのものなので、法人は引き続き海外不動産投資で節税が可能です。
ただし法人の場合は、個人の場合のように不動産売却益が分離課税となるわけではないので、長期譲渡所得のような減税制度は無く、不動産の売却益も他の事業で生じた利益も税率は同じです。

ですが法人が不動産の買い換えを行った場合、一定要件を満たすことで売却益に課税される法人税を最長10年間繰り延べることができます。
そのため海外不動産投資で生じた減価償却費を、課税の繰り延べ期間中に複利運用することで利益を生むことができます。

また課税の繰り延べによって、本業の損失と合算する、あるいは経費がかさんだ年に海外不動産の売却時期を重ね合わせることで、戦略的に税率を抑えたり納税するタイミングをコントロールしたりすることができます。

各年度の事業計画による利益や損失、経費が膨らむタイミングをしっかり把握できている法人にとっては、海外不動産投資は有効な節税スキームとなるでしょう。

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税制改正後の海外不動産への対処法

ここでは税制改正によって節税スキームを封じられた海外不動産投資について、今後はどのように対処していくのがよいかを考察します。
税制改正後の海外不動産投資は、以下の3つの戦略が考えられます。

  • 売却によるキャピタルゲイン
  • 家賃収入によるインカムゲイン
  • 海外不動産同士の損益通算

順に解説していきます。

円安メリットを活かして売却する

税制改正後、個人が海外不動産を有効活用する方法として、売却が挙げられるでしょう。
日本の中古不動産と違い、海外の中古不動産は値下がりしにくく、立地や市況次第では値上がりも期待できます。

また税制改正によって減価償却費を損益通算することはできなくなったものの、売却時の取得費に含めることで売却益(課税譲渡所得)を圧縮することは認められています。
よって、売却時の譲渡所得税を節税することが可能です。

そのため、今後は出口戦略を重視した海外不動産投資が主流となっていくでしょう。
今後の為替動向を見ても、長期的に円安傾向が続く可能性が高いという意見もあり、売却によって円安メリットを享受するのも良いでしょう。

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引き続き家賃収入を得る

売却による出口戦略を重視した不動産投資と並んで、海外不動産を保有し続けることで得られる家賃収入(インカムゲイン)が重視されることになるでしょう。

日本では築20年を超えるような築古物件となると、なかなか借り手がつかないこともありますが、建築時と修繕時にコストをかけて物件価値を維持し続ける海外の中古不動産は、築古でも借り手がつきます。

そのため日本のように築古物件は家賃を下げなければ借り手がつかないということもなく、長期に渡って安定した家賃収入を得ることが期待できます。

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海外の不動産を購入して海外で損益通算する

海外不動産を複数所有して、海外の確定申告で損益通算する方法もあります。
税制改正によって損益通算が規制されたのは、海外不動産の減価償却費と日本国内の個人所得に対してです。
複数の海外不動産を購入し、海外不動産同士の所得と損失を損益通算することは認められています。

また同じ国で海外不動産を複数所有することで、現地の税制で損益通算するという方法もあります。
さらに海外現地で不動産投資を拡大していくのであれば、法人化して金融機関の融資を利用して、海外不動産投資を行うのも有効な手段の1つでしょう。

ローンを利用して所有物件の規模を拡大していけば、現地の金融機関からの信用が積み上がり、長期的な不動産投資をさらに行いやすくなるでしょう。

海外の不動産投資にかかる税金で知っておきたいポイント

ここでは海外不動産投資を行う上で、税制上の注意点を2つご紹介します。
税制上の注意点としては、主に2つです。

  • 国内と海外の二重課税対策
  • 海外不動産に対する相続税・贈与税の取扱いについて

これらについて知らなければ損をする可能性もあるので、ここでポイントをしっかり押さえておきましょう。

外国税額控除制度で二重課税を防止できる

海外不動産投資では、投資対象国によって現地で所得税を課税されることもあります。
つまり日本で所得税が課税されながら、海外現地でも所得税が課税されるという二重課税状態が発生するケースがあるのです。
そのため海外不動産投資による二重課税への救済措置として、「居住者に掛かる外国税額控除」という制度を利用することができます。

また投資対象国によっては、日本と個別に「租税条約」を結んでいる国もあります。
アメリカ、イギリス、中国のほか世界56ヵ国の国々が、日本と租税条約を締結しています。

二国間で締結した租税条約は、二重課税や脱税を回避するための条約です。
「居住者に掛かる外国税額控除」や「租税条約」によって完全に二重課税が回避できるというわけではありませんが、用意された救済制度は積極的に活用すべきです。

海外不動産も相続税や贈与税は課税される

日本人が所有する海外不動産を日本人が相続する場合、日本の相続税が課税されます。
また相続税対策の一環として現預金を日本国内の不動産に代えることは、海外不動産の場合には通用しないので注意してください。

そもそも現預金を日本の不動産に代えるのが相続税対策になるのは、時価よりも安い相続税路線価を基にして相続税評価額が決まるからです。

ですが海外不動産の場合、相続税路線価がありません。
そのため、時価によって相続税評価額が決まります。
よって現預金を海外不動産に代えても、相続税対策にはならないことに注意してください。

また海外不動産を贈与した場合、贈与される側の人が日本国内に住んでいれば贈与税が課税されます。
贈与税は財産を贈与された人が納税する税金です。
課税対象となる贈与財産は、国内財産だけでなく海外財産も対象となります。
そのため相続税対策のために海外不動産を生前贈与しても、節税効果は無いので注意してください。

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まとめ

今回は海外不動産投資に課税される税金と、これまで活用されてきた節税スキーム、税制改正後の海外不動産の取扱いについてご説明しました。

2020年度の税制改正によって、個人の給与所得などと海外不動産の減価償却費を損益通算できなくなり、それまで行われていた節税スキームは効果を失うことになりました。
ですが損益通算できなくなった減価償却費は、売却時の課税譲渡所得から差し引いて節税することは可能です。
また法人による海外不動産投資の節税スキームも有効です。

今後は減価償却費の損益通算という節税スキームから、キャピタルゲイン、インカムゲインを重視した投資手法、海外不動産同士の損益通算、現地金融機関のローンを利用した海外不動産投資の規模拡大などが、主流となっていくのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

三井邦弘のアバター 三井邦弘 ブログ編集長

日本生まれの韓国人。本名は、HONG SUGYUN。関西大学卒業後、ソウルでガイド事業開始。2010年EC運営会社設立。2013年製菓製造販売業開始。2016年和食レストラン開始。2018年ウェブマーケティング会社設立。2019年Token NewsのKorea Managerを担う。現在、アジアとアフリカへ投資(企業、不動産、ETF)実行中。

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