古くから日本との間に親密な関係を築き上げてきたタイは、不動産投資先としても1980年代から現在に至るまで、高い人気を博しています。
本記事では、様々な物件の選択肢が存在する海外不動産投資の人気国、タイの物件の中でも、コンドミニアム投資に焦点を当て、タイのおすすめポイントや日本との違いについて解説していきます。
購入・運用・売却時に発生する各種税金に加え、契約時の注意点など、アジア圏での海外不動産投資を検討する際におさえておくべきポイントについても解説しているため、投資先の国を選ぶ際の比較・検討材料として参考にしてみてください。
タイの情勢
古くから日本との間に友好な関係を築き、世界有数の観光立国というイメージが強いタイですが、不動産投資を行うにあたっては、改めてタイという国がどのような国であるかを確認しておく必要があります。
ここからは、改めてタイという国の基本情報を解説していきます。
人口と年層の区分
世界銀行の発表によると、調査開始の1960年代からタイの人口は順調に増加を続け、2021年時点での総人口は7,160万人と、過去最高水準にまで達しています。
一方で、人口の増加率はピーク時の1961年より下降を続け、現在は約0.25%と、同エリア内のフィリピン(1.5%)、マレーシア(1.1%)、インドネシア(0.7%)を下回る状態となっています。
扱う言語と情報収集のしやすさ
タイでの不動産投資を行う際、諸々の手続きは基本的にタイ語で行われます。
不動産会社とのやり取りや契約書においても、英語ではなくタイ語が使われることがほとんどであるため、タイ語が理解できるか否かは、タイでの不動産投資の成功を左右する、大変重要なポイントとなります。
また、現地不動産の情報収集においても、インターネットを用いれば、日本語や英語で多くの情報を得ることが可能ですが、信頼性の高い現地情報を見抜くという点では、タイ語を扱えた方が有利です。
現地の不動産会社や仲介業者のなかには、中国語や英語を扱える業者も存在しますが、やはり全くタイ語のスキルを持たない人が、現地の不動産情報を収集することは、ハードルが高いと言えるでしょう。
通貨と平均的な為替レート
タイでの不動産投資においては、タイバーツ(THB、通称「バーツ」)というタイの通貨を使用します。
1タイバーツを日本円に換算すると、おおよそ3.6〜4.0円の間で推移しています。
ただし、タイバーツは、円や米ドルに比べて価格の変動が激しいため、購入や売却のタイミングを決定するには慎重さが求められます。
加えて、タイバーツが下落すると、タイの不動産価値も低下するという動きにつながるリスクがあることから、不動産投資においては、為替の変動へのリスクヘッジが不可欠です。

日本とタイの不動産の違い
海外不動産投資において、多くの外国人投資家に選ばれているタイ。
日本企業の進出や在留邦人数も多いことから、比較的親近感を持って投資先に選ぼうと検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、タイでの不動産投資においては、日本の不動産市場とは異なる点が多く存在し、投資を成功させるポイントも異なります。
ここからは、タイでの不動産投資を成功させるために知っておくべき7つのポイントについて、解説していきます。
投資の基本はコンドミニアムに絞られる
タイでの不動産投資における対象物件は、基本的にコンドミニアムです。
ハワイなどのリゾート地に多い物件タイプというイメージがあるコンドミニアムですが、元々ホテル業界では、「キッチンや洗濯機などの生活に必要な設備や家電が備えられた宿泊施設」を指すうえで使われていた用語です。
その流れから、現在では「賃貸型リゾートマンション」という意味で使われることが多く、物件所有者であるオーナーの不在時には、旅行客などに賃貸しする形で利用してもらい、オーナーがその分の家賃収入を得るという運用パターンが広く浸透しています。
物件オーナーにとっては、不在期間中の別荘を活用してインカムゲインを得ることができることから、不動産投資物件としても人気が高く、世界中のリゾート地を中心に国外からの投資マネーが流入しやすくなっています。
そのような背景により、海外の不動産投資家の間で、タイのコンドミニアムの人気が急速に高まったことから、1981年に、外国人の不動産投資に関するルールを定めた「コンドミニアム法」が誕生します。
タイ政府は、外国人による国内不動産の購入・所有をコントロールするため、所有可能な物件タイプを人気の高いコンドミニアムに限定し、その所有権や管理に関するルールを「コンドミニアム法」にて定めました。
当法により、タイでは基本的に、外国人が一般的な住宅用の土地の所有権を取得することはができず、外国人は、原則として、土地面積が30㎡以下のコンドミニアムしか所有できなくなり、その状態のまま現在に至っているのです。
タイは不動産売買で発生する税金が安い
海外不動産投資において、長らくタイが人気国であった理由の一つとして、不動産売買時に発生する税金の安さがあげられます。
日本と比較して、費用が安価とされるものとしては、登記費用や印紙税があげられます。
また、売買取引に際し、個人間取引であれば消費税も発生しないことなど、日本よりも格段安い費用で不動産投資にかかる諸手続きを済ませることが可能です。
各税金の詳細については、本記事後半で詳しく解説していますので、参考にしてください。

駅周辺での住宅需要が増加中
2010年にタイ政府が策定した「バンコク首都圏都市鉄道マスタープラン(M-MAP)」に基づく、首都圏鉄道網の大規模拡張工事により、新駅が建設されているエリアでは、住宅需要が高まりを見せています。
新駅建設により、通勤・通学の利便性向上が見込まれることから、ファミリー向け物件だけでなく、単身者向けの賃貸物件への需要も高まることが予想されます。
現地の不動産会社からのサポートが限られる
タイで不動産投資に際して現地の不動産会社を利用する場合、サポート体制は日本の不動産会社ほど整備されていないことがほとんどです。
タイを含む東南アジアの新興国では、不動産価格値上がりの可能性に対し、海外の大手デベロッパーや不動産仲介業者が多く参入しており、対外国人投資家を想定したサービスを提供している業者がたくさんあります。
しかしその一方で、現地の中小規模の不動産会社の多くは、外国人による不動産投資案件の取り扱い実績やノウハウが乏しいため、現地の不動産会社を利用する場合は、基本的に全ての手続きや確認を自分で行う必要があるでしょう。
不動産業界のネットワークは日本の方が発達している
不動産市場の情報ネットワークという観点から見ると、タイに比べて整備が進んでいる日本の方が、不動産投資に関する様々な情報を容易に手に入れることができます。
業界内でインターネットを利用した情報発信が定着している日本においては、物件情報や投資関連情報がスピーディーに拡散され、エンドユーザーまで届く基盤が整っています。
その一方タイでは、不動産取り扱い業者に免許が不要であることや、不動産の個人間取引が盛んである風潮から、国内の業界ネットワークの整備が追いついておらず、やや情報が錯綜状態にあるケースが散見されます。

外国人はタイの土地を購入することができない
タイでは、外国人による不動産投資が規制されており、その規制内容の一つとして、土地の購入ができないことがあげられます。
これは、先述のコンドミニアム法によるもので、基本的に外国人がタイの土地の所有権を取得することができないというものに基づきます。
ただし、近年の外国人投資家からの需要の高まりに応じる形で、一定条件を満たした場合に限り、外国人による土地の購入・所有を認める法案を、2022年10月にタイ内閣で承認する動きもあり、全く土地を購入する方法がないという訳ではありません。
1,000万円強で高級マンションが購入できる
先述の通り、タイではバンコク近郊の鉄道・地下鉄網の拡充計画により、新駅エリアの開発が進んでいることから、1000万円台で新築のコンドミニアムが続々と建設されています。
これらのコンドミニアムのほとんどは、プールやフィットネスジムが付いた、セキュリティも万全な物件で、中には商業施設やオフィス棟などが併設された複合施設の一部となっている物件も多数見受けられます。
東京都心の同レベルの物件と比較しても非常に安価で、尚且つ今後の資産価値の上昇が期待できることから、人気の高いタイプの投資物件です。

タイ不動産のおすすめポイント
タイの不動産市場は、日本に比べてまだまだ未整備な点がある一方で、今後の高い将来性が期待できる点も数多く存在します。
ここからは、不動産投資先としてのタイのおすすめポイントを5つ紹介していきます。
インフラの整備が急速に進み住みやすい都市が増えている
先述のバンコクを中心とした鉄道網の拡充計画「M-MAP」により、バンコク近郊都市でも交通・生活インフラの整備が進められており、住宅エリアとしても利便性の高いエリアが続々と誕生しています。
インフラの整備状況は、その土地の価格を評価するうえでの重要な評価基準となるため、開発が進むニュータウンは、投資対象としても優良なエリアなのです。
経済成長によって不動産価格の値上がりが発生している
タイ銀行による統計データでは、タイの不動産価格は、過去10年間継続して上昇しており、まだまだ経済が成長過程にあることを示しています。

【タイ銀行公表データを元にオリジナル作成 ※2009年1月時点の価格=100】
タイ経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一時は成長が鈍化したものの、2021年以降は回復傾向にあり、今後も上昇傾向が続く見込みです。
加えて、国内不動産市場は、コロナ禍を経て、外国駐在員や富裕層向けの高級物件よりも、300万バーツ(約1,140万円)を下回る低価格帯の物件が人気となっています。
今後も低価格帯物件への需要増が見込まれることから、投資物件として、後々大きなキャピタルゲインを得ることが期待できるでしょう。
東南アジアのハブ拠点となり人の出入りが激しい
タイは、もともと「アジアのデトロイト」と呼ばれるほど、各国の製造業の拠点が集中しており、日本企業の進出先としても、中国に次いで多くの日本企業が進出しています。
タイ政府による投資促進政策が功を奏し、インテル(アメリカ)やサムスン電子(韓国)、メルセデス・ベンツ(ドイツ)など、各国の大手製造メーカーが、タイに東南アジアマーケットのハブ拠点を構え、人や物の往来が活発に行われています。
このような人の流れが活発な地域では不動産の需要も高いことから、インカムゲイン・キャピタルゲインともに、大きく狙える地域です。
比較的現地に足を運びやすい
海外不動産投資において現地視察は、現地の雰囲気や物件の状態、不動産会社の経営状況など、様々な点を確認するために非常に重要なポイントです。
そのため、現地に足を運ぶことができないような地域での不動産投資は、トラブルに巻き込まれたり、投資が失敗するリスクが高くなっています。
この現地へのアクセスという点において、タイは、東京・バンコク間の所要時間が直行便で6時間半程度と、比較的アクセスしやすい地域です。
こまめに現地へ通うことができるという点は、タイでの不動産投資において、大きなメリットがあると評価できます。
タイでキャピタルゲインを狙えるラストチャンスが到来中
高い経済成長率と人口増加、所得水準の向上が期待されるタイでの不動産投資でキャピタルゲインを狙うためには、ラストチャンスとも言えるタイミングが到来しています。
その理由としては、以下の2点があげられます。
- 賃貸物件の需要急増に対して、供給が追いついていない
- 建設・開発にかかるコストの世界的高騰を受け、建設・開発費用の上昇分が今後は価格に反映されるため、物件価格の上昇が必須
タイでは、交通インフラの拡充や海外企業の誘致を積極的に進めていることから、建設ラッシュの継続は確実です。
そのため、建設・開発費用の高騰が価格に転化される前に物件を購入しておくことで、市場価格が高騰した際に、大きなキャピタルゲインを狙うことができるでしょう。

タイの不動産投資でかかる税金
外国人による不動産投資に対して、比較的緩やかな税制度であったことが、タイが人気の不動産投資国となった背景にはあります。
しかし近年は、海外からの不動産購入に関して、様々な税制改正や新設が行われているため、投資の際は、最新の税制を確認しておくことが必要です。
ここからは、不動産の購入・運用・売却の3つのタイミングに分けて、それぞれで発生する税金について解説していきます。
不動産購入時に発生する税金
タイでの不動産購入時にかかる税金は、以下の通りです。
税金 | 金額 |
---|---|
移転登記費 | 物件評価額の2% |
印紙税 | 物件評価額、または購入価格のうち、高い方の価格の0.5% |
消費税 | 0% ※個人間取引の場合 |
海外不動産の購入に際しては、日本で消費税を支払う必要はない一方で、購入先の国で消費税に相当する税制度がある場合は、それに準じて税金を納める必要が出てきます。
タイの場合、不動産を購入した相手が法人であれば、7%の付加価値税(VAT)が課税されます。
基本的に不動産の個人間取引が多いタイですが、物件のオーナーとの個人契約だと思っていても、実はそのオーナーが法人化しているケースも珍しくはないため、事前にしっかり確認しなければ、VATの支払いが発生するため注意が必要です。
賃貸運用時に発生する税金
タイでの不動産運用時に発生する税金は、以下の通りです。
税金 | 金額 |
---|---|
固定資産税(土地家屋税) | 累進課税(0.02%〜0.1%) |
所得税 | 累進課税(0%〜35%) |
長らく固定資産税がかからずに不動産を所有することができていたタイですが、2020年に施行された新土地家屋法により、毎年1月1日時点での不動産評価額に対して、「土地家屋税」が課税されるようになりました。
土地家屋税は、日本の固定資産税のように一定税率ではなく、不動産評価額に対する累進課税方式で計算されます。
不動産評価額が5,000万バーツ(約1億9,000万円)以下の場合は、税率は一律の0.02%であるため、ほとんどの投資用コンドミニアムにかかる税率は、0.02%と考えておけばよいでしょう。
また、インカムゲインにかかってくる個人所得税については、タイ居住者・非居住者ともに課税対象となり、累進課税方式による最大税率は35%となっています。
不動産売却時に発生する税金
タイでの不動産売却時にかかる税金は、下記の通りです。
税金 | 金額 |
---|---|
源泉徴収税 | 物件評価額、または売却価格のうち、高い方の価格に対し発生 所有期間、売却金額により税率は変動(5%〜35%) |
特別事業税 | 物件評価額、または売却価格のうち、高い方の価格の3.3%% ※所有期間が5年以内の場合のみ |
印紙税 | 物件評価額、または売却価格のうち、高い方の価格の0.5% ※所有期間が5年以上の場合のみ |
タイでの不動産売却時に発生する源泉徴収税は、売却益に対して課税されるのではなく、売却金額に対して税金を計算するため、キャピタルゲイン税ではなく、源泉徴収税にあたります。
また、所有期間が5年以下で売却する場合のみ、特別事業税という税金が課税されるため、売却タイミングは慎重に検討することをおすすめします。


タイの不動産投資でおすすめの地域
タイで不動産投資を行う場合、これまでに述べたような、インフラ整備や開発が進むエリア、または、海外企業の進出などにより高い不動産需要が期待できるエリアを選ぶことがポイントです。
ここからは、タイの中でも不動産投資におすすめの地域を3つ紹介していきますので、物件選定の参考にしてください。
バンコク
政治・経済・文化の中心地であり、世界有数の観光都市でもある首都バンコクは、人や物の往来が活発な東南アジアのハブ都市です。
2029年完成を目処に進められている交通インフラの整備事業により、バンコクを中心とした近郊エリアの開発も進められており、注目の不動産投資先として高い人気を維持しています。
日本人居住区として知られる「スクンビット地区」や、富裕層や欧米の投資家に人気な高級エリア「ラチャダムリ地区」、都心への利便性の高さと手頃な価格帯で単身者の間で人気が高まっている「プラカノン地区」など、エリアごとに需要の高い物件タイプが異なります。
パタヤ
パタヤは、タイ南部のタイランド湾に面した、タイ随一のリゾート観光地です。
1960年代に米軍の保養地としてホテルやレストランが次々と建設されたことをきっかけにリゾート地として発展を続け、現在は欧米人を中心に、マリンスポーツを楽しむ観光客や長期休暇を楽しむ富裕層に人気の街へと進化しています。
1㎡あたりの不動産価格を比較しても、パタヤは、バンコクの3分の1程度の価格であるため、手頃な価格で、外国人観光客や富裕層向けのリゾートコンドミニアムに投資することが可能です。
シラチャ
シラチャは、首都バンコクから車で1時間半程度の距離に位置する、国内最大の工業団地集積地です。
タイ最大の貿易港であるレムチャバン港が開港した1991年以降、次々と日本企業の製造拠点が開設され、トヨタ自動車やソニー、ブリヂストンなど、シラチャに拠点を構える日系企業数は700社に上ります。
駐在員向けの長期滞在型ホテルや住宅に加え、パタヤにもアクセスが良いことから、観光客向けのコンドミニアムの需要も高く、日本人をターゲットにした不動産投資先としても人気が高いエリアです。

タイ不動産投資でよくある失敗例
タイの経済状況や将来性、不動産市場の特徴など、不動産投資でおさえておくべき基本を理解していても、いざ不動産購入の手続きや運用を始めると、投資が失敗に終わる事態に遭遇することは珍しくありません。
ここからは、タイにおける不動産投資で、よく見受けられる失敗について、3つの事例をあげながら解説していきます。
内装が地味で物件の借り手が見つからなかった
タイでは、賃貸物件であっても内装デザインにとても力を入れる風潮があるため、日本的な簡素で必要最低限の内装では、借り手がつかず、売却時にも苦戦してしまいます。
基本的にタイの賃貸物件は、家具・家電付きの状態で貸し出すため、物件オーナーは、見栄えの良い家具・家電を揃えるだけでなく、壁や床、照明に至るまで魅力的なデコレーションを施す必要があります。
賃貸コンドミニアム専門の内装業者も存在するほど、デザイナーに一任してトータルコーディネートしてもらうことが一般的であるため、日本の家具・家電付き物件のような感覚で貸し出すと見劣りしてしまい、借り手つかない状態に陥るので注意が必要です。
家賃を高く設定しすぎて空室が続いてしまった
魅力的な内装にすることの重要性は先述の通りですが、内装にかかったコストを賃料に上乗せした結果、周辺の相場から大きくはずれることになり、借り手が見つからないという事態は珍しくありません。
一言にコンドミニアムの内装といっても、立地エリアや入居者ターゲット層、販売価格や間取りによって、内装のグレードも合わせていかなければ、内装工事に無尽蔵にコストがかかってしまいます。
内装は、あくまで入居者獲得のために必要な、最低限のプロセスです。
そのため、周辺物件や類似物件の家賃相場内に賃料を抑えながらも、入居者ターゲットや物件のグレードに適した内容とコストで、最大限魅力的な物件に仕立てることが、空室リスクを最小化するために重要なポイントなのです。
実績の見えない業者に一任してしまい活動状況が見えなかった
タイでの不動産購入・売却時に、不動産仲介業者に仲介を依頼しようとする場合、タイには日本のような専任媒介という仕組みがありません。
加えて、タイの不動産売買を取り扱う業者は、日本の宅建にあたる資格の取得義務がないため、提供するサービスの内容や品質が、業者によって異なります。
そのため、一連の手続きを一つの業者に一任したものの、業者の活動内容が不透明なまま、希望通りに取引を進めることができないというケースに陥ることがあります。
日本での一般媒介同様に、タイでの不動産仲介業者選びの際には、複数の業者に相談し、それぞれを比較しながら、慎重に手続きを進めていくようにしましょう。

タイへの不動産投資における注意点
不動産業界の仕組みや慣習が異なるタイで不動産投資を行う際には、現地のルールや今後の展望をしっかりと理解しておく必要があります。
ここからは、タイでの不動産投資において注意すべき点を7つ解説していきます。
現地に拠点を持つ日本の不動産会社に相談する
先述の通り、タイの不動産業者は日本の業者と比較した際、提供しているサービスの内容や品質が劣るケースが少なくありません。
そのため、よほど現地の不動産業界に精通している場合を除いては、まずは、タイに拠点を構える日本の不動産会社に相談することをおすすめします。
業者選定の際には、拠点の有無だけでなく、タイ国内での取り扱い実績はもちろん、タイのデベロッパーや不動産業者との連携体制も確認し、会社運営が安定しており、信頼に足るかどうかを見極めることが大切です。

人気エリアでは新築物件の供給過多が懸念される
タイ国内は、首都バンコクを筆頭に、近郊エリアやリゾートエリアでの建設・開発ラッシュが進んでいますが、いずれ供給過多に達し、不動産価格が一気に下落するリスクがあるという点には注意が必要です。
加えて、タイでは、海外からの人の出入りは活発さを増している一方で、タイ国内の人口増加は鈍化していることから、エリアや物件タイプによっては、タイ人による需要が今後減少に傾く可能性も考慮しておいた方がよいでしょう。
コンドミニアムを購入するときは「資金源証明」を用意する
タイでは、外国人投資促進法という法律に基づき、外国人投資家が不動産を購入する際は、投資家に対し資金源証明書の提出を義務付けています。
タイでの不動産投資では、タイ銀行に口座を開設し、そこに外貨を預け入れ、その資金を不動産購入や投資に充てることが一般的で、その資金源の適法性を証明するために、資金源証明書の提出が必要となるのです。
代表的な資金源証明書には、当該不動産の購入価格以上の外貨を海外口座からタイの口座へ移動した際に取得できる「外貨送金証明書」や、外貨預金口座の「残高証明書」があげられます。
また翻訳は必要となるものの、日本での課税証明書や証券会社が発行する年間取引報告書も、資金源の証明には有効となります。
ローンを組むと金利が高いので注意
タイでの不動産購入費用に充てるため、現地銀行でローンを組むことは不可能ではないものの、あまりメリットがあるとは言えません。
まず、タイ国内で外国人向けの住宅ローンを提供している金融機関は限られており、審査通過のハードルは高いのが実状です。
加えて、融資条件も金利も、タイ人に比べると厳しく設定されるため、基本的にはローンは利用しない方向で資金計画を立てた方が懸命です。

現地住民の名義を借りるのはNG
タイでは、タイ国籍以外の人が土地を所有することに対し、厳しい規制を設けていることから、安易に現地住民の名義で購入しようと考えているとしたら、改めなければなりません。
タイ人の名義を借りて、所有権移転登記を行うなどの名義の貸し借りは土地法にて禁止されており、発覚した場合、名義を貸した人、借りた人の双方に対し、罰金または懲役の罰則を設けています。
また、虚偽記載、虚偽申告の罪にも問われるため、さらなる罰金や懲役を課されることになるため、安易に名義の借り貸しを行うことは絶対にやめましょう。
耐震構造が施されている物件か念入りに確認しておく
2004年に発生したスマトラ島沖地震は、タイの不動産においても、耐震化の必要性を強く考えるきっかけとなった出来事でした。
しかしながら、耐震性の高い基礎工事が施されていない建物は現在も多く存在しているうえに、国内の建築基準法にも、いまだに明確な耐震基準は設けられていません。
一方で、日本のゼネコンや大手建設会社が手がけた物件や、大手デベロッパーによる物件であれば、最新の耐震技術を用いた工法を採用しているケースも多いため、物件選定の際には、当該物件を手がけている建設会社やデベロッパーについても、念入りなリサーチが必要です。
タイでも少子高齢化が進みつつある
2022年にタイ政府は、2029年以降のタイの人口は減少に転じ、少子高齢化が進むと発表しています。
観光振興や海外企業や投資マネーの取り込みを積極的に行っているタイ政府ですが、高齢化が進み、労働生産人口が減少することによる経済成長の鈍化という可能性があることにも、引き続き注視しなければなりません。

タイの不動産投資に関しての質問
最後に、タイにおける不動産投資に興味を抱いた際に、生じがちな3つの疑問点・不安点に対して、回答していきます。
タイへの不動産投資は推奨できますか?
不動産投資先として、どのようなメリットがタイにあるのかという点は、多くの投資家が興味を持つポイントです。
すべての人に対して向いている投資というものは存在しないため、以下の2つのポイントを参考に、自分に向いた投資先か否かを判断してください。
日本と比較すれば投資チャンスと評価しやすい
タイは、経済成長や人口増加において、以前のような勢いは失いつつあるものの、依然として不動産需要が高い状態が続いており、価格も上昇傾向が続いています。
日本での不動産投資と比較すれば、手頃な物件の選択肢も多く、今後のキャピタルゲインも狙える状況にあるため、タイを頻繁に訪れたり、資産をバーツで持つことにメリットがある人には、まだまだ魅力的な投資先と言えるでしょう。
国を問わなければタイより投資をおすすめできる国が多い
新興国における不動産投資という観点から見ると、タイはすでに旨みを失いつつあります。
タイでは、外国人による不動産所有や税金に関しても、規制の厳格化が進んでいる一方、税制やインカムゲイン、キャピタルゲイン、経済の将来性などを総合的に考慮すれば、より投資家にとって有利な環境が整っている国は他にも存在します。
「タイで不動産投資をする」ことに対して、特別なメリットや理由がないのであれば、
人口増加率や経済の成長率とともに、タイより高い水準で更新し続けているフィリピンやエジプトの不動産に投資することをおすすめします。

タイ不動産の将来性は高いですか?
しばらくの間は、現在のゆるやかな経済成長が続き、不動産需要も上昇傾向を維持することが予想されますが、大化けするような極端な将来性は考えられないでしょう。
本記事のおすすめエリアでも紹介したように、タイでは、首都バンコクや各地に広がる工業団地、そしてリゾート観光地と、今後も不動産需要が高止まりすることが期待できるエリアが多数存在します。
コンドミニアム市場は活況を呈していることから、今後しばらくは建設が続き、多くの投資マネーが集まると考えられます。
タイ不動産はコロナ禍の影響を受けていますか?
新型コロナウイルスの感染拡大は、タイの不動産業界にも大きな打撃を与えました。
縮小した経済への刺激策として、他国同様にタイでも低金利政策が取られたものの、外貨の流入が多い新興国であるため、不動産価格の変動は、国内の金利政策よりも、外貨から受ける影響の方が大きいという状態が明らかになりました。
海外企業による開発や企業の進出、投資マネーの流入など、外貨の動きは今後も活発化することが予想されるため、政策以外にも為替レートも注視しながら、投資判断を下す必要性が一層高まるでしょう。

まとめ
今回は、タイにおける不動産投資に焦点をあて、東南アジアエリアのハブ拠点として、都市開発と経済の発展が進むタイの魅力や、不動産投資に有利となるポイントやおすすめエリア、税制度や投資に際しての注意点などについて、詳しく解説してきました。
記事内でも述べたように、建設業界における世界的な資材・労務コストの高騰を受け、建設・開発ラッシュが続くタイにおいては、今後のさらなる不動産価格の上昇が期待でき、大きなキャピタルゲインを狙うラストチャンス到来とも言われています。
その一方で、投資目的や期間によっては、より長期的な運用やわかりやすい優遇措置を受けられるエリアは、タイ以外の東南アジアやアフリカ諸国でも出てきているため、今回の記事を投資先選定の検討材料として比較検討に活用してください。